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[コラム] 19年度税制改正大綱の評価と課題

2006年12月18日 13:57更新 mailメール

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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「チーフエコノミスト 湯元健治の眼/(株)日本総合研究所 チーフエコノミスト、調査部長 湯元 健治 2006年12月15日付」より


 12月14日にまとまった与党税制改正大綱は、安倍政権の成長重視戦略を税制面から側面支援する各種減税措置が数多く盛り込まれるなど、近年にない減税型の改正となった。

 19年度予算において、国債発行額を25兆円台まで抑制すると同時に、数千億円規模の減税が可能となったのも、最近の予想を上回る税収増に追うところが大きい。安倍政権の成長路線追及と財政健全化の両立の可能性が視野に入ってきたといえる。

 今回の税制改正の中身をみると、設備の減価償却制度をグローバル・スタンダードに合わせて見直しを行ったことは、日本企業の国際競争力維持・強化の観点から高く評価される。また、留保金課税の撤廃やベンチャー支援税制の強化もわが国経済の屋台骨を支える中小企業や新規産業育成の観点から当を得た措置といえよう。

 少子高齢化・人口減少が進む日本経済の成長力を真に高めるには、企業の生産性の飛躍的な向上が不可欠である。そのためには、モノ(設備)の面のみならず、ヒト(人材)、カネ(資金フロー)の面からも個人の持つ潜在能力を最大限引き出す政策運営が極めて重要である。

 そうした観点から、今回の税制改正をみると、ヒトの面では高齢者雇用の促進や再チャレンジ支援、子育て減税など工夫の跡もみられるが、まだまだパンチ力に欠けるのではないか。例えば、個人の自己啓発に対する減税や教育減税など「人間力」を高めるためのインセンティブが必要である。人材投資を行う企業に助成金を与えるなどの措置はあるが、補助金の形ではなく、税のインセンティブによって企業ではなく個人に直接自己投資を促す発想転換が必要だ。

 もう一つ、カネの面でも今回の改正では、金融証券税制の抜本改革が来年度以降に先送りされることになったことは残念だ。上場株式等(含む投資信託)の配当および譲渡益(キャピタルゲイン)に対する軽減税率を10%のまま1年間延長し、その後は廃止する(すなわち20%の本則税率に戻す)と明記されたが、本来、小泉改革のスローガンであった「貯蓄から投資へ」が10%軽減税率でどこまで実現したのか、その十分な検証がなされないまま、10%か20%か、株式市場への影響はないのかといった短視眼的議論に終始した感が強い。

 1年延長を単なる問題先送りにせず、依然として預貯金のウェートが50%以上に上る家計の金融資産を長期的かつ安定的に資本市場にどうしたら向かわせることができるかについて、徹底的な議論が必要である。例えば、保有期間が長期になるほど税率を低くしたり、控除を大きくするといった諸外国の制度も参考になるはずだ。また401k年金の非課税拠出限度枠の大幅な拡大も重要な検討課題である。さらに、利子・配当・キャピタルゲイン間の損益通算を認める方向性が打ち出されたことは評価できるが、a.金融番号制度の導入など実務的問題や、b.損益通算の上限をどの程度に設定するかなど、手続きが煩雑にならず、かつ個人のリスクテイクが真に促される制度設計が望まれよう。

 今回の大綱では、中期的な課題として財政健全化への対応や、高齢化で膨張する社会保障の安定財源確保の必要性が言及され、「所得税、法人税、消費税、相続税等がそれぞれ果たすべき役割を検討しつつ、税体系全体のあり方を考えていく必要がある」との認識が打ち出された。

 これらの抜本改革は、中期的に見て避けて通れない課題である。とくに団塊世代が年金受給者となる2012年以降を見据えれば、社会保障制度のあるべき姿と消費税率の問題は密接不可分であり、一体的な改革がなされなければならない。来年秋を待つことなく、これらの課題については、年明け以降、政府税制調査会の場でも精力的な議論が行われることを期待したい。

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