[コラム] 日本の金融機関が注力すべき方向
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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「プロフェッショナルの洞察 (株)日本総合研究所 理事 毛利 俊夫 グローバル化時代を勝ち抜くための金融サービスVol.2」より
第1話では「変貌する日本の金融業界」というテーマで、わが国の金融サービスの構造を、「競争」と「ビジネスのやり方(ビジネスアーキテクチャ)」の2つ側面から捉えることによって、世界を舞台に活動しているグローバル金融機関と比較した場合のわが国金融機関の課題や問題点を明らかにした。更にこれを踏まえて、わが国の金融業界のここ数年来と今後想定される変化について、国内4大金融グループを「第一幕」、地方銀行を「第二幕」として概観した。
第2話では、日本の金融機関が今後一層重点を置いていくべきリテール分野について、その根拠とわが国金融機関の現時点での問題点について検討してみる。
金融機関として今後も生き残っていくためにはリテールへの一層の注力が必要
金融機関の最大の収益源は利ざや収入であるが、大企業法人部門の同収益は確実に減少しつつある。このため、安定した収益源であるリテール部門における利ざやの拡大に注力していく必要がある。
法人・個人とも、顧客は金融機関に対してさまざまなニーズを持っている。筆者がかつて在籍していた米国のスタンフォード研究所では、顧客による基本的な金融ニーズを「1.保障・保護ニーズ」(収入・所得及び、予期しない出来事による損失・減少から守ることに対するニーズ)、「2.決済・移転ニーズ」(資金や資産の移動に対するニーズ)、「3.貯蓄・投資ニーズ」(収入・所得や資産を蓄積し最大化することに対するニーズ)、「4.相談・アドバイスニーズ」(金融行動を決定・実行することにあたり必要な情報・助言に対するニーズ)の4つに大きく分類し、さらにこれらの中身を全部で30のニーズに細分化し、構造化した。金融商品・サービスはニーズの複合体であると考える。顧客は金融商品・サービスの中に、自らが求める金融機能を見つけ、それに対して料金を支払うのである。

さて、日本の金融機関には、リテールにおいて間違った方向を向いた戦略をとっているものもあるのではないだろうか。近年わが国の金融機関の中には、手数料収入を確保することを目的として、商品・サービスの機能を単純化(un-bundling)し、サービスの1つ1つに対して課金を行う方向に転換する動きが一般化している。こうしたサービスの細分化・個別化は顧客に割高感を感じさせることになる。金融機関が顧客の充足されていない金融ニーズを明確に把握し、複数の金融ニーズを複合化してひとつの商品・サービスに仕立て上げる能力が求められる。その古典的な例の一つが、米国メリルリンチ証券会社のCMA(現金管理勘定口座)であろう。商品・サービスの開発は、複合化(bundling)が必須であると考えるべきである。
金融機関にもマーケティングマインドの確立が求められる
これまで見てきたように、金融機関は顧客が求める金融ニーズをきめ細かく把握し、さまざまな金融商品やサービスに複合的に組み合わせて、一人ひとりの顧客に合ったサービスを提供することが必要である。これは今後内外の金融機関や直接金融市場との競合に勝ち残っていく上で不可欠なことである。ところが、わが国の金融機関は、一般に顧客のニーズを的確に把握してサービスを提供するマーケティング的な発想が希薄であり、顧客セグメンテーションの手法が確立できていない。万人に向く商品・サービスは存在しないということを認識すべきである。
わが国金融機関にもマーケティングの概念がこれまで以上に必要であるが、マーケティングの4Pのどれに重点を置くべきかについては、各金融機関の戦略などに従って決めればよいことだろう。規制が大幅に緩和された現在、少なくとも顧客のセグメンテーションや、これを踏まえた顧客セグメントに合った商品開発は、金融機関といえども避けて通ることはできない。国内4大金融グループ、地方銀行共に、これからは自社のマーケティングマインドを確立し、併せて金融におけるマーケティングの専門家を養成していくことが重要である。
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毛利俊夫 Mori Toshio
日本総合研究所 理事/クレジット・スコアリング研究所長
日本大学大学院客員教授(法学研究科)
財団法人 岐阜県産業経済振興センター 理事長(非常勤)
1968年慶応義塾大学経済学部卒業。1969年ミシガン州立大学経営学修士課程修了(MBA)。1970年野村総合研究所入社。経営計画研究部、国際研究部で主任研究員を務めた後、1982年SRIインターナショナル(スタンフォード研究所)のプリンシパルコンサルタント、サービス・インダストリーズ・コンサルティング部長を務める。1990年日本総合研究所に入社して理事。経営戦略研究部長、研究事業本部担当を経て2002年よりクレジット・スコアリング研究所長。プロジェクト実績に「韓国金融機関の研究所設立に関する戦略策定」「都市銀行における大企業取引推進体制のあり方に関するコンサルテーション」「航空会社クレジット・カード戦略」など。著書に『シンクタンクビジネス』(共著)。
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