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[コラム] 「地域力」アップのための政策・施策立案のために 〜地域力は可視化できる〜

2007年07月14日 11:13更新 前の記事 次の記事  コラム・地域社会一覧
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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 研究員 永冨 聡 2007年7月2日付」より 


1.何故今、「地域力」なのか?

 2007年5月に自由民主党地方行政調査会は、町内会や消防団など住民による地域活動の活性化に向け、国や地方公共団体、企業が支援する「コミュニティ基本法」(仮称)を制定する方針を定め、今秋の臨時国会に法案を提出予定であることを明らかにしました。このことは我が国の公共政策において、地域コミュニティの重要性がいっそう増していることを示しています。地域活動の活性化支援に国が積極的に関与すべきかどうかはさて置き、テーマ型の活動を推進する市民団体やNPOだけでなく、地縁的な活動を行う町内会や消防団を地域社会の担い手として再評価し、支援していこうとする取り組みは、「地域力」の向上に直結するといえるでしょう。

 「地域力」とは一般的に地域の持つポテンシャル、地域住民の発揮する力などを指し、地域が解決したい課題やテーマに応じた定義が、全国各地で用いられています。例えば、北海道知事政策部の報告(2006年2月)において「地域力」は、(1)組織化力、(2)自治力、(3)協働力、(4)変革力の4つの能力の複合的能力と位置づけ、「地域における信頼関係や互酬性の規範を持つ多様な組織の住民や組織のネットワークが、地域の公共的、社会的課題に気づき、各主体が自律的に、もしくは協働しながら地域課題を解決したり、地域の価値を創出したりする力」と定義されています。

 このように「地域力」は、私たちの地域における安心・安全な生活・暮らしを確保し、地域社会の担い手による住民自治の実現につなげていくための新たなキーワードなのです。

2.全国に広がる「地域力」アップの取組み

 国内においては、福祉、教育、環境、まちづくり、商店街活性化などの多様な分野において、「地域力」アップの取組みが活発化し、その成功事例が発信される機会が増えてきました。こうした成功事例からは、「地域力」をアップさせるには、(1)生活課題の深刻さが住民にきっかけを与えたなどの「住民に自覚を持たせるきっかけづくり」、(2)活動を牽引し、メンバーを束ねるリーダーが存在したなどの「活動を牽引する人材の発掘・育成」、(3)地域の組織が連携して生活課題の解決に取り組んだなどの「組織間の連携を促すしくみ」等のポイントを抽出することができ、こうした図書や報告を手に取られた読者も多いのではないでしょうか。

 しかしながら、こうした事例を政策・施策の立案者として眺めると、「地域力」の対象とする地域のスケール(範囲)がそれぞれ異なり、そのもたらす効果も多様であるが故に、既存の政策・施策の枠組から離れ、「地域力」アップの視点から新しいアイデアを喚起することが難しくなっているように思えます。そのため本稿では、「地域力」アップのための政策・施策立案のための新たな視点を示し、そのヒントを導出したいと思います。

3.「地域力」アップのための政策・施策立案のヒント 〜地域力の可視化〜

 「地域力」アップのための政策・施策立案を困難にしている理由の主なものとして、(1)自らの地域における「地域力」の水準を定量的に把握することが難しい、(2)「地域力」が発揮されたとしてもその成果に至るプロセスが明確でない、ということが考えられます。こうした課題は近年、「ソーシャル・キャピタル」の視点を導入することにより、一定は解決することが可能となっています。
 
 ソーシャル・キャピタルとは、アメリカの政治学者R.Dパットナムの一連の研究が契機となり近年、物的資本や人的資本などと並ぶ新しい資本の概念として注目を集めています。我が国では「社会的資本」「社会関係資本」と訳されることが多く、概ね「信頼」「つきあい」「社会参加」という3つの構成要素からなり、さらにそれらから得られる「特徴」「能力」「資源」と解釈することが出来ます(詳しくは、東主任研究員の当社“研究員のココロ”「なぜ今ソーシャル・キャピタルなのか」をご参照ください)。

 内閣府調査(2002年度)によると、ソーシャル・キャピタルが豊かな地域には犯罪が少なく、出生率が高いことなどが報告されており、ソーシャル・キャピタルは地域社会と極めて密接な関係にあることが見出されています。ソーシャル・キャピタルは、「地域力」のポテンシャルを推し量るために極めて有効な概念といえます。本稿では以下、このソーシャル・キャピタルの定量側面に焦点を当て、「地域力」アップのための政策・施策立案のヒントを示します。

