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[コラム] 環境債務の移転ビジネス

2007年10月03日 18:12更新 前の記事 次の記事  コラム一覧
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出典:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 光成美樹 2007年10月2日付」より


この数年間米国のブラウンフィールドビジネスは、新たな不動産ビジネスの一部として成長してきている。特に、環境エンジニアリング会社などが活発に取り組んでいるビジネスのひとつに、環境債務移転というビジネスがあり、注目されている。米国において90年代から企業の会計基準として取り入れられている環境浄化債務や、2001年に会計基準化され厳格運用が行われるようになった資産除去債務などは、財務諸表において有形固定資産に関わる法的な汚染浄化義務や処分する際に発生する将来の費用を債務として認識することが義務付けられたものである。環境債務移転とは、これらの債務のうち、特に土壌汚染やアスベストなどの環境汚染浄化等の債務を、外部企業に移転するスキームをさす。

環境債務移転のスキームは、環境債務付の不動産の売買を行う取引と、純粋に不動産の債務のみを売買する取引の2つのタイプがある。前者の不動産売買は、汚染土壌サイトの売買という形式であり、一般の不動産取引と同様に実施されているが、債務移転と呼ばれるこのスキームでは、汚染浄化費用が土地価格よりも上回る場合に、売主が買主に費用を支払って所有権を移転するケースも含まれる。いわばマイナスの価値を取引するものであるため、債務移転取引と呼ばれるようだ。

このような債務移転取引を行う会社では、米国上場企業との売買事例を公表しており、広く活用される仕組になりつつある。たとえば、製造業の工場などを、市場価格から将来の環境対策費用等を差し引く形で売却し、リースバックにより従来どおり工場を操業するケースや、買い手がつかず市場価値がない汚染浄化後のサイトに対し、売り手がモニタリング費用等の将来費用を支払って、所有権を移転するケースなどが紹介されている。

債務移転取引ビジネスを手がける企業は、環境コンサルティング会社のほか、不動産会社等が設立した独立系の債務移転専門会社もある。また、汚染不動産を買収し再開発することで知られるチェロキーなどのプライベートエクイティファンドも広い意味での債務移転会社に含まれるだろう。一方、これらのスキームには、通常の金融取引に付随するリスク以外に汚染浄化費用の不確実性というリスクが内在するため、超過浄化費用保険や第三者賠償保険などの環境保険を付帯することが不可欠となっている。

先述の通り米国では、有形固定資産を処分する際に、アスベストの処理や土壌汚染の浄化などが必要な場合、それらの将来費用を債務として計上する実務が進んでいる。将来の債務には、汚染浄化措置費用のほかに、調査費や浄化後のモニタリング費用なども含まれるが、それらの費用は将来の費用であり、見積もりを変更しなければならない可能性がある。これは、将来の浄化債務について、市場価格を踏まえて期待現在価値技法を活用したとしても、実際にかかる費用との乖離は少なからず出てくるためである。このため、会計基準でも見積もり変更に関する処理方法が規定されており、措置の時期に近づいて詳細な見積もりを出した場合に、従来の見積もりと異なっていれば、修正処理をすることになっている。

環境調査や浄化などの委託は、現時点で実施する場合に比べて、将来の実施を前提として費用を見積もる場合、技術の進展や規制の変更などにより見積もりリスクは高くなる。これに対し、将来発生する措置をあらかじめ費用として移転してしまう債務移転では、見積もりの不確実性(見積もりリスク)を排除することも可能になることが大きなメリットになっている。

米国では土壌汚染対策の法律が制定され20年近くたちこうしたビジネスが生まれている。日本では、土壌汚染対策法の施行から4年が経過し、現在改正に向けた議論が行われ、企業会計においても現在、資産除去債務に関する会計基準の議論が進められている。今後、将来費用の見積もりリスクを回避したい、または債務付の不動産を移転したいという企業ニーズに応えて、日本でもこうしたビジネスが始まる可能性もでてくるだろう。



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