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[コラム] 日本版SOXに対応する

2007年05月09日 23:37更新 

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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主任研究員 水野谷 浩 2007年5月7日付」より


「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について」(以下内部統制評価の基準及び実施基準とする)が意見書として確定した結果、いよいよ本格的に内部統制評価のための整備に着手した企業が多いと思う。昨年から内部統制の評価のための整備を進めてきた企業にとってみれば、日本の基準は米国の基準に比較すると緩和されたものと思われるが、その枠組みは非常に近いものであり、企業の取組次第で、出来上がるものもかなり変わるものと思われる。

1)日本版SOXの対応とは

 ●迫られる内部統制評価体制の整備

 すでに昨年6月に金融商品取引法が成立した時点で、2009年4月から開始年度からの適用が決まっていたわけであるが、内部統制評価の実施基準の発表が遅れた結果、多くの企業が着手を遅らせていたと思われる。実際に実施基準が定まるまでは、会社としては本格的に着手していない企業もあった。いよいよ実施にむけて第1歩を踏み出すべきと思えるが、なお、日本公認会計士協会等の内部統制の監査に関する基準等Q&Aを待っていたり、決算期が例えば12月なので、3月決算の動向を踏まえて対応したいというように重い腰を上げない企業もあるようである。

 ●何が目的なのか?

 今回の日本版SOXの目的は財務報告の信頼性の目的にある。エンロン事件やカネボウ事件を背景として内部統制の強化、内部統制の監査が求められているが、実際の作業は経営者不正に対する統制環境よりも、業務プロセスの文書化とその評価に費やされる。作業中には、業務フロー等を書く場面では、あるべき姿を書くのか?現状を書くのか?の選択を迫られるが、財務報告の信頼性の目的のためには、現状を書くことを優先させることになる。
  もちろん、基準が示しているように内部統制そのものは財務報告のために存在するわけではないので、計画管理、予算管理という計画系についても本来会社が整備することが望ましいのであり、財務報告の信頼性のクリアは最低ラインの話である。

 ●外部監査人の対応もまちまち

 内部統制評価の基準や実施基準は多くの示唆にとむ内容を提供しているが、経営者による自主的判断と監査人との協議ということを求めているために、外部監査人(財務諸表監査の監査人と同一)の意見を尊重する必要がある。外部監査人も監査前に助言指導を行うことは、自己監査(自分で指導したことを、自分で監査する状態)になることをおそれている。また、手法についても統一したものが存在するわけではないので、内部統制評価の基準や実施基準を各企業、監査法人等が理解して望ましい方法を設定して実際に評価を試みている状況である。したがって、企業の内部統制評価の整備関与者は、内部統制評価の基準や実施基準を読み込んで、その意図にそって企業として望ましい方法を選択していくことが求められ、その1つとして外部監査人やコンサルタントの助言を受け入れることになる。

2)日本版SOXへの対応あれこれ

 実際に各企業は自らの取組方針に基づいて日本版SOXへ対応しているのであるが、取組は以下のような対応が必要である。

 ●どこまで文書化する(最低限)

 よく、当社は最低限のことをすればいい、無駄なことはしたくないといわれる。確かに、米国のSOX法の話や監査サイドからみた場合には、極力細かくして不明な点をなくす方がいいという話もある。最初から細かく文書化するよりも、最低限とは何かを探っていくように、対象となる業務全体において概要を抑えて、リスクの高い業務のみを詳細に文書化していくようにプロジェクトを推進していく手法をとることになる。

 ●規定等がない。(明文化)

 規程がそろっていないケース、あっても陳腐化してしまっているケースもある。暗黙のルールで動いている企業の場合、ルールの明文化を進める必要がある。一方、会社の統制ルールを書いた規定に対して業務の手順等については、マニュアルがあるためにそれを流用すればいい会社もあれば、マニュアル等がないために、文書化を通じて手順等を明確化する場合もある。

 ●現状の課題を克服(業務改革・BPRへ発展)

 財務報告の信頼性目的だけでは改善改革という点での効果は低い。全社的な展開の中では業務全体の見直しをしつつ、業務課題を抽出する必要がある。現状を淡々と文書化する業務に続いて、あるいは並行して業務の改善改革を図ることになる。

3)日本版SOXを成功させるために

 様々な人が日本版SOXのプロジェクトに関与するのでそれぞれの役割を果たすことが成功のためのポイントになる。

 ●トップマネジメントは何をする?

 日本版SOXの整備プロジェクトが大事であるということを社員に伝える必要がある。会社法において内部統制の整備方針を掲げているわけであるが、その一環として金融商品取引法に関してもその位置づけを明確にして取り組みを図る必要がある。
また、プロジェクトへの人材の配置についても兼任者が多いと本業+片手間SOXとなっていてなるべくSOXは手を掛けずに、すましたいというプロジェクト集団になりかねないので、注意が必要である。米国においては、作業を担当者任せにして管理者はできあがったものを右から左にもっていくだけというケースもあるようであるが、内部統制は管理者の重要な仕事であることを認識してプロジェクトに取り組ませるべきである。

 ●プロジェクトリーダーは何をする?

 全体の進捗を管理し、幅広く参加されるメンバーと協力してプロジェクトを推進する必要がある。
 ただし、経営者、営業部門、生産部門、管理部門、情報システム部門全体に絡むので、すべてを1人でカバーすることが困難なケースも多いので、メンバーと役割分担をして進めることが必要である。望ましくは専任メンバーをおいて作業を進める必要がある。

 ●経理部は何をする?

 経理部門は決算・財務報告プロセスの担い手である。そして財務報告の信頼性の確保のためのプロジェクトなために、他の部門からは今回のプロジェクトは経理部門の仕事と思われがちである。実際には、各部門が適正な活動を行い情報連携することで財務報告の信頼性を確保できるわけで、各部門の内部統制こそが大事である。なお、経理部門はまた、内部統制の運用評価に関して第3者評価のために内部監査部門が日本の場合要員等が限られているので、実施基準でも示されているように評価の支援を行うケースもある。

 ●外部コンサルタントは何をする?

 本来外部監査人の指導があればいいと思われるが、外部監査人は被監査対象会社と利害関係をもつことは監査の独立性を阻害するため、企業だけで整備をすることが不安な企業は外部のコンサルタントを起用し、そのアドバイスのもとプロジェクトを進めている。プロジェクトに参加するコンサルタントも経営関係、会計関係、各種業務関係、IT関係と複数の分野の人材で対応するため、クライアントのメンバーとも役割分担をうまく行い、コミュニケーションをとって効率的にプロジェクトを推進することが不可欠である。
    
4)終わりに

 規模が大きな企業はすでに内部統制評価の整備に着手しているものと思われるが、規模がそれほど大きくない上場会社では、会計監査を受けているのだから、規模も大きくないからと整備がそれほどかかるとはみておらず、着手していないこともあると思われる。今後、様々なツールが提供されることも期待されるが、使いこなすのは各企業の社員となるので、社員のレベルを向上するように当該プロジェクトを活用することを期待する。


※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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水野谷 浩
(株)日本総合研究所 主任研究員 スマートライフクラスター
専門分野:管理会計、財務会計、会計システム、会計BPR
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