[コラム] 米国サブプライム問題の世界的波及
出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティングホームページ(http://www.murc.jp/index.php)「真野輝彦客員研究理事コラム 2007年8月21日付」より
―ヘッジ・ファンドのリスク―
米国の低信用住宅ローン、所謂サブプライム問題の悪影響が世界的に拡大し、日米欧の金融当局は巨額の流動性供給をせざるを得なくなり、更にFRBは8月17日、緊急会議を開き、公定歩合を0.5%引き下げ、5.75%とした。この機会に、米国国内問題が世界に波及する過程を整理し、問題の所在を明確にしたい。
米国で住宅ローンの焦げ付きが起こっても、それが米銀ローンである限り、影響は米国国内に限定される。海外に波及したのは、このローンが住宅担保付金融商品として市場に売却され、それを高利回り運用を狙った各国のヘッジ・ファンドなどが大量に購入したためである。このため米国の証券会社やフランスの大手銀行傘下のヘッジ・ファンドの破綻危機の報道が、金融・株式市場不安を加速させたのである。ヘッジは経済行為に内在するリスク回避の手当てをすることを意味するのだが、ヘッジ・ファンドとは名ばかり、リスク・ヘッジがなかったことが確認されたのである。
ヘッジ・ファンドへの出資者数は法制上少数に限定されており、金融当局はこの問題を「豊かな出資者のリスクは自己責任」とで切り捨てることも出来よう。しかしそうできない理由が三つある。第一は、多くの一般投資者が参加する投資信託等が同じ問題を抱えているのではないかという懸念である。第二は、ファンドが損失補填や資金繰りのための保有株式売却が株価下落に繋がることである。第三は、為替相場に影響することである。各国株式の売却で得た現地通貨の売り、出資通貨の買いが発生するからであり、最近の円やユーロの乱高下はこのような取引の結果である。
最大の心配は、このような金融、株式、為替市場の不安定さが、実体経済に及ぼす悪影響である。この要因を重視したからこそ、主要国の金融当局が巨大な流動性供給に踏み切ったと思われるのだが、この行為自体が大きな矛盾を含んでいることに注意する必要がある。世界経済は他方で、原油価格の高止まりなど、インフレ問題を抱えているからである。FRBが公定歩合を引き下げ、金融機関への流動性供給をしつつ、市場誘導金利を据え置いたのはそのためである。日銀の利上げが先延ばしされるとの見方が強まっているが、もともと種々のファンドが急増したのは世界的な金余り現象の結果であり、日本は、円キャリー・トレードに象徴されるように、大きな資金供給源となっていることを忘れてはならない。
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真野 輝彦(まの てるひこ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株) 客員研究理事
1956年 東京銀行入行。
フランクフルト支店為替課長、本店為替部次長、スイス東京銀行総支配人、丸の内支店副支店長、調査部長を歴任。
1985年東京銀行取締役、1987年東京銀行参与。
1996年合併に伴ない、東京三菱銀行参与。
1999年より現職
日本商工会議所・東京商工会議所 政策委員会委員
国策研究会 評議委員会議長
日本国際フォーラム 政策委員
読売国際経済懇話会 特別会員
International Club of Bank Economists会員
国際通貨研究所 評議員
聖学院大学・大学院 教授
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