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[コラム] 自治体の資産マネジメントのススメ 〜自治体版CREの提案〜

2007年08月24日 09:47更新 

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出典:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主任研究員 亀山 典子 2007年8月13日付」より


1 CREから見た自治体財産

 CREとは、「Corporate Real Estate」の略で、企業が所有する不動産の保有形態や管理手法を見直し、企業価値の向上を図るための経営戦略のことを指します。たとえば、将来的に期待できる賃貸収入の総額が現時点での売却益よりも上回る不動産であれば、保有して賃貸とするほうが得策です。一方で、自社が所有してオフィスとして使っている不動産であっても、保有コストの方が賃貸コストより大きい場合や、将来的な不動産価値の値下がりが懸念される場合には売却して賃貸に切り替えたほうが得策です。このように、不動産の保有形態や管理手法には多様な選択肢があり、保有する企業にとって、最も効率的に資産を活用できる方策を選択することが望ましいと考えられます。

 不動産の効率的な運用は、企業だけではなく、自治体にも同様に必要です。しかし、公共施設や道路施設など、行政サービスを実施する上で不可欠である、いわゆる「行政財産」は、行政サービスを滞らせることのないよう、売却や権利設定の禁止など、厳しい規制のもとで財産管理がなされています。一方、行政財産以外の普通財産、たとえば行政サービスに活用されていない未利用地などは行政財産ほどの制限がかけられていないため、本来はもっと自由な活用方策が考えられるはずですが、実際にはその取り組みはあまり活発ではありません。

2 自治体における資産活用の視点

 「資産を保有する」という行為には、固定資産税や維持管理費などの「コスト」が必ず伴います。資産活用の効率化を考えるのであれば、コストを最小限に抑えて効果を最大化することが必要となりますが、自治体の場合には、資産を保有する「コスト」を最小限に抑えることはあまり重要視されていません。

 この背景には公会計があります。公会計は企業会計と異なり、資産のストックよりもフローを重視していることから、「保有」することにかかっているコストは会計の構造上見えにくくなっています。近年は、総務省の方針にしたがい、バランスシートを作成している自治体が増えており、ストックに対する認識も少しずつ高まっていますが、バランスシートの作成そのものが目的になっているきらいもあり、「資産の活用」にあたっての政策決定にはあまり活用されていないのが実態です。さらに、行政評価が多くの自治体で取り組まれていますが、施設や土地にかかっているコストを事業費に含めて評価しているところはほとんどありません。

 そしてもう一つ、行政の組織機構の問題もあると考えられます。資産の有効活用を行うためには、財産を管理する部署である「管財」セクションだけではなく、財政や企画はもとより、事業を所管する事業課も含めたトータルな視点が必要となります。このため、庁内横断的な連携が必要不可欠であり、「企業価値」に相当する「自治体価値」を最大化するための政策的な判断を行っていくことが求められます。

3 自治体での資産活用の現状 〜 アンケート結果から 〜

 当社では、このような認識にもとづき、47都道府県、ならびに人口30万人以上の都市140自治体を対象に資産の有効活用に関するアンケートを実施し、その結果をまとめています(平成19年1月実施、102自治体から回収)。たとえば、バランスシートはすべての自治体で作成されていましたが、その活用については9割以上が「議会や住民への説明」と回答しており、「負債の処分」や「遊休資産の処分」などの政策決定に活用しているとの回答は2%程度でした。また、資産管理については、所管部門で個別に管理しているとの回答が土地・建物ともに行政財産で6割以上を占めている半面、「全庁的な資産活用方針を策定」している自治体は、行政財産では1〜2%、普通財産では1割程度にとどまっているなど、資産マネジメントが所管部門に依存しており、庁内の連携があまり行われていない実態も浮かんできます。

4 自治体版CREの提案

 人件費や諸経費を切り詰める“行革”も大切ですが、ひとたびストックである“資産”に着目すれば、まだまだ節約できるコストがあることや、サービス向上のために有効活用できる資産があることに気づかされるのではないでしょうか。地方分権が進み、自治体の財政力の格差が拡大すると見込まれる今こそ、資産の有効活用で他自治体に差をつけるチャンスだと思います。

 そこで当社では、CREのCorporateをPublicに読み替えて“PRE”を推進することを提唱しています。自治体においてはこれまで、公共サービスを安定的に実施しなければならないという使命ゆえに、サービスに必要な資産は自ら「保有」することが、半ば当然のように考えられてきました。しかし今後は、資産(アセット)に対して、最大の成果(リターン)を住民に還元するため、賃貸借や証券化等を含めて、柔軟な発想で自治体の資産マネジメントを行う必要があるのではないでしょうか。




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亀山 典子
(株)日本総合研究所 主任研究員 地域戦略クラスター
専門分野:総合計画、行政評価
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