[コラム] 苦悩する行財政改革の現場 〜人財を大切にする行財政改革のススメ〜
出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 片田 保 2007年2月27日付」より
■まったなしの行財政改革
夕張市の財政非常事態がクローズアップされ、自治体の財務管理・財政力が ニュースに取り上げられるようになってきた。官製談合で知事が逮捕される など、相次ぐ政治・行政不信も自治体の将来に影を落としている。特に2007年度は、統一地方選挙、参議院選挙など選挙の年であり、ここでも「夕張ショック」や「談合事件」の影響は少なくない。
自治体の行財政改革は、今に始まったことではない。平成16年末には「新地方行革指針」(総務省)が出され、その後、「行政改革推進法」「公共サービス改革法」が成立・施行された。平成18年夏には「行政改革の更なる推進のための指針」により、(1)総人件費改革、(2)公共サービス改革、(3)地方公会計改革、(4)情報開示の徹底、住民監視(ガバナンス)の強化が進められた。「平成19年度予算編成の基本方針」でも行政改革は重要な取り組みの1つに掲げられ、あらゆる角度から行財政改革の着実な推進が求められている。
■対応に追われる行財政改革の現場
アレもコレも対応が迫られる行財政改革の最前線では大変なことになっている。ここで、そんな行財政改革の現実を紹介しよう。
行財政改革の旗頭は、職員の中でもエース級の生え抜きが担当することが多い。次代を背負って立つ45〜50歳の主力経営幹部だ。ここに一回り若い世代 の職員が担当して改革を切り盛りする。この切り盛り役が非常に大変な仕事 なのである。
庁内外での膨大な調整─これが職員の心身を疲弊させる。神経を磨り減らしながらの力業、寝技の日々。私の知っているエース級職員の何人かは、調整づくしの日々に追われ体調を崩して倒れた。特に、筆頭課長あたりが倒れると後任が大変である。ナンバーワン課長でもできなかった仕事という事実は、後任にとって大きな精神的負担となる。そして、苦悩は伝播していく。「彼でさえできなかったのに、自分ができるのだろうか?」
対住民サービスを行っている原課も大変だ。団塊世代の引退により以前より少ない職員でサービスを維持・提供しなければならない。それも決してサービス水準を下げることなく。嘱託や外部スタッフを受け入れて対応するケースもあるが、その過渡期には業務を教える負担は増える。タイミングが悪いと、繁忙期である4月や9月に異動や人員減が重なることもある。
■「人財」あっての改革推進
行財政改革の推進は不可避であり、それ自体が悪いというのではない。しかし、職員を疲弊させ、さらには住民サービスが劣化してしまうのは避けなければならない。負の連鎖を断つためには、CS(Citizen Satisfaction)はもちろんのこと、そこで働く職員のES(Employee Satisfaction)にも目を向ける必要がある。
不退転の決意で断行される行財政改革。その現場にも目を向けて、「人財」を大切にするならば、次のポイントを押さえておきたい。
(1)職員のメンタルケア
いわずもがな、マジメな官僚、行政職員は問題を独りで抱え込みがちである。担当職員をはじめとする精神面での過大な負荷を早期に発見しフォローした い。
(2)全庁的な危機意識の共有
改革の最前線では、改革をする人/その他の人という二分化が生じやすい。次の10年を見据え、危機感を全庁職員で共有することで、改革担当者への集中的な負荷を分担させたい。
(3)業務量と実施体制の実態の把握
業務量が多い組織はコスト削減の対象となりやすく、本来必要な業務や人員まで削減してしまうことがある。作業負荷の分析には、本当に必要な業務・人員なのか削減対象とすべきなのか、きちんと見極めたい。
(4)人員削減を補う手段の確保
団塊世代の大量退職に加え、さらなる人員削減に取り組む自治体も少なくな い。減員分の補充には、事務改善などの小手先の対策だけではなく、業務の集中化・アウトソーシング、情報システム(IT)活用など抜本的な改革と道具立てを併用したい。
(5)多様な改革プロセスの実行
改革にはスピードと効果が要求されるとはいえ、担当者が過度の負担で倒れてしまっては前に進まない。ビジョンは大きく持ち、小さく生んで大きく育 てるという改革プロセスも視野に入れ、「アレもコレも」の改革メニューに 順位付けを行いたい。
緊縮財政、低コスト、効率性に偏重するあまり、住民サービスが低下しては本末転倒である。サービスレベルを維持し、さらに向上させるための改革で なければならない。「改革なのか、改悪なのか」を見据え直し、庁内の人財を大切にしながら、財政破綻、政治・行政不信という昨今の大きな危機を変革のチャンスに転換して欲しい。
関連記事
|
|

Powered by newsing |
|
コラム最新記事
|