<図表1 「地域力」とソーシャル・キャピタルの関係>

(資料)北海道知事政策部(2006)
「ソーシャル・キャピタルの醸成と地域力の向上〜信頼の絆で支える北海道〜」


【1】「地域力」を定量的に把握する。

 前述のとおりソーシャル・キャピタルは「地域力」を生み出す源泉と捉えられ、内閣府調査(2002年度)において既に、都道府県別のソーシャル・キャピタル指数が測定されています(指数が大きいほど、豊かなソーシャル・キャピタルがある地域とされます)。この指数は「信頼」「つきあい」「社会参加」に関する設問により構成されるアンケート調査から導出されており、指数化の手順も明示されているため、同様の手法を用いることにより、市町村別あるいは区域別のソーシャル・キャピタルを定量的に把握することは充分に可能です。国内でも、さいたま市をはじめとして、いくつかの調査報告が見られるようになってきました。
 こうしたアンケート調査を実施することで、地域の「信頼」「つきあい」「社会参加」の水準を目に見える数字として他地域と比較することが可能となり、自分たちの地域には「地域力」を生み出す源泉が足りないのか、「地域力」を生み出す源泉は十分にあるがうまくそれを発揮できないのかなど、その分析や考察を通して、政策・施策立案の糸口を見つけることが出来ます。

<図表2 都道府県別のソーシャル・キャピタル指数>

(資料)内閣府(2002)
「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」


【2】「地域力」の発揮の成果に至るプロセスを明らかにする。

 また、国内におけるソーシャル・キャピタルに関する調査・研究の進展により、「地域力」の成果に至るプロセス・構造が少しずつ解明されてきました。図表3に、ソーシャル・キャピタルと関係の深い変数を、統計分析等により導出した例を示しています。

 これを見ると、ソーシャル・キャピタルの構成要素である「信頼」「つきあい」「社会参加」に対して、公共施設の利用頻度の高さ、1校当たり児童・生徒数の多さ、居住年数の長さ、学生・主婦(主夫)であることなどは、独立的に何らかの影響を及ぼしている変数であることが分かります。一方で、NPOに加入していることは、友人・知人とのつきあい、ボランティア・NPO活動への参加、選挙投票率の高さなどに影響を及ぼす変数であり、「信頼」「つきあい」「社会参加」から構成されるソーシャル・キャピタルのループ構造に組み込まれ、ソーシャル・キャピタルに対しては、独立的な変数ではありません。

<図表3 ソーシャル・キャピタルに影響を及ぼす変数>

(資料)さいたま市市民活動支援室(2006)
「ソーシャル・キャピタル向上に向けた基礎調査」の図表を一部改編


 ソーシャル・キャピタルの醸成が「地域力」の源泉となり、その「地域力」が十分に発揮されて、私たちの地域における安心・安全な生活・暮らしを確保され、地域社会の担い手による住民自治の実現につながるという成果に至るプロセスに、政策・施策立案のポイントがあると考えると、こうした変数は重要な政策変数のひとつと見なすことが出来ます。
 すなわち綿密なアンケート調査や統計分析を行うことによって、例えば、公共施設の利用頻度を高めるという政策・施策が、「地域力」の発揮を促進させるものとなり得る可能性が大いにあることが分かります。

<図表4 「地域力」の発揮の成果に至るプロセス>


4.おわりに

 「地域力」については政策・施策立案の場面において、新しい時代の公、パートナーシップ、ガバナンスなどの概念による定性側面の検討が中心となっていることから、今回はソーシャル・キャピタルの定量側面に焦点を当て、「地域力」アップのための政策・施策立案のヒントを示しました。 
 「地域力」及びソーシャル・キャピタルの調査・研究は、国内でも始まったばかりです。筆者らは本年度独自に、「地域力」及びソーシャル・キャピタルの政策的意義を明確化することを目的に、政策研究会や全国アンケート調査を実施する予定としていますので、この分野に興味がおありの方は、気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

引用・参考文献

1. 北海道知事政策部(2006)「ソーシャル・キャピタルの醸成と地域力の向上〜信頼の絆で支える北海道」

2. 藤澤研二(2003)「コミュニティパワーの時代」(水曜社)
3. 日本政策投資銀行地域企画チーム(2004)「実践!地域再生の経営戦略」(きんざい)

4. 稲葉陽二(2007)「ソーシャル・キャピタル〜「信頼の絆」で解く現代経済・社会の諸課題〜」

5. 内閣府(2002)「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」

6. さいたま市市民活動支援室(2006)「ソーシャル・キャピタル向上に向けた基礎調査」 など


※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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永冨 聡
(株)日本総合研究所 研究員 創造都市戦略クラスター
専門分野:地域環境政策、パートナーシップ政策、住民参加まちづくりなど
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