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[コラム] 公共における顧客満足の再考〜公共品質による経営改革のススメ〜

2007年07月11日 09:30更新 前の記事 次の記事  コラム・行政一覧
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出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 社会経済コンサルティング部 片田 保 
2007年7月10日付」より



■民間手法を活かした公共経営

ここ数年、民間手法を取り入れた行政改革が、報道に取り上げられるようになってきた。夕張市で発覚したように財政危機からの脱却が急がれているという一面もあるが、利用者からの評判が芳しくなく、「お役所シゴト」と揶揄されることが多かった住民向けサービスを改善しようという一面もある。
こうした事情は日本に限った話ではなく、欧米でも新しい時代の公共経営のあり方が問われ、NPM(New Public Management)の導入が進められてきた。このNPMの中心的な考え方の1つである「顧客志向」は、住民目線による行政改革として受け入れられやすい。

「最近、市役所に行ってみたら、窓口の職員の対応がずいぶん良くなった」と感じる人も多いのではないだろうか。手続の仕方に手間取っていると声をかけてくれたり、書類の記入を手伝ってくれたりする。待ち時間がわかるようになっている窓口や、1箇所で複数の手続を行える窓口もある。夜間延長や土曜に開いている窓口も増えてきた。まさに「顧客志向」での満足度アップである。

■顧客たる住民とは誰か?

公共経営にとっての顧客=住民(あるいは市民だが、ここでは住民という表現に統一する)には、いくつかの様相がある。まず、主権者としての住民。そして、納税者としての住民。これらは、行政機関の政策や施策、事務事業の公平性や公正性、正当性、効率性などを監視する立場であり、非効率で無駄な事務があれば見直して欲しいということになる。さらに、公共サービスの利用者としての住民がいる。サービスが使いにくかったり不透明な利用審査をされていたりすれば、住民の不満が高まることになる。

顧客たる住民の立場からすれば、お金を払っているのだからきちんとシゴトをして欲しい、自分に合った利用しやすいサービスであって欲しいと望むだろう。それゆえに昨今では、「住民満足」を考えずに行政改革に取り組むケースは稀で、むしろその改革の指標として住民の「満足度」の向上が重要になり、あたかも顧客満足を第一で考えさえすれば最善の行政改革ができるかのごとくである。

■住民満足の陥穽

こうした時代であるからこそ、「住民満足」を再考してみる必要があるだろう。そのポイントは、次の3つである。

(1) 顧客満足とコスト
先に紹介した窓口の夜間延長・土曜の開庁は、利便性が高く住民にとってもありがたい話である。さらに、24時間365日、開いていてくれれば、いつでも利用できるのでよいかもしれない。しかし、その裏側には、職員がシゴトをすることによる給与や時間外手当、施設・設備の警備、光熱費などコストがかかることを忘れてはならない。「住民満足」に注目するあまり、利用者が少ないにも関わらず大幅に時間外での対応をすることは、財政圧迫にもつながりかねないのである。

(2) 費用対効果
より効率的に事務を行うために、費用対効果の観点から無駄の多い事務を洗い出すケースが増えている。これ自体を否定するつもりはない。もちろん、きちんと費用に見合った効率的な事務遂行を心掛けて欲しい。職員自ら行うと費用負担が大きくなる事務を検証し、民間企業が創意工夫することで費用が下げられるのであれば外部委託をする。この考え方も悪くはない。しかし、もっと「公共性」に眼を向けてみてはどうだろうか。国・自治体であるからこそ、費用をかけてでも取り組まなければならないことがあるはずである。たとえば、社会的弱者を生まないようにするための政策・施策は、単純に費用見合いではかれるものではない。たとえ費用負担が大きくても政策目的に照らし合わせて判断し、行政による実施を選択してもよいのである。

(3) 今の住民、将来の住民
さらに難しいのは、世代間や地域間での負担を求められるようなケースである。たとえば今後、社会保障の負担が高まると予測されることから、消費税率を○%アップするという話を聞くと、多くの人々は異を唱えるだろう。将来の問題解決のために増税を強いられる場合、よほどの住民理解が得られなければ、世代によって不満が高まるからである。「増税なんてイヤだ」と住民満足が低下することになる。環境問題なども同じである。ずいぶん意識が変わってきているものの、今の時代に自らの生活に負担を強いられるのは避けたい。しかし、今の子どもたちが大人になったときに何とかすればよいというわけにはいかない問題も多い。このような政策決定は、現在の住民の満足/不満足という点で判断すべきではないだろう。長期的な視点で捉えて「公共性」を考える必要がある。

■「公共品質」の経営を考えよう

繰り返しになるが、「住民満足」を考えなくてもよいというのではない。公共における「満足」が、民間手法による経営での「満足」とは異なる一面を持つということを指摘したいのである。どう考えても不適切な対応をする窓口は改革すべきであり、費用対効果を考えようともしない予算は見直して欲しい。非効率・不透明・不公正が体質的に染み付いてしまっている行政は抜本的に刷新すべきである。

しかしながら、いかなる場合であっても「公共」の原点に立ち返ることが必要なのではないだろうか。民間企業が進める経営改革の品質でははかりきれない「公共」における品質とは何かを、今こそ改めて自問し、安易に民間手法だけで行政改革を進めるのではなく、「公共品質」を追究する経営改革を心掛けて欲しい。

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