[コラム] アフガニスタンから見る途上国支援のあり方
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出展:三菱UFJリサーチ&コンサルティングホームページ(http://www.murc.jp/index.php)「国際通貨研究所 国際金融トピックスNo.138/国際通貨研究所 開発経済調査部 主任研究員 福田 幸正 2007年6月8日付」より
先頃、世銀総裁が交代したが、世銀総裁候補者として名前が上がっていた中で目を引いたのが昨年国連事務総長選挙に立候補した前アフガニスタン財務大臣のアシュラフ・ガーニ氏である(現カブール大学総長)。ガーニ氏はJohns Hopkins大学、世銀、国連を経た後、財務大臣として紛争直後のアフガニスタンの復興に携わったことから、援助する側と援助を受ける側双方の事情に精通した人物である。
本年1月に来日したガーニ氏から直接興味深い話を聞く機会があった。
アフガニスタン政府は復興初期の2002年10月から2003年1月までの3ヶ月間という極めて短期間に軍閥が発行するものも含めて少なくとも3種類流通していた紙幣を一本化し、同時に1000分の1のデノミを実施することによって国家統一の要である通貨発行権を確立し復興と経済安定の基礎を築いた。その過程では旧紙幣の回収・焼却と新紙幣の交換のために全土に展開した2,500人ものアフガン人スタッフや両替商などの現地の能力やネットワークに支えられた部分が大きかったとされている。この事例についてはIMFのレポート(注1)に様々なエピソードとともにいわばアフガニスタン版“プロジェクトX”の如く活き活きと描写されている。それはそれとして、ガーニ氏が披露した裏話はこうである。IMFは構想段階では新旧紙幣の交換には少なくとも2年間を要し、投入人員も8,000人と見込まれるので、アフガニスタン政府にはドル化を勧めたとのことである。ところがアフガニスタン政府はIMFの意に反して自らの意志として自国通貨を持つという困難な選択肢を選び、見事にそれを成し遂げたのである。
このアフガニスタンの事例から何が言えるだろうか。ドナー側は無意識のうちにも被援助国には能力がないことを前提に支援に取り組む傾向がありはしまいか省みるべきであろう。アフガニスタンの通貨切り替えの事例のように、途上国によっては想像以上の意志と能力を有しており、ドナー側には先ずは途上国側の土着の能力を含めた実力を見極める眼が求められる。その上で、細々とであっても途上国側で既に機能している土着の制度を掘り起こし、それを強化・活用し、長期的にはその国固有の国のあり方に合致した制度の設計・構築を支援する、というスタンスを基本に据えるべきであろう。その際、ドナー側としては途上国側のやる気を促すことをあらゆる場面で実践することも求められよう。このような基本スタンスこそ我が国のODA大綱がその基本方針の第一番目に掲げる「開発途上国の自助努力支援」の真髄と考える。
来年10月には世界最大規模の二国間ODA実施機関となる新JICAが発足するが、これまで我が国ODAが途上国の現場で積み重ねてきた経験やそれらを通して培ってきたドナーとしての基本スタンスを踏まえ、あらためて途上国支援のあり方を検討する好機として位置づけるべきであろう。
(注1):International Monetary Fund, “Reconstructing Afghanistan”, 2004, pp.61-63
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