[コラム] 地方自治体システムの共同アウトソーシング
2007年02月02日 18:40更新
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プリント
出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 上席主任研究員 佐々部 昭一 2007年1月29日付」より
■共同アウトソーシング事業
総務省と財団法人地方自治情報センター(LASDEC)では地方自治体の情報システムの共同アウトソーシング事業を推進している。共同アウトソーシングとは複数の自治体が共同して電子自治体業務の外部委託(アウトソーシング)を行うことにより、民間のノウハウも活用し、低コストで高いセキュリティ水準のもと共同データセンターにおいて情報システムの運用を行おうとするものである。このため、事業では、共同して利用できるモデルシステムを業務別に開発するなどの実証実験にも取り組んでいる。

出典:「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会」第10回会合資料
総務省が主催する「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会」では、この共同アウトソーシング事業におけるコスト低減の効果を次表のように試算している。試算の前提としてA県(40自治体、人口72万人)において市町村が共同アウトソーシング事業の成果物を活用し、共同利用を行った場合を想定し、原則人口比率に応じて各システムの開発費用を按分し積算するものである。試算の内容は、人口12万人で職員数1千人規模の自治体と、人口1万2千人で職員数120人規模の自治体を対象として、各システムの初期開発費用を算出したものである。

出典:「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会」第10回会合資料
表ではシステム別に初期開発費用の削減効果を算定しており、各システムとも削減効果を期待でき、特に電子申請受付、統合連携、電子入札の各システムでは削減効果額が大きい。この導入効果の試算では次のような点が示された。
●すべての情報システムの初期開発費用おいて、大きな削減効果が見込める。
●小規模の自治体において削減効果が大きい。
このようなコスト削減メリットがあるゆえに本事業が推進されており、とりわけ小規模自治体を含めた全ての地方自治体における電子自治体の構築において共同アウトソーシングを促進すべきと考える。
■モデルシステム開発・共同運用の状況
同事業においては平成15年から17年度において、延べ50団体で28システムについて開発実証を行ってきている。そして、その成果として平成18年度までに下記のとおり、8道県5市を代表団体として、13システムを導入・共同運用している。

出典:「電子自治体のシステム構築のあり方に関する検討会」第10回会合資料
各都道府県ではシステム共同運営協議会等を組成して、この共同アウトソーシングの推進のための課題検討、共同運営の費用負担などを検討してきている。前表の北海道、山梨県、岐阜県、兵庫県、徳島県、熊本県などの例は、それらの協議会が主導して推進してきた成果と考えられる。
この中で千葉県浦安市が代表団体となっている統合GISについては、都道府県にとらわれることなく他都県の地方自治体が参加しており、都道府県単位等で設置されている共同運営協議会等によらず共同運用している。この点で他のシステムの共同運用とは異なっており、極めて興味深い。
■共同アウトソーシングとLGWAN-ASP
同事業を推進しているLASDECでは、全国の地方自治体を相互に接続するネットワークである総合行政ネットワーク(LGWAN)も運営している。LGWANは地方自治体間のコミュニケーションの円滑化、情報の共有による情報の高度利用を図ることを目的とする、高度なセキュリティを維持した行政専用のネットワークであり、2003年度までに、すべての都道府県及び市区町村がLGWANに参加し、本格運用が行われている。また、LGWANは、国の府省間ネットワークである「霞が関WAN2」と相互接続しており、国の機関との情報交換にも利用されている。
この全地方自治体を接続するネットワークLGWANでは、地方公共団体間のIT化格差、IT活用格差等をなくすための方策としてASPの活用が可能となっている。このASPを活用し、品質及びサービスレベルの高いアプリケーションやリソース等を地方自治体間で共同利用することにより、地方自治体のIT化を促進し、地方自治体が独自にシステムを構築するより安価なシステムを導入・運用することができるといったメリットも想定されている。したがって、共同アウトソーシングにおいて共同運用する情報システムと利用する地方自治体を接続するネットワークとしては最適であり、共同運営協議会等が共同利用システムの提供を始めている。
■今後の整備方向
今後、事業において開発実証されたモデルシステムやベンダーが開発したパッケージシステムなど、さらに多くのシステム・アプリケーションがこのLGWAN-ASPに提供されることによって、地方自治体のシステム共同利用が促進されるのではないだろうか。地方自治体にとっては既に接続されているLGWAN上に提供される多くのシステム・アプリケーションの中から、最適なものを選択してASP利用できることになる。その際、前述の千葉県浦安市のGISシステムのように、どこに共同利用システムが設置されているか都道府県にとらわれることなく、各地方自治体に最適なシステムを選択・利用できる環境の整備が望まれる。特に数多くの地方自治体の業務システムを開発・構築してきた大手ベンダーがLGWAN上に多くのアプリケーションを共同利用できるよう提供していくことに期待したい。

日本総合研究所作成
このような環境が構築されれば、各々の地方自治体に適切な情報システムが低コストで高いセキュリティ水準のもと共同データセンターにおいて共同運用されることになり、共同アウトソーシング事業の目的も達成されると考える。これによって、多くの地方自治体にとって情報システムは所有から利用へ大きく考え方を変えることになる。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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佐々部 昭一
(株)日本総合研究所 上席主任研究員 IT戦略クラスター
専門分野:電子政府・電子自治体、IT戦略・計画策定、開発監理支援、システム評価・監査、IT動向調査
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