[コラム] 環境コストの内部化−財務保証の義務付け制度−
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出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 光成 美樹 2007年4月3日付」より
地球温暖化問題への解決策のひとつとして、排出権取引制度の活用が活発に なっている。かつて経済学では、汚染や有害物質の排出などから生じる社会的な費用は、だれも負担しないまま、外部への悪影響をもたらすものとして “外部不経済”という考え方で紹介されることが多かった。しかし、近年の環境政策では市場原理が取り入れられるようになり、外部不経済を内部化するための施策が取り入れられるようになっている。
その手法の一つである排出権取引では、地球温暖化の原因物質である温室効果ガスに価格を設定し、企業が排出権を購入することを通じて市場で費用負担をするようにしたものである。また、こうした環境汚染の浄化や自然環境の保護などの費用を、あらかじめ排出者に認識させ、計上させる「財務保証 (Financial Assurance)」により、金銭的負担額を明示し、その負担額を削減するために汚染予防を促すための仕組みが制度化され始めている。
2007年4月30日からEUで施行される環境債務指令(Environmental Liability Directive)は、土壌汚染等による自然資源への被害を回復することを、汚染者に厳格に義務付け、汚染浄化を求める指令である。
この指令では、企業などの汚染者に将来発生する汚染浄化の財源を確実にするために財務保証の仕組みを取り入れることを推奨しており、これを受けEU各国では、基金や保険、または企業保証書のような手段で、汚染者が財源を補償する仕組みを取り入れる制度を検討している。
こうした環境汚染の可能性や汚染浄化に対して、事前に一定の財源の保有を求める法律では米国が先行しており、エクソン・バルディーズ号事件の後にできた1990年の油濁法(Oil Pollution Act)で保険保有等を義務付けている。日本でも船舶油濁損害賠償保障法が2005年から施行され、入港する船舶 への保険の保有を義務付けた。また、米国では資源保護回復法(RCRA)の廃棄物施設等の閉鎖コストとして財務保証が求められているが、これに違反したとして罰金が科せられた事例も出始めている。
財務保証は、これまで外部不経済といわれていた環境の費用を企業の費用の中に内部化(Internalize)していくもので、将来の汚染発生予防として効果があるとされている。企業が将来発生する可能性のある汚染浄化の金銭的な支出を最小化するために取り組みを行い、汚染を予防し費用負担を少なくするように努力することが期待されるためである。
一方、こうした財務保証の政策がうまく機能するためには、まず、市場においてそれらの環境リスクをとるための保険等の金融商品が市場に販売されていることが条件になる。米国でも90年代には環境保険商品が十分に発達しておらず、購入が困難であったという報告があり、現在欧州でも環境債務法令 に対応する保険商品が購入可能であるか議論されている。
また、財務保証は、将来の汚染予防を促進するものであり、過去に発生した汚染浄化の促進策ではない。米国の土壌汚染対策法にあたるスーパーファンド法では、汚染者責任を原則としながらも、過去に遵法であった行為により汚染が蓄積し、それが費用として顕在化した場合の環境債務には、一定の公的資金が活用され、浄化が促進されてきたという経緯がある。一定の年数を経て、法制定後に発生する汚染を予防することに政策的軸が変わり、財務保証のような汚染予防対策が取り入れられるようになっているという。
日本や欧州では土壌等の汚染浄化制度は米国ほど厳格ではないという指摘もあるが、過去に蓄積された負の遺産を対処するには、制度移行期として一定の公的支援が必要な部分があることは否定できないだろう。財務保証のような将来の汚染予防の仕組みと同時に、過去の汚染対処として、税控除等の仕 組みで汚染浄化を促進し、地域活性化につながるような施策の検討が望まれるのではないか。
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