米学生ローン返済不履行、懸念高まる
過去10年間で米大学卒業までにかかる平均費用が倍増したのに伴い、大学卒の米国民一人あたりのかかえる学生ローン返済額が高額化してきており、米経済に悪影響をもたらす懸念事項の1つとなっている。
多くの米大学に通う学生の家族および学生個人らは、採用枠の限られている奨学金以外の利子が最大で20%までに制限されている民間学生ローンを利用している。そのため米大学卒の多くの社会人は学生ローン返済のために住宅購入時期が延長され、休暇も削減、食費も節約してローン返済を行わざるを得ない状況にある。
ミシガン州立大学ロースクールを卒業したKristin Coleさん(30)は奨学金、民間学生ローン含めて15万ドルもの借金を抱えている。そのため月収の4分の1にあたる660ドルをローン返済に充てており、一年後には返済額が月800ドルに増額されることになっているという。Coleさんは、「家なんて決して買えないし、旅行にも行けない。何も出来ない。まるで囚人のようだ」と嘆いている。
一方歯周治療専門医のPaul-Henry Zottola氏(35)は、月1,600ドルの学生ローン返済、2,300ドルの住宅ローン返済、1,500ドルの事業ローン返済に負われる日々を過ごしている。そのためZottola氏は「返済不履行に陥る可能性は極めて高い。今後10年間の収入は返済のために充てられるだろう」と話している。
これまで米大学生の資金供給源は両親からであったが、ここ数年大学授業料が値上がりされるに伴い、多くの学生が民間学生ローンで借入を行うようになってきた。学生たちは、将来高給職に就くことを前提として高額ローンを借入したが、卒業後、高給職に就くのは容易ではないことに気づいた多くの大卒者らが厳しい学生ローン返済生活を送らざるを得ない状況となっている。
昨年一年間で米国では170億ドル以上の民間学生ローンが提供されており、2001年の40億ドルから急騰を示している。授業料値上げに伴い、学生ローンはますます魅力的な金融商品となってきた。公立大学の授業料、寮費など含めた平均大学生活費はここ10年間で79%増加して年間12,796ドルとなった。一方、私立大学では65%増加して年間30,367ドルとなっている。
そのような中、利子が最大6.8%までに制限されている政府による奨学金は4年間で最大23,000ドルまでの利用しか認められていない。これは4年間の学生生活費の半分以下でしかなく、残りの費用は自費、民間学生ローンに頼らざるを得なくなっている。
学生ローンの利用が高まる中、米ローン会社Sallie Maeは1千万人の顧客を抱え、250億ドルの民間学生ローン、1,280億ドルの政府奨学金を提供することで好業績を上げてきた。しかし、同社は先週投資ファンドによる250億ドルでの買収が、米クレジット市場の弱まり、学生ローン会社への政府支援金数十億ドルの削減に伴い、急遽キャンセルになった。
シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、ウェルズ・ファーゴ、ワコビアなども学生ローンビジネスを行う米主要金融機関であるが、これらの金融機関からローンを受けていた大卒者らが今後確固とした返済能力があるかどうかが懸念されるようになっている。
そのため、サブプライム(低所得者向け)住宅ローン市場を発端に生じた信用収縮が、学生ローン市場でも生じるのではないかという懸念が高まっている。
また、ムーディーズインベスターズサービスによると、学生ローンを抵当とした債券市場も拡大しており、昨年一年間のみでも76%増大して166億ドルに到達したという。学生ローン抵当債券市場はまだ世界信用収縮に目立った影響は与えていない。しかしアナリストらの間では「米経済が後退し出したら、学生ローン返済不履行となる大卒者の急増が予想される」と分析されている。また米公益事業リサーチグループのLike Swarthout氏は、「民間学生ローン市場がサブプライム住宅ローン市場と同様に返済不履行による低迷に陥れば、大卒者の経済活動に依存する米経済全体に深刻な影響を与えることになる」と懸念を示している。
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