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[コラム] オープンシステムの意義 〜銀行勘定系システムを例に〜

2007年07月20日 14:50更新 

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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主任研究員 青木 ゆかり 2007年7月13日付」より


 汎用機(注1)で構築されるのが一般的であった銀行の勘定系システムにもオープン化の波が押し寄せてきている。三重県に本店をおく百五銀行は、2007年5月に米マイクロソフトの汎用ソフト「Windows」ベースの勘定系システムの稼動を開始した。
 同行によると、当該システムは「オープンプラットフォームで勘定系処理機能を提供する(注2)」ものであり、「マイクロソフトのWindows Server とSQL Server を基盤とした世界初のフルバンキングシステム(国内/外国勘定系に加え、対外系、チャネル・ハブ、資金証券系、融資支援系などの総称)(注2)」であるという。 

1.オープンシステムとは

 ここで「オープンシステム」という言葉を整理しておこう。
 オープンシステムとは、一般に、特定ベンダに依存しないシステムであること、システムに関わる規格(各種インタフェース、データ形式等)が共通化され、外部に公開されている(そのような規格を使って構築されている)こと、を指すと言われている。「PCサーバを使って構築されたシステム」がオープンシステムである、と言うわけではない。
 「規格が共通化され、外部に公開されている」ということは、「ハードウェア・ソフトウェアが稼動する環境」が共有されているということになる。これにより、当該システムと連携するハードウェアやソフトウェアを、当該システムを作ったベンダ以外のベンダが作成・提供できるということにつながる。そのため、特定ベンダに依存しないシステムが構築できることになる。
 現在では、Windows系のOSで稼働するように構築されたシステムのこともオープンシステムと呼ぶ場合が多くある。Windows系のOSは、多くのベンダのハードウェアの上で稼働するとは言え、特定のベンダのOSに依存している以上、厳密にはオープンシステムとは言えないのではないかと思う人もいるのではないだろうか。筆者もそう思うが、そのあたりの位置づけは曖昧となっているのが現実である。
 Windows系のOSは、仕様の一部を外部に公開しており、Windows系のOSが稼動しているハードウェアと連携するハードウェアや、 Windows系のOS上で稼動するソフトウェアを多くの他ベンダが提供していることは事実である。その部分でオープンシステムと呼ばれているのであろう、と筆者は理解している。

 オープンシステムに対する概念は、特定のベンダの製品だけで構築されたシステム(プロプライエタリシステム)や技術や仕様が公開されていないシステム(クローズドシステム)であり、決して「汎用機を使って構築されたシステム」ではない。汎用機は、その歴史から、各ベンダがそれぞれの規格を定めて、それに則って動いていることが多く、必然的にその上で稼働するソフトウェアも汎用機のベンダに依存することが多いことから、オープンシステムにならないことが多かっただけである。汎用機を使って構築されたシステムであっても、オープンシステムとなる場合はあり得る。

2.金融機関勘定系システムのオープン化の傾向

 金融情報システムセンターの調査によると、2006年3月末日現在の調査で「オープン系システムで勘定系システムを構築済」とした機関は、全体で 7.0%であり、前年度の5.6%を上回っている。また、地銀、信金では2割前後、第二地銀で1割強の機関が「検討中」と回答している。これらのことから、今後オープン系システムで勘定系を構築する金融機関は増えていくものと推察される。
 ただし、オープン系システムで勘定系を構築したからといって、それだけでシステムにかかる費用が圧縮できるわけではない。少し古い調査になるが、 2003年1月の金融情報システムセンターの調査レポートによると、UNIXサーバによる勘定系システムを導入した八千代銀行では、初期費用は安くなったものの、導入当初の運用費用は旧システムとほぼ同額であったという。

