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[コラム] ポイントカードの導入は本当に顧客ロイヤルティを向上させるのか?

2007年05月17日 11:58更新 前の記事 次の記事  コラム一覧
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出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) コンサルティング部 剣持 真 2007年5月15日付」より


店先で「ポイントカードをお作りしますか?」と尋ねられることが多い。ポイントカードが小売業の間で浸透してきていることを実感する瞬間だ。ポイントカードはFSP(Frequent Shoppers' Program)とも呼ばれ、1982年にアメリカン航空から始まったFFP(Frequent Flyers' Program)、いわゆるマイレージカードを応用する形で登場し、浸透してきた。

ポイントカードが近年、急速に浸透してきたことにはワケがある。これまで小売業は、新たに店舗を出店すれば、ある程度の集客と売上が見込めた。従って、資金さえ許せば深く考えることなく出店していっても特に問題が生じることはなかった。ところが近年、オーバーストアー状況が進展しつつあるため、ただやみくもに出店しただけでは十分な集客や売上が見込めなくなってしまっているのである。


このような厳しい競争環境下では、小売業はまだ来店したことのない新規顧客を新たに開拓するよりも、既に来店経験のある既存顧客の来店頻度を増やす方が、コスト負担も少なく実現可能性が高いプロモーションを行うことができる。ポイントカードはこのような背景の下、「既存顧客のロイヤルティを向上させる便利な道具」として浸透していったのである。最近では、コンビニエンスストアの最大手、セブンイレブンが2007年4月23日より電子マネー「nanaco(ナナコ)」のサービスをついに開始。nanacoは、決済機能とポイントカード機能を兼ねているサービスである。まず初めに東京都内で導入し、5月28日以降は全国展開を行っていくこととなっている。

では本当にポイントカードを導入することにより、顧客ロイヤルティは向上するのであろうか?

この疑問に答えるべく、顧客のロイヤルティ形成を先行研究に基づいてモデル化し、そのモデルにおいてポイントカードが果たす役割について調査した(※1)。調査対象はスーパーマーケットのポイントカードとし、ポイントカードを保有する消費者に最もよく行くスーパーマーケットについてアンケートを実施した。仮説モデルは、回収したアンケート・データを基に共分散構造分析という手法を使用し、検証を行っている。

分析の結果、意外な事実が判明した。ポイントカードの満足度は、顧客満足度の向上に影響を与えているため間接的には顧客ロイヤルティの向上に影響を与えているものの、直接的には顧客ロイヤルティの向上に影響を与えていないことがわかったのである。

また、顧客満足度に影響を与える要素と、その影響力(※2)を数値で表すと、商品満足度(0.26)、店舗属性満足度(0.63)、ポイントカード満足度(0.12)となる。この分析結果から、ポイントカード満足度が顧客満足度に与える影響が最も低い状況になっていることもわかった。

このような結果となった一因としては、今回の調査対象がスーパーマーケットにおける買物であったことが挙げられる。スーパーマーケットでの買物は、購買頻度は高いが一回当りの購買額は低い。従って、顧客は一つの店舗にポイントを効率的に集約させようと考えるよりも、広く浅くいろいろな店でポイントを貯めれば良いと考えるため、囲い込みの効果が少ないことが想定されるのである。一方、家電製品のように購買頻度は低いものの一回当りの購買額が高い買物は、一回の購買当りに獲得するポイントが高いため、効率的に一つの店舗にポイントを集約させないと損が大きくなると感じることが想定されるのである。

では、スーパーマーケットでポイントカードを導入することは無意味なことなのであろうか?

否である。なぜなら、そこには別のより大きな意義−顧客情報と購買情報が結びついたデータ(顧客ID付POSデータ)の入手−があるからである。これまでのPOSデータからは売れ筋商品や死に筋商品を把握することができた。このPOSデータが顧客ID付になることにより、さらに進展して顧客層ごとの購買の特徴や顧客のロイヤルティの変化を把握することができるようになる。例えば、これまで購買額で上位にいた顧客が、ここ2〜3ヶ月で購買額がどんどん下がっているなど、顧客が離反していく様子を捉えることができるようになるのである。

これらの分析は、来店頻度が減りつつある顧客に限定して割引サービスを提供し、離脱を未然に防止したり、来店頻度の高い顧客層から支持されている商品の品揃えを手厚くしたりするなど、効率的かつ効果的なマーケティング戦略として活用することができるのである。

残念ながら現在、一部の先進的小売業を除いた多くの小売業においては顧客ID付POSデータを分析し、マーケティング戦略として活用するレベルに至っていない。小売業は、ポイントカードを導入しさえすれば顧客の囲い込みができるという安易な発想を捨て、顧客ID付POSデータをマーケティング戦略のために有効活用していくことが求められているのである。

※1剣持真(2006)、「ストア・ロイヤルティ形成においてフリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP)戦略が果たす役割に関する研究」、2005年度法政大学大学院修士論文成果集

※2影響力を示す数値:共分散構造分析における標準化推定値で1に近いほど影響力が大きい。

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