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[コラム] グローバル化のなかで日本の金融業界が生き残るには

2007年03月30日 21:10更新 

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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「プロフェッショナルの洞察 (株)日本総合研究所 理事 毛利 俊夫 グローバル化時代を勝ち抜くための金融サービスVol.3」より


 「グローバル時代を勝ち抜くための金融サービス」という主題で、第1話で日本の金融業界の変貌について述べ、グローバル化とリテール重視の2つの道筋を示した。第2話では大きな環境変化の中での日本の金融機関がまず注力しなければならないリテールの重要性について指摘した。第3話は最終回としてグローバル化を進める日本の産業界を支える根幹として、あるいは国民の金融ニーズをこれからも充足していくために、日本の金融機関が進んでいくべき方向について考察する。

グローバル化する日本企業の金融ニーズに対応できる能力が日本の金融機関にも必要

 製造業を中心とする多くの日本企業が、単なる製品輸出から現地生産に転換し、更には自動車、電器など巨大製造業を中心として、現地で製品の研究・開発まで行う「グローバル化」に進んでいる。わが国金融業界がこういったグローバル化、すなわち多国籍化した企業の金融サービスニーズに対応していくためには、金融業界自身のグローバル化が必要である。いわば、「良い顧客は良い金融機関を育て、良い金融機関は良い顧客を育てる」一連の動きがわが国の金融機関と製造業の間にも必要ということだ。

  欧米のグローバル化した金融機関は顧客セグメントの中でも多国籍化した巨大企業を顧客として最重視し、こういった企業が求める高度な金融サービスを提供しようと日々努力している。更にその高度な金融テクノロジーを応用して、世界に目を向け始めた中堅国内企業や個人の優良顧客向け商品を開発することによって、他の金融機関との差別化を図り、顧客の囲い込みに成功している。一例を挙げれば、米国巨大金融機関の富裕層向けプライベートバンカーには国際部門にいた経験を持つ人間が多い。これはプライベートバンキングについても、顧客の高いニーズに対応するには国際金融の知識が必要であることを示している。



ホワイトカラープロフェッショナルを活かす組織インフラの整備が必要

 金融業界のグローバル化にまず不可欠なことは、第1話でも触れたが、現地でホワイトカラープロフェッショナルを育成し、十分な活躍の場を与えることだ。ところがわが国の金融機関は、欧米のトップ金融機関に比べ、海外で現地のホワイトカラープロフェッショナルを育成することも、また、使いこなすことも不得手だ。次に必要なのは伝統的な商業銀行からの脱却であり、そこでは証券を含む直接金融市場における世界レベルの競争力も必要だ。ところが日本の金融機関は伝統的に新入社員をゼネラリストとして育てる。組織運営においても、日本の金融機関は一般にゼネラリスト志向の組織運営をするため、最先端の金融商品の開発という面では、欧米のトップ金融機関より、どうしても分が悪くなる。しかし高度な金融商品の開発には多様なスペシャリストによる高度な組織インフラの整備が必要である(図2参照)。このため、海外に進出した日本企業で、日本国内での主取引銀行よりも欧米系のグローバル金融機関やその国の一流ローカル金融機関をファーストコールバンクとして頼っている企業も少なからず存在する。



自らの企業の将来像を正確にする・・・企業文化の創造

 わが国のすべての金融機関がグローバル化の方向に進む必要はないし、また不可能なことである。大切なのは、トップが自らの企業の行く末を明確にし、そこに向けた企業文化を創造することであり、併せて組織の未来を背負い得る専門性の高い社員を育てていくことである。

  伝統的な商業銀行が、自らが提供する機能をより効率的で競争力のある分野にシフトしつつあるのは世界的な趨勢である。すなわち、グローバル金融機関への道を歩むか国内市場を基盤とするリテールに特化するかの決定を踏まえ、伝統的な商業銀行の機能プラス証券引き受けディストリビューション機能の中から自らの方向性に合った機能に重点特化していくことである(図3参照)。

 例えば、第2話で触れた地方銀行の方向性として、グローバル化には対応せず、国内リテールに注力した金融機関を目指すのも経営陣にとっては戦略の一つである。現実的にもほとんどの銀行は国内リテール専門にならざるを得ないだろう。

 日本がこれからも世界の主要国の一員にとどまるためには、日本の金融業界が世界に伍して成長していくことが望ましい。そのためには、東京金融市場を世界の金融市場の一角として一層発展させる、政府の明確なスタンスも必要だ。



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毛利俊夫 Mori Toshio
日本総合研究所 理事/クレジット・スコアリング研究所長
日本大学大学院客員教授(法学研究科)
財団法人 岐阜県産業経済振興センター 理事長(非常勤)

1968年慶応義塾大学経済学部卒業。1969年ミシガン州立大学経営学修士課程修了(MBA)。1970年野村総合研究所入社。経営計画研究部、国際研究部で主任研究員を務めた後、1982年SRIインターナショナル(スタンフォード研究所)のプリンシパルコンサルタント、サービス・インダストリーズ・コンサルティング部長を務める。1990年日本総合研究所に入社して理事。経営戦略研究部長、研究事業本部担当を経て2002年よりクレジット・スコアリング研究所長。プロジェクト実績に「韓国金融機関の研究所設立に関する戦略策定」「都市銀行における大企業取引推進体制のあり方に関するコンサルテーション」「航空会社クレジット・カード戦略」など。著書に『シンクタンクビジネス』(共著)。
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