[コラム] 企業のコア・コンピタンスとしての「経営戦略力」を鍛える<第4回>
2007年05月11日 11:34更新
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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主席研究員 谷口 知史 2007年5月7日付」より
企業が「経営戦略力」を鍛えるためには、トップマネジメントが「意識と方法論」の両面において、自社の課題を正しく整理することが要件となる。「トップマネジメントとコンサルタントとのダイアログ」(テーマ別Q&A)から、そのヒントを見出して頂きたい。
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<FAQの構成>
テーマ/ダイアログの主たる論点
Q:トップマネジメントからのメッセージ
A:コンサルタントからのメッセージ
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テーマ13.トップマネジメントと戦略担当部門との関係
Q13 経営トップはビジョンを策定することが重要ですが、そのデシジョンの為の材料を戦略担当が提供するというケースで、経営トップと戦略担当の責任が不明確になる場合が当社では発生しています。勿論、最終的には経営トップの判断になりますが、戦略部門が積極的であればあるほど一人歩きするというディレンマを感じます。トップに理解させることの重要性を痛感します。このあたりをどうすべきかを勉強したいと考えています。
A13:本メッセージの事象のように、「経営トップと戦略担当(役員・部門)とのあり方」の難しさについては、コンサルティングの現場で私たちは数多く見聞して来ました。「経営戦略力」というテーマにおいても、明確化が求められる重要な課題だと考えています。
(前記のテーマ12と共通する部分が少なくありませんが)基本的には、「経営戦略の階層(トップマネジメントは最上位層を司る)」および「組織における権限・責任のバランス」というテーマに帰するものと考えられます。
本メッセージにより示されている問題提起に対する私たちの意見は、下記のとおりです。
1.「経営者の基本的役割」に則して、経営トップが『戦略的意思決定』の最終責任者であることを組織内で再度徹底することが必要(その意味では、『責任が不明確になる場合』は原理原則にもとることとなるため、当該意思決定プロセスおよび内容について見直しが求められる)。
2.「中期経営計画の目的と要件」に則して、経営トップが中心となって策定されない経営戦略は、当該企業の利害関係者に対して発信するものとして相応しいものとはいえない。
上記1.2.の内容を『トップに理解させることの重要性』は非常に高いものと考えます。企業にとって重要性も難度も高いアクションだけに、是非とも実行されることを期待します。
テーマ14.トップマネジメントの意識向上のために
Q14 :当社は、設立後50数年のメーカーです。歴史的に「実績」を主な経営尺度に置き、事業を続けています。「経営計画」なるものに対し、まだまだ経験不足の感があります。数年前より、中期経営計画・予算制度を導入しておりますが、トップの認識も薄く、「数字の点検」レベルにとどまっています。その為、事務局の体力も相当かかっている状態です。少なくとも、トップにはビジョンの打ち出しだけでもと突き上げを継続して行っております。
A14:本メッセージに関しても、(前記のテーマ12および13と共通する部分が少なくありませんが)基本的には、「経営戦略の階層(トップマネジメントは最上位層を司る)」および「組織における権限・責任のバランス」というテーマに帰するものと考えられます。
本メッセージにより示されている問題提起に対する私たちの意見は、下記のとおりです。
1.「経営者の基本的役割」に則して、経営トップが『経営計画』のPDCA全体プロセスにおける最高責任者であることを組織内で再度徹底することが必要(その意味では、『トップの認識が薄い』経営計画は原理原則にもとることとなるため、当該PDCAプロセスについて見直しが求められる)。
2.「中期経営計画の目的と要件」に則して、経営トップが中心となってコミットメントされない経営戦略は、当該企業の利害関係者に対して発信するものとして相応しいものとはいえない。
上記1.2.の内容に関する『トップの認識』は、当然ながら相当程度高いものが求められます。当該『突き上げ』は企業にとって必要性も難度も高いアクションだけに、是非とも継続されることを期待します。
テーマ15.戦略に係わる経営資源の範囲の捉え方について
Q15 :経営資源の範囲の捉え方については、ヒト・モノ・カネにとどまらず、企業のブランドイメージ等をどう高めるか等、その他に戦略に係わる事項はないのでしょうか?現状では、巾広い思考に欠けるように感じています。
A15:経営戦略策定の全体体系においては、「経営理念・ビジョンの明示」の次ステップとして、(経営目標の設定、内外環境分析を踏まえた上で)「全体戦略の策定」が位置づけられます。そこでは、トップマネジメントの視点による『全体最適』を重視した「最適経営資源配分」が要諦となります。本メッセージにより示されている問題提起は、「『経営資源』の範囲をどのように捉えれば、現行以上に巾広い『戦略的思考』を可能にするのか」という、高度な問題意識から生じたものと捉えています。
