[コラム] 規程整備のススメ
2007年09月26日 23:05更新
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出典:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主席研究員 荒木 栄 2007年9月21日付」より
現在、あるお客様の内部統制プロジェクトの一環として、グループ企業全体の規程整備を担当させていただいております。内部統制システム確立の対象範囲はグループ企業全体に及ぶため、グループ内の全企業について、定款、取締役会規程から始めて、主要な約60規程の点検と整備をすすめています。
このプロジェクトは、会社法や金融商品取引法の改正という、いわば外的な要因を契機としてスタートしたものですし、いわゆるJ−SOX対応の内部統制プロジェクトが経理を主体とする業務フローの可視化・文書化を主要な目的としている上に、ご担当の方々もこれに忙殺されているということもあって、規程整備は必ずしも注目(注力)されていないようです。しかし、規程の点検と欠落規程の整備を進めていくうちに、人事コンサルタントとしての仕事の品質向上にも規程整備が効果的であることに気付きました。このことはコンサルタントだけでなく、企業の皆さんにもお役に立つと思いますので以下にその気づき点を3つお話します。
1.規程化により、いつでも誰でもが制度やしくみを理解する基本資料となる
決められた手続きや制度内容を簡潔かつ疑義や異なる解釈を生じないように条文にまとめることにより、後日、誰もが正確に理解することができます。最近は私もお客様も、企画書、検討資料から社員説明資料まで、図解を主体としてA4版ヨコにまとめることが多いのですが、これは専ら口頭による説明(プレゼンテーション)の資料とすることが目的であり、資料によっては文章による解説がほとんど付けられていないなど、後日、説明を聞いていない者が内容を理解することが難しい場合があります。
実は私も、人事制度設計後の就業規則、給与規程の改定等は、プロジェクトもほぼ修了した後のいわばオマケの仕事、体裁を整えるだけの形式的な仕事として規程整備をとらえがちだったことを反省しています。
第1条(目的)から順に、第1項から順に、文頭から文末まで順にじっくりと読み進めることによって、「読めば分かる」ように条文の形に整理しておくことがとても大切です。なお、規程はなかなか読む気がしない、規程というだけで難解、というイメージがあることは否定できません。法令特有の持って回ったいい方、難解な用語、二重否定や長いかっこ書きの挿入など、反面教師としなければならないと思います。商法も会社法ではひらがなでわかりやすくなりましたし、気を遣うべきポイントです。
なお、私は規程草案の作成にかかる前に、重要な用語、日常と少し違う意味を持つ用語から番号の取り方までをまとめた「規程草案作成の手引き」を用意して、関係の方々にご説明しています。
2.条文の起草や草案の推敲作業によって詳細を詰めることが出来る
実務的に曖昧な点や分かりにくい点を検証する上で条文を起案し、推敲する事はとても効果的です。例えば「●●の場合は原則として××とする。」という、創設的な条文(ルール)を作ったときに、「原則として」、を安易に入れた時に立ち止まって考えますと、●●の場合にも××としない例外を想定しているのか。それはどんな場合なのか、制度設計時に想定していたのか。●●の場合にも××としない場合の頻度次第では、例外として想定した△△の場合は別の条文として独立させ、●●の場合については「原則として」は削除した方がいいのではないか」などと、相当細かく詰めていくための手段、検討漏れを探していく道しるべとすることが出来ます。
もう一つ挙げますと「●●の場合」に「××とする。」のは誰が最終的に判断するのか、そのための稟議や伺いの手順の書き漏れがないか、職務権限規程でカバーできているのか、についても詰めることになります。
3.コンプライアンス等の観点からの点検を受けやすい
上記1.でご説明しましたように、条文を冒頭から読めば誰もが内容を理解することが出来るようになります。このことは、条文に関係するが、制度設計には携わらなかった社員、監査部門の社員・監査役から弁護士に至るまで、いわば第三者の目による整合性、合理性、コンプライアンスの観点からの点検を受けやすくなるというメリットもあります。規程ではなく、手続きや制度説明のためのプレゼンテーション資料をみてもらってもいいのですが、やはり文章を熟読して内容を理解し、校正する方が思考のプロセスとしては進めやすいようです。
このように、規程整備は形式的な仕事ではなく、大きなメリットがあります。そのメリットを発揮させるためには、規程草案を作成する人、内容を吟味する人、決裁する人の三権分流で進めるのがいいでしょう。私自身は冒頭にご紹介したお客様のプロジェクトでは最初にブルドーザーで地均しをする(草案を作る)担当をしていますが、これを細かく点検していただく担当の方と弁護士がおられ、気づかなかった矛盾やあいまいな表現の指摘、法適合性の確認をしていただいており、多いときには10往復くらいしながら修正を繰り返しています。それは大変ですが、できあがった規程は「これが当社のルールだ」と自信を持っていえるものになっていると思います。

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荒木 栄
(株)日本総合研究所 主席研究員 人事・組織戦略クラスター
専門分野:地道な人事制度設計と熱意ある運用支援
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