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[コラム] コミュニティ・ファイナンス市場の拡大

2007年06月08日 20:30更新 前の記事 次の記事  コラム一覧
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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主任研究員 池田 栄治 2007年6月4日付」より


 「サスティナブル・コミュニティ」の構築、つまり「持続発展可能な社会」の構築は、我々の最も身近なテーマであるが、最も馴染みの薄いテーマであった。しかし、バブル崩壊後の金融改革、財政再建、縮小均衡を目指す行財政改革などの経済環境変化の結果、我々にも「地域経済を担う市民」としての新しいコミュニティ・スタイルが求められるようになってきた。2000年以降、NPOやコミュニティ・ビジネスなどの非営利組織が急増し、市民が自らの手で豊かな地域社会を築こうとする動きが現れ、行政事務を代替するような広範囲な活動が展開されつつある。これらは「準公的私的セクター」として自治体や民間財団の支援を仰いできたが、NPOの経済規模は今後とも急拡大することが見込まれており、継続的な成長のためには、運営組織、構成員、資金等の運営資源(経営資源)の安定的な確保に努めなければならない。

 これらのNPOやコミュニティ・ビジネスを資金面から支援する機能がコミュニティ・ファイナンスであり、推進機関となるインターミディアリー(中間支援機関=NPO成長支援のための機関)には資金提供機能ばかりでなく、経営支援機能をもった育成機関としての能力が求められている。

 これまで、わが国ではコミュニティ・ファイナンスを扱う金融機関は少なく、組合組織の小規模なものが中心であり、今後のコミュニティ・ファイナンス市場の急拡大に向けた支援体制が整備されているとは言い難い状況である。伝統的な金融機関がコミュニティ・ファイナンスに取り組む場合には多くの課題があることは確かである。無担保、低金利貸出を原則とした貸出では資産健全性が劣化することは否めない。しかし、わが国では「市民バンク」などの小規模な組合方式のインターミディアリーでは、貸倒れが発生していない。米国のインターミディアリー・バンクとして有名なショア銀行も高収益を実現している。また、バングラデシュのグラミン銀行総裁のムハマド・コヌス氏は、地域住民へのマイクロ・ファイナンス活動により、2006年にノーベル平和賞を受賞した。

コミュニティ・ファイナンスの位置付け

<図表1:コミュニティ・ファイナンス市場の仕組み>


 コミュニティ・ファイナンスの貸出対象となるコミュニティ・ビジネスの目的は、住民主体のスモールビジネスを導入し、コミュニティの諸問題の解決に貢献することである。コミュニティ・ビジネスの利害関係者には、(1)コミュニティ・ビジネスに寄付をするパトロン(後継者)、(2)コミュニティ・ビジネスのマネジメントに投資や出資により参画するパートナー、(3)ボランティアとして参画するサポーター、(4)コミュニティ・ビジネスの事業性に着目して資金供与や助成金のつなぎ融資をするファイナンスカンパニーが考えられる。このファイナンスカンパニーが主体となって、コミュニティ・ビジネスを資金面から支えるファイナンス手法が、コミュニティ・ファイナンスである。最近のコミュニティ・ファイナンスではインターミディアリー(中間支援機関)としてファイナンス機能と経営支援機能が求められるようになってきている。米国では、1960年代より低所得者居住地区の地域開発のファイナンス方式として活用されてきた。わが国では1980年代に社会信用の低い起業家(主婦や学生等)への事業支援として活用され、最近では金融機関のCSRの取り組みとして関心を持たれてきている。

<図表2:コミュニティ・ファイナンスの金融事業者マップ上の位置付け>


 わが国におけるコミュニティ・ファイナンスの金融事業者マップ上の位置付けは、図表2のようになっており、現状、非営利法人(NPO等)への貸出領域には実質赤字決算の組合方式によるコミュニティ・ファイナンスが存在しているに過ぎない。

わが国のコミュニティ・ファイナンスの市場規模予測

 コミュニティ・ファイナンスの利用主体は、コミュニティ・ビジネスを推進するNPO等の非営利組織である。わが国のコミュニティ・ファイナンスの市場規模は、貸出サイドからの貸出実績から推測すると1989年から2001年の累計でも約10億円にすぎない。NPOの数は増加傾向にあり、2000年時点では約1万団体であった。米国のNPO市場(160万社)とは比較にならないが、経済産業研究所の2010年予測では、わが国のNPOは57,000団体、公共サービスの10%がNPOへ代替された場合の生産規模は6兆5,884億円になる。NPOは事業規模が約30万円を超えると借入ニーズが発生すると言われている。2010年の57,000団体の15%〜20%が30百万円以上の事業規模になると想定すると、8,550〜11,400団体にに借入ニーズが発生する。各社が事業規模(30百万想定)の1/3である10百万円を借入した場合、借入ニーズは全体で855億円から1,140億円と予測される。

<図表3:わが国のコミュニティ・ファイナンスの市場規模予測>

(出所)NIR研究報告書「NPOの資金循環システムの構築」NPOの将来像を参考に作成


 今後、NPO等の事業規模拡大が予想されるなか、採算を確保しながら、この社会的貢献意義の高い空白領域を埋めていく金融プレイヤーの出現が望まれている。


※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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池田 栄治
(株)日本総合研究所 主任研究員 海外事業・戦略クラスター ヒューマンキャピタルマネジメントクラスター
専門分野:事業構造改革、海外事業戦略(韓国)、クレジットビジネス戦略
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