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[コラム] 地方自治体における不動産の有効活用の可能性 〜地方自治法改正のポイント〜

2007年02月28日 23:59更新 前の記事 次の記事  コラム・地域社会一覧
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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主任研究員 小松 啓吾 2007年2月26日付」より


わが国における景気の回復と不動産市場の活性化

 バブル崩壊後の長い不況を経て、わが国経済にもようやく徐々に明るい兆しが見えつつあります。消費者が日々の暮らしで景気回復を実感できているかという面では意見が分かれるところですが、企業活動に関しては、一部の企業が過去最高益を達成するなど総じて堅調な回復基調に転じていることがうかがえます。

 不動産に関しては、わが国の適正な地価形成の規準となる国土交通省地価公示において、平成18年の三大都市圏の平均地価が15年ぶりに横ばいまたは上昇に転じたことが報じられました(注:平成18年3月24日発表)。国内企業の業績が回復し設備投資が活発化していること、海外の機関投資家がわが国の不動産投資市場に着目し積極的な資本投下を行っていることなどが、その原因として考えられます。

 このような不動産市場の活性化に地域格差がある(注:三大都市圏以外の地価は引き続き下落傾向にあります)点は否めませんが、少なくとも今後の大都市の不動産市場においては、立地、規模等に優れた良質な宅地の供給が一層求められるものと考えられます。とはいえ、大都市における民間主導の大型開発はやや一巡した感があり、今後は公共セクターが保有する不動産の有効活用も含めて、新たな開発余地をどのように見出していくのかが課題であるといえます。

地方自治法の概要と改正前の規定

 こうしたなか、公共セクターが保有する不動産の有効活用に関して、最近興味深い法改正が行われました。それは、「地方自治法の一部を改正する法律」(平成18年法律第53号)による、行政財産である土地の貸付等に関する規制緩和です。
「改正」以前に「地方自治法」という法律自体、一般の方にはあまりなじみのない法律かもしれませんが、これは、地方公共団体(都道府県、市町村など。厳密にはより詳細な区分がなされていますが、以下、本稿では便宜上「地方自治体」といいます。)の組織や運営などに関する事項を定めている法律です。地方自治体が様々な事務や事業を執行するうえでの根幹となる、地方自治において非常に重要な法律であるといえます。

 地方自治法では、地方自治体が所有する不動産は、以下の2種類に区分されています。

 1.行政財産
 地方自治体において公用または公共用に供し、あるいは供することと決定した不動産(例:庁舎、学校、図書館などの公共施設及びその敷地、あるいは建設予定地)

 2.普通財産
 行政財産である不動産以外の不動産(例:公共施設を建設する予定のない遊休地)

 このうち行政財産である不動産については、今までは行政内部における一定の手続きを経て普通財産に変更しない限り、原則として他人への貸付ができないとされてきました。このため、例えば「駅前で立地条件の優れた市有地に庁舎を建てたいが、容積率に余裕があっても、民間事業者に商業床を持たせて地代収入を得ることができない」といった課題があり、地方自治体による不動産の有効活用に制約が生じていました。

地方自治法改正のメリット

 先に述べた法改正により、行政財産である不動産の貸付等に関しては、例えば以下のような点が緩和されています。

 ・県有地を活用した開発事業により、県と市の区分所有建物を建設しようとする場合、県がその土地の一部を行政財産のまま市に貸し付けることが可能

 ・市有地と民有地が混在する市街地再開発事業において、民間の開発事業者が自己所有地の容積率を超える床を保有しようとする場合、市がその土地の一部を行政財産のまま開発事業者に貸し付けることが可能

 ・市有地において庁舎を建て替えるにあたり、商業施設との一体化により土地の有効活用や市街地の活性化が見込まれる場合、余剰容積部分に相当する敷地あるいは床を民間事業者に貸し付けることが可能

 これにより、今まで立地条件のよい市街地にありながら十分な高度利用が図られていなかった公有地について、民間事業者や他の地方自治体などとの連携による高度利用の実現を期待できます。

 また、行政財産から普通財産への変更が一部不要となる点は、行政内部の調整においてもメリットがあります。規模の大きな地方自治体においては、行政財産はその利用目的である行政サービス分野を担当する部局(例えば、福祉施設であれば福祉部門)が、普通財産はその処分に関する事務を担当する財政部局が、それぞれ管理している場合があります。この場合、行政財産から普通財産への変更は、単なる事務上の手続きにとどまらず、「我々の部局ではこの土地を行政目的に利用しません」という意思表示を庁内的に行ってしまうことになります。「縦割り行政」と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、このような部局間の意思決定の構造に影響を受けることなく不動産の有効活用ができることは、不動産の本来の効用を十分に発揮するという点では大きな意義があるものと考えます。

今後のさらなる有効活用への取り組み

 地方自治体が所有する不動産の利用形態は、人口動態の推移、市街化の進展、行政サービスに対するニーズの変化などに応じて、長期的には変動していくべきものです。最近では例えば、少子高齢化に対応して学校施設の一部を高齢者福祉施設に転用する、といった事例が全国各地で見られますが、今後はこのような個別の取り組みをさらに広げ、地方自治体が所有する不動産の利用形態を全般的にマネジメントしていくことが必要です。
 具体的には、

 1.地方自治体が所有する個別の不動産の情報(位置、交通条件、規模、用途、構造、残存耐用年数など)を全庁的あるいは部局単位で体系的に整理したうえで

 2.処分(売却)、貸付、用途変更、解体・更地化、現況利用継続、といったメニューを個別的・複合的に適用して、そのメリット・デメリットを検討し、

 3.保有資産全体としての効用が最高度に発揮される、すなわち、貸付等による歳入の増加や維持管理等による歳出の削減効果が最も高く見込まれる利用形態を明らかにし、

 4.当該利用形態の実現に向けたアクションプラン(行動計画)を策定し、これを地方自治体の計画に反映させたうえで実行に移す

 という一連の政策を通じて、資産保有の効率をコスト・サービスの両面で高めていくことが求められます。それによって、地方自治体における昨今の厳しい財政状況に改善の余地が生じるとともに、社会経済全体にとっても大きな効用が見込まれます。

 先に述べた地方自治法の改正には、民間事業者との協働の可能性やその条件について、まだ不明確な点がありますが、今後ともこうした法改正を契機に、地方自治体が弾力的な行財政運営に取り組んでいくことが期待されます。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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小松 啓吾
(株)日本総合研究所 主任研究員 地域戦略クラスター 創造都市戦略クラスター
専門分野:PFI、市町村合併、地域振興、都市開発など
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