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[コラム] 環境債務・資産除去債務の計上方法

2007年07月06日 11:52更新 mailメール

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出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 光成 美樹 2007年7月3日付」より


アスベストや土壌汚染に対する浄化処理等の措置が必要な不動産を売買する際には、通常、市場での不動産価格からこれらの環境リスクを処理するための費用やスティグマ(※1)を差し引いて試算する。不動産鑑定評価においても、その評価方法が示されているものの、実際の市場取引では、売主や買主の交渉力によって影響を受けることもあり、正確な価値を見積もることは難しく、不動産の取引価格は売買関係者にとってわかりづらいものとなっている。しかし、会計基準等において環境リスクの計上方法が明確になれば、価格に対する透明性を高めて関係者の信頼を高めることにもつながる。


米国などで環境リスクのある不動産売買を活発に行っている企業では、環境リスク分を踏まえた資産の買取価格の考え方を提示している企業もある。日本でも5月30日に、企業会計基準委員会から、「資産除去債務(AssetRetirement Obligations, ARO ※2)に関する会計基準の論点整理」が公表され、有形固定資産の除去の際に発生する将来費用を、債務として認識する会計処理の案が提示された。ここでは、「公正価値」の考え方に基づき、資産除去債務を複数のキャッシュフローから加重平均して見積もる手法が提案されている。

公正価値とは、資産の売却や債務移転の支払いの際に、市場の関係者が取引する価格をさす。その特徴は、企業が自社独自の見積りをするのではなく、市場価格を基本として見積りをすることを求めている点にある。

公正価値評価の考え方では、「対象債務の市場での取引価格」が望ましく、続いて「類似債務の市場での取引価格」を参考にして評価するとしており、さらにそれらの価格算出が難しい場合には、「期待値(Expected Value)」が認められている。

「期待値」による資産除去債務に関する費用の見積もりは、対象となる債務の金額を、処理が必要な設備の量、汚染の有無、その深刻度などに応じパターン分けし、それぞれが発生する確率を設定、ディシジョン・ツリー(決定木)等を用いて加重計算して算出する方法である。この期待値を将来の発生時点から、割引率を用いて現在の価値になおし、現在の債務として計上することになる。

一方、米国で規定されている土壌汚染の浄化など環境浄化債務に関する会計処理では、上記の公正価値に含まれる期待値だけでなく、それ以外の計上手法も認められている。米国の材料試験協会(ASTM)では、環境債務(※3)の見積もりに関する標準ガイドを発行しており、期待現在値以外の手法とその適用の考え方を示している。

ASTM のガイドラインに示されている期待値以外の手法には、(1)最もありえそうな値、(2)上限下限値、(3)既知の最小値という3つの費用見積りの考え方が記されている。これらは、期待値を見積もることができない場合等に、最も可能性が高い値や上限下限の範囲、最小値などを出すことで代替的な見積りとするものである。

例えば、特定の措置方法の実施確率が極めて高い場合には、期待値よりも最もありえそうな値を求める、また、最低支出しなければならない価格として、既知の最小値を求めるケースがある。汚染者が複数いる場合、浄化費用の負担割合が明確でないケースなどは、負担が最小の見積もりと最大の見積もりを用いることなどがある。米国企業では、環境浄化債務を記載するにあたり、上述のような最低値や上限下限等で債務額を記載している企業もある。

今回企業会計委員会から提案された会計基準が施行され、資産除去債務等の債務計上の手法が規定されると、市場での取引における環境リスクの評価についても売買当事者間の透明性が高まることが期待できる。このため、これまで取引されていなかったような債務のある不動産の売買や債務移転のような取引が活発になり、将来の環境浄化が明示され、不動産が有効に活用されるようになる可能性もある。

しかし、市場の需要が十分にないような場合には、いつまでも汚染や有害物質が除去されないまま残ることもありうるだろう。汚染サイトが放置されるブラウンフィールド問題が顕在化した諸外国では、サイトを購入し、浄化し、再開発する場合に優遇税制などの資金面の支援策が拡充することにより、需要の少ない汚染サイトの浄化及び有効利用にむけた政策的な支援を進めている。

例えばイギリスでは、汚染等のある不動産を購入し、浄化すると、浄化費用の150%を課税所得に費用計上できる税制措置がとられており、買い手による環境浄化を促進する政策をとっている。米国でもこうした政策的支援が適用されており、日本においても、国際会計基準に合わせて会計基準による債務計上が義務付けられるのであれば、環境浄化を積極的に実施する際のインセンティブの付与も同時に行うことが望ましいのではないだろうか。

※1 スティグマ :土壌汚染の存在(過去に存在したこと)に起因する心理的嫌悪感等から生ずる減価要因をさす。
※2 資産除去債務:有形固定資産を廃棄、閉鎖するなど除去する際に発生する将来の費用
※3 環境債務 :環境汚染の浄化等について法的に求められる将来の対策費用で、米国では環境浄化債務に関する会計処理が偶発債務として規定されている。

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