3.オープンシステムの時代の「強いベンダ」とは

 近い将来、システムの構築においてオープン化が当たり前なこととなり、「オープンシステム」と言う言葉が屋上屋を重ねた言葉のように捉えられる日も来るかもしれない。その時は、規格の共通化が進み、共通化された規格の上で稼働することが、システムの暗黙の了解となっているだろう。ちょうど、どこのメーカの電球を買ってきて付けても、灯がともるのが当たり前であるように。
 オープン化が進んだ時、システムベンダ(供給者)の特色というものはなくなり、「どこを選んでも同じ」ということになってしまうのだろうか。筆者はそうは思わない。規格が定められたからといって、独自の技術を発揮する余地がなくなるわけではない。先の電球のたとえで言えば、同じように灯がともっても、A メーカの電球よりもBメーカの電球の方が長持ちする、ということになれば、消費者はBメーカを選ぶだろう。
 また、オープンシステムであるからこそ、多くの製品から成り立っているシステム全体を取りまとめる力量が大切になってくる。様々な製品を組み合わせて、当該システムの最適な構成(アーキテクチャ)を取りまとめる能力を持つ人材を多く持つことが、オープンシステム時代のベンダには欠かせないと考える。
 海外のものも含め、オープンなプラットフォーム上のハードウェア・ソフトウェアを的確に組み合わせて、顧客の要望に合ったシステムを構成する能力を持った人材、また、多くのシステムに組み込まれるに値する高性能なハードウェア・ソフトウェアを作る能力を持った人材、このような人材を豊富に抱えるベンダが、オープンシステムの時代における「強いベンダ」となるのではないだろうか。

4.オープンシステムの意義

 オープンシステムに移行したからといって、即座に構築費も維持費も従来より安くなり、信頼性、安全性、効率性にも問題はない、バラ色のシステムが手に入るわけではない。それでも、オープンシステムに期待を寄せる企業が多いのは何故だろうか。
 一つには、大規模なシステムほど、過去のソフトウェア資産を使用する必要があるからではないだろうか。システムは、業務や社会情勢の変化に伴って変化し続けなくてはならないので、当初の構築時に最適だったプラットフォームが、いつまでも最適であるとは限らない。システム更改や、合併等によるシステム統合の機会に、過去のソフトウェア資産が現在のプラットフォームで稼動しないことで苦労したことがある企業は、オープンシステムに魅力を感じることだろう。
 今後は金融機関のシステムのみならず、どのような分野のシステムにおいても、オープン性が重視されることになるだろう。自社のシステム(の規格)の独自性を武器に顧客を囲い込むのではなく、オープンなプラットフォーム上で多くのベンダが競い、それを顧客が選択する方向に進んでいくものと思われる。
 このような状態になった場合、規模の小さいベンダであっても、競争力のある製品を作ることができれば、大規模システム構築の分野に参戦できることになる。従来は、規模の大きなシステムを構築する場合、ハードウェアもOSもデータベース管理システムもネットワークも、全て用意できるベンダに依存せざるを得なかったところ、オープンシステムの場合、小さくてもキラリと光る製品があれば、その製品を大きなシステム (の一部)に組み込むことが容易となる。
 顧客側にもシステムを「見る目」が欠かせなくなる。選択肢が広くなる分、費用対効果に優れたシステムを手に入れるために決めなくてはいけないことが多くなる。予算だけでなく、自社のシステムに必須な要件は何で、譲れる部分はどこであるかをきちんと認識してベンダに伝えられるユーザ、広い選択肢の中からベンダが構成したシステムを的確に評価できるユーザであることが求められるようになるだろう。
 オープン化の意義は、ソフトウェア資産の流動性を高めること、情報システムに更なる技術の競争を持ち込むことであり、費用の低廉化等はその果実に過ぎないのではないだろうか。

注1:企業の基幹業務システムなどに用いられる汎用大型コンピュータ

注2:2007年5月7日付株式会社百五銀行ニュースリリースより引用


参考文献

*「調査レポート わが国地域金融機関におけるオープン勘定系システム導入の現状」財団法人金融情報システムセンター(2003年1月)

*「金融情報システム平成18年10月増刊61号」財団法人金融情報システムセンター


*Windowsは、米国Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
*Windows の正式名称は、Microsoft Windows Operating System です。


※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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青木 ゆかり
(株)日本総合研究所 主任研究員 IT戦略クラスター
専門分野:金融情報システム、情報セキュリティ関連----------------------------------------

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