コンサルティングの現場で私たちが直面する経営課題のひとつに、経営統合や企業合併等の「企業再編」・「事業再編」があります。そういったケースでは、「最適経営資源配分」の見直し・再構築は不可欠のテーマとなるため、基本的には『事業ドメイン(領域)』・『コア・コンピタンス(他社にない自社の強み)』・『SBU(戦略的事業単位)』といった定義を再整理しつつ、『事業ポートフォリオ』の見直し・再構築を検討するという手順を踏みます。その際に、「経営資源」をどの切り口で評価するのかが重要な要素となります。
伝統的な「ヒト・モノ・カネ・情報」という切り口に加えて、最近では「(いわゆる)無形資産価値」の代表的なものとして「ブランド」や「知的財産」を『SBU』と捉えた『ポートフォリオ・マネジメント』が研究・試行されています。
テーマ16.目標の連鎖性を高めるために
Q16:目標とする姿が明確に各部門・社員まで示されず、行動計画が部門の独自性で立てられたり、運営されておりベクトルが合っていません。目標の連鎖性の欠落を感じています。
A16:企業規模や事業領域が拡大し、組織が大きくなることに比例して、本メッセージに示された事象が生じる可能性が高くなります。その意味では、企業が成長する過程で不可避のテーマと捉えることができます。
まず、「目標とする姿(=ビジョン)が明確に各部門・社員まで示されない」ことの要因分析が必要となります。可能性としては、
1.トップマネジメントからの明示が不十分
2.各部門・社員までの浸透プロセスにボトル・ネックがある
のいずれかに大別されます。1.のケースでは、「トップマネジメントによるビジョンの明示」の再徹底から着手することとなりますが、2.のケースでは「PDCAサイクルにおける『P』の方法論レベルの見直し」が求められます。
「行動計画が部門の独自性で立てられたり、運営されて」いる現状から、早急かつ強力に『全体最適を重視する組織』への転換を図る必要性が高いものと考えられます。そのためには、『CFT(クロス・ファンクショナル・チーム)の組成』や『BSC(バランスト・スコア・カード)の活用』を具体的に検討することにより、社内で「目標の連鎖性」を高めるための仕組みづくりを行われることを期待します。
テーマ17.ビジョンを実現出来ない悩みの解消のために
Q17 :ビジョンを実現することに関する弱みが解消できません(中期経営計画に掲げても実現出来ていないことを容認しつつ、次期中期経営計画もビジョンを掲げても実現が困難な状況です)。事業採算が合わず、将来を考えれば手をつける必要があるのですが、ヒト・モノ・カネの投資について英断が出来ません。その為、安定性はあるのですが、発展性がありません。
A17:本メッセージに示されている事象も、コンサルティングの現場において私たちが数多く経験して来たことです。中期経営計画の策定・実施のサイクルを複数回重ねて来られた企業において、こうした傾向(ある種の慣性ともいえます)が強いというのが私たちの実感です。
まず、「ビジョンを実現できない弱み」の要因分析が必要となります。可能性としては、
1.ビジョンそのものに問題点がある
2.ビジョン実現までの戦略PDCAサイクルにボトル・ネックがある
のいずれかに大別されます。1.のケースでは、「トップマネジメントによるビジョンの明示」の見直し・再検討から着手することとなりますが、2.のケースでは「PDCAサイクル全体における方法論レベル」の見直し・再構築が求められます。
「ヒト・モノ・カネの投資について英断が出来ない」現状から、PDCAサイクルの『P』のステップの見直しを行う必要性が高いものと考えられます。具体的には、『PPM分析』を活用して、安定性のみならず発展性を重視した『事業ポートフォリオ・マネジメント』への転換を図られては如何でしょうか。その意味からも、合理的な「経営改革ビジョン」を設定されることをお勧めします。
テーマ18.人材活用のために
Q18:1980年代急速に発展したため、40歳代後半の職員が多いのですが、1990年代以降は低成長が続き、(年齢構成から)高コスト体質になりつつあります。人材活用やポスト面でも問題になりつつあります。
A18:トップマネジメントの重要なミッションのひとつに「全体戦略レベルの最適経営資源配分」があることから、企業にとっての重要な経営資源である「人材」について、どのように戦略的に考えるかは、中期経営計画PDCAにおいても普遍的なテーマと捉えることができます。
本メッセージにより示されている問題提起に対する私たちの意見は、下記のとおりです。
1.各企業ごとに、「バリュー・チェーン・マトリックス」における経営機能レベルの「人事戦略」が策定・実行されている。その人事戦略の理念・ビジョン・目標に照らし合わせた場合に、「40歳代後半の職員が多い」ことがどのように評価されるべきか、について再整理することが必要。
2.上記1.と併せて、経営戦略PDCAサイクルにおける『内部環境分析』の一手法としての『SWOT分析』を行うことにより、「40歳代後半の職員が多い」ことが「高コスト体質」として『W(弱み)』と位置づけられるのかを再検証することが必要。
上記1.2.の内容を例示として、本メッセージで示された現状に関して「人材活用やポスト面でも問題」と評価するためには、各企業ごとの「人事戦略が経営戦略全体の中でどのように位置づけられているか」を精査することが要件となるものと考えます。
次回、第5回へ続く
※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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谷口 知史
(株)日本総合研究所 主席研究員 経営戦略(大阪)クラスター
専門分野:経営戦略、組織戦略、財務戦略、ポートフォリオ・マネジメント
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