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[コラム] Basel I からBasel II へ

2007年06月19日 17:56更新 前の記事 次の記事  コラム一覧
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出展:三菱UFJリサーチ&コンサルティングホームページ(http://www.murc.jp/index.php)「真野輝彦客員研究理事コラム 2007年6月11日付」より


―資本金規制の変化と日本―

 今年から銀行に対する新しい自己資本規制(Basel II )が実施され、3月決算が多い日本の銀行が世界で最初に新規制による決算を発表することになった。幸い景気や株価の回復もあって大手行の自己資本比率は13%台となったようである。

 Basel I は自己資本と資産の比率を、国際業務を行う銀行は8%以上に、国内のみの銀行は4%以上維持することを義務付けるものだが、極めて画一的な規制であった。導入の発端が、為替取引に伴う金融機関の破綻やラテン・アメリカのソブリン危機にどの様に対応するかということであったから当然なのだが、その画一性が短所にもなっていた。例えば借手の財務内容に拘らず、企業貸出は100%資産に計上することなどである。Basel II はこのような短所是正を目的に、1998年見直し論議を開始、第1〜3次案を経て最終合意されたもので、個別銀行の自主的手法も認められることになった。

 1988年のBasel I 合意の前後からBasel II が実施される現在までを振り返ると、日本はこの資本金規制に振り回されてきたと言っても過言ではない。

 第一段階は、表面上の理由付けはともかく、ある意味で日本の銀行をターゲットにした側面が強かったのである。戦後の右肩上がりの環境の中で培われた金融制度・組織から国際化に対応するシステム改革が進まず、日本の薄利多売商法が世界の金融秩序を乱すと受けとめられたのである。バブル期の土地、株価上昇を背景とするニューヨークのロックフェラー・センター買収なども日本への反発に拍車をかけた。事実、当時の日本の金融機関は世界的基準に比し過小資本であった。慌てた日本金融当局は保有株式の含み益を一定限度まで資本金(Tier II )に算入させることの合意を各国から取り付けることで対処することになった。

 第二は、この含み益算入の対処療法が、バブル崩壊とともに馬脚を現すことになる。

 地価、株価の下落が、不良債権増加とともに、銀行の資本金を縮小させ、貸し渋り、貸し剥がしに繋がり、この段階でやっと金融機関の統合整理が始まったのである。しかし確かに主要銀行の統合は進んだものの、郵貯の民営化やそれに刺激された地方金融機関の統合はこれからが本番である。

 第三は、Basel II での決算が始まったが、そこに認められている先進的内部格付手法を採用した日本の銀行はまだない。この手法を採用するためには、内部格付けの根拠となる過去の実績が必要であるが、合併が続く大手金融機関には自主方法の正当性を主張する実績がないためである。

 このようにBasel規制の変遷は、バブル発生・崩壊と殆ど期を一にし、バブルの後遺症が未だに尾を引いている。円の低金利が過剰流動性の一因となっており、世界の批判を浴びつつある。バブルの教訓を忘れずに、世界的な視野での日本の金融政策を期待したい。


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真野 輝彦(まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株) 客員研究理事
   
  1956年 東京銀行入行。
  フランクフルト支店為替課長、本店為替部次長、スイス東京銀行総支配人、丸の内支店副支店長、調査部長を歴任。
  1985年東京銀行取締役、1987年東京銀行参与。
  1996年合併に伴ない、東京三菱銀行参与。
  1999年より現職
   
  日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会委員
  国策研究会 評議委員会議長
  日本国際フォーラム 政策委員
  読売国際経済懇話会 特別会員
  International Club of Bank Economists会員
  国際通貨研究所 評議員
  聖学院大学・大学院 教授
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