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[コラム] 企業ブランドを維持するカギとなる製品安全管理の重要性

2007年07月19日 08:40更新 mailメール

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出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) コンサルティング部 小具 龍史 
2007年7月17日付」より



ここ数年、企業の製品事故が発生し続けている。新聞やニュースの報道では、ほぼ連日のように聞くテーマとなっている。特に2005年に起きた松下電器のFF式石油暖房機による製品事故を始めとして、最近ではパロマやリンナイのガス湯沸かし器による事故などが記憶に新しい。製品事故を起こした有名・老舗企業の中には、その対応が仇となり、信用を失いブランドを失墜させてしまった企業もある。

経済産業省も一連の製品事故への対応に追われ、この事態を重く見た結果、2007年3月には、製品安全の確保に向けた事業者の自主的かつ自律的な取組みを促すことを目的として、事業者における製品安全に関する基本的な考え方や行動のあり方を示した「製品安全自主行動計画策定のためのガイドライン(製品安全自主行動指針)」を取りまとめ、企業へと告知した。

■製品事故への対応の良否は、企業ブランドの明暗を左右する
なぜ製品事故が起きてしまうのか?事故が多発する背景には、様々な要因があることが指摘される。企業側の製品設計や製造段階における問題、あるいは消費者側の製品知識の不備、不正改造等に代表される使用方法の問題、そして製品自体の経年劣化の問題など数多くの要因が絡み合って生じているため、その原因を特定することは非常に難しい。

しかしながら、一旦事故が起きてしまった場合は早急に原因を突き止めて、一刻も早く対応しなければその影響はますます大きくなって行くばかりである。例えばパロマは製品事故の公表後に、急いで点検・回収対応を開始したが、事故原因の説明や対応に関する方針などが当初発表した内容と二転三転することとなってしまったために、初動対応で大きく遅れを取った。この行動は逆に消費者への不信感を強める結果となり、ブランドイメージを低下させることになってしまった。
これとは対照的に、松下電器の対応は素早かった。同社は事故を公表した4月以降、一日当たり平均200人体制で、一台5万円での買い取りや新聞折り込みチラシ5,800万部の配布、テレビCM18,200本を告知へ切り替える等、事後の対応を迅速に実行した(※1)。同社のこの年の事故対応に係る費用は約250億円近くにも昇ったが、この動きが功を奏したためブランドに与える被害を最小限に留めることになった。

このような局面における対応、つまり事後対応の如何が、企業ブランドの明暗を分けることになる。重要なのは企業と消費者との間には、ただでさえ情報の非対称性(※2)が存在しているため、企業側からの積極的な情報の提供が必要とされるということである。現在パロマは、全社の見直しを行い「お客様品質を大切にする会社になります」というスローガンを掲げ、全社一丸となって再生を図っている。同社のホームページの中で告知されているメッセージとして印象的なのは、「お使いになる方の目線で全ての製品を開発すること。」という一文である。この視点こそが、顧客の安全・安心・信頼を獲得するための重要な要素となるため、同社の今後の取組みに期待したい。

■製品の一生を追う仕組み作りが、製品事故の拡大を防ぐ
また一方で、企業が製品事故の拡大を防いでいくためには、事前の仕組み作りをしておく必要がある。今後企業には、製品のライフサイクル(一生)の中で、特定の製品のトレースができるような製品安全管理制度(トレーサビリティ・システムや緊急時体制)が整備されていくことが期待される。
具体的には、既に市場に出回り流通してしまっている自社製品(既存製品)については、今ある全ての流通ルートを網羅的に洗い出し、大量流通のルートから順に人海戦術で製品所在を特定していく以外には方法はないのだが、一方で、これから市場に流通する新製品については事前の緊急時体制の整備という組織的な対応に加えて、製品ライフサイクルの全ての段階をトレースの範囲とするような仕組みを整備することが期待される。
製品に何らかの管理媒体を個別に貼付し、設計・開発・製造・出荷(流通)・販売・メンテナンス・廃棄までの全ての製品ライフサイクルプロセスにおいて、いつでもどの段階にあってもある特定の製品の所在を管理することができるようになれば、市場に出回る前に問題が発覚した製品(製品番号)を個品レベルで特定して回収することなどが可能となるため、事故の拡大を未然に防ぐことが可能となる。これにより企業はリコールなどの脅威から身を守れるのと同時に、消費者にとっても製品の安全が保たれることになり、全体最適が実現される。

このように、事前にという観点からの仕組み作りへの着手は、企業の経営的な側面から見てもリコール対応などにかかる莫大なコストを抑えることに繋がり、結果的に企業ブランドを守ることにも繋がるという正の循環をもたらすことになる。

■社会的公器としての視点で製品安全管理をおこなう
企業というものは、その行動の一つ一つが社会的なインパクトを与えるような大きな存在であるが故に、社会的公器としてきちんと責任・役割を果たす義務というものが問われることになる。企業は本来、いい加減な対応などは決して許されない存在なのである。特に様々な不祥事が多発している時代だからこそ、企業は自らの使命を再認し、社会的公器としての「義務」を果たさねばならない。
現在のような世の中では、企業は自らの持つこのような義務を強く意識した上で、製品の安全管理(事故後の対応・事前の仕組み作り)をおこなっていくことこそが、自社が長年培ってきたブランドを保っていくための最良の方法であるといえるのかもしれない。


※1「パロマ事故−昨年の松下電器・温風機事故と比較−」 日本経済新聞、2006年7月22日、企業総合14版から一部引用。

※2 情報の非対称性:情報経済学の用語。ミクロ経済学のゲーム理論で使われる概念で、具体的には、送り手が所有している情報を受け手が所有していない(知らない)ために、保有情報の格差が生じている状態のことを指す。

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