[コラム] 2100年の地球の気温は?−IPCC第4次評価報告書(AR4)の公表−
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出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 岡和孝 2007年5月1日付」より
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から、第4次評価報告書が3つの作業部会よりそれぞれ公表された。2月に公表された第1作業部会報告書は、気候システムおよび気候変化に関する科学的根拠についての評価をまとめたものであり、その内容は「21世紀中に地球の平均気温が最悪の場合6.4℃上昇する」との見出しで、各種メディアで大々的に報じられた。
では、この100年間で6.4℃も気温が上昇するということは地球の歴史においてどの程度の変化なのであろうか?参考として、この数十万年でもっとも温度変化が速かった事象をみてみよう。約2万年前の最終氷期極大期には、現在より気温が5℃程度低く、その後約1万年かけてほぼ現在の気温まで上昇したといわれている。これは、100年あたりに0.05℃の気温が上昇したことに相当する。これと比較すると今後100年間に気温が約6.4℃上昇するということが、いかに急激で異常な変化であるのかが分かる。
このような温暖化現象は、地球にどのような影響をおよぼすのであろうか? その一つに生態系への影響が挙げられる。生物は気候変動に対してある程度の復元力を備えている。しかし、温暖化による気温変化はあまりにも速いため、生物は気候の変化に適応できなくなり、その結果、絶滅に至る可能性が 高くなるといわれている。実際、第1作業部会報告書に引き続き4月に公表された第2次作業部会報告書(気候変化に対する脆弱性や影響の評価をまとめ た報告書)では、約2℃の平均気温の上昇で植物および動物種の20〜30%が絶滅する可能性が高くなると予測されている。気温上昇はたとえ数℃であっても深刻な影響を生態系にもたらすのである。
また、同報告書では、気象や人間の健康への影響が示されている。例えば、洪水や暴風雨などの異常気象による被害が増加し、熱波や干ばつによる死亡率が増加するといったことが予測されている。また、栄養失調、下痢、呼吸 器疾患、感染症による健康への影響が予測されている。このように、地球温 暖化は人間社会に多大な影響をおよぼすのである。
それではどうしたら危機的な地球温暖化を回避することができるのであろうか?
このことを検討する前に、まず、将来の社会の発展の方向性によって地球温暖化の進み具合が異なるということを理解しなければならない。第1作業部会報告書では、温暖化対策を含まない6つの将来の社会シナリオが描かれている。このうち、冒頭で記述した「6.4℃上昇する」社会とは、化石エネル ギーを重視しつつ、高い経済成長を実現するシナリオを示している。これに対し、環境保全と経済の発展が地球規模で両立する社会では、約1.8℃(1.1 〜2.9℃)の気温上昇でとどまることが予測されている。シナリオの違いによって、100年後には1.1〜6.4℃程度の気温上昇の幅が生じるのである。
従って、危機的な地球温暖化の回避を検討するためには、まず現在のわれわれの社会がどの方向に向かっているのか、あるいはどの方向へ目指していくのかを、われわれ全員で議論する必要があるのではないだろうか。
2100年の地球の気温は何℃になるのか。それは、言い換えれば、われわれの社会が何℃まで気温上昇を許容できるかということになる。今この瞬間にも、地球は刻々と温暖化し、自然環境はその影響を被っている。地球温暖化による危機的な状況を回避するためには、向かおうとしている社会の枠組みの中 で、国、企業、個人が一丸となって、気温上昇抑制のための対策を推進しなければならない。
では、どのような温暖化対策を導入すればよいのか?第1、第2作業部会報告書に引き続き、5月に公表された第3作業部会報告書(温室効果ガス排出削減のオプションの評価に関する報告書)がその道標となる。この報告書では、具体的な温暖化対策や導入に係るコストの試算が示されている。
地球温暖化による自然環境の変化は長い期間を掛けて徐々に顕在化する。このためわれわれは日常生活の中でこの変化に気づかずにいる。しかし、その変化が深刻となったときに温暖化対策を施しても、もはや手遅れである。従って、われわれは日常生活の中で、温暖化問題を常に意識し、対策を実践する必要がある。その心がけとして、今回大々的に報じられた第4次評価報告書の公表を一過性に終わらせるのではなく、継続的な話題となるための仕組みも必要ではないだろうか。
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