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最近の人材育成とモチベーションの問題について

2007年10月15日 19:49更新 

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出典:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主席研究員 小林 英夫 2007年10月15日付」より

 成果主義人事制度が一段落して、各社とも給与制度・評価制度から、人材の問題に興味と関心が移ってきたようである。今一番力を入れているのは、2007年問題で団塊の世代が定年になったことに端を発した、採用のようだ。大学新卒者の平成19年4月1日就職率は96.3%(厚生労働省調べ)と高く、様変わりになってきた。有効求人倍率8月末で3.6%と低くなっている。抑えていた採用を各社とも本格的に再開してきたようである。

 この問題と関連するが、次に関心を持っていることが、中堅と中間管理職の人材育成問題である。長い不況の間、採用の抑制、教育・研修費用のカットで、この層が育ってないことがある。

 ある中堅企業の例だが、社長が、20歳台後半の中堅社員、30歳代の中間管理職が、挨拶も満足にできないということで、研修を久しぶりに実施した。その過程でわかったことは特に中間管理職にまったく余裕がなく、プレイヤーとして、日々の仕事に追われ、最近入社の中途採用者も含め、部下のマネジメントができてないことである。かつ担当部署の新規取り組みや改善の意識もほとんどないことがわかったのである。また彼らを助けるべき部長クラスの上級管理職も忙しく、上から下までコミュニケーションが途切れている状況であった。当面の忙しさだけなら、我慢できるが、先行きの展望がわからないまま、その状況が続くため、櫛の歯が欠けるように、中堅クラスの社員がやめていく現象が起きていた。

 よく話してわかったことだが、バブルの崩壊以後入社した世代は、長い不況で仕事の将来について悲観的にみている人が多いようである。また経営陣も会社のビジョンや理念を社員に見せていない、よく説明していないことも原因としてあるようだ。能力的にいうと、プレイヤーとしてのキャリアが長いため、狭い専門実務能力は伸びているが、指導力や調整を含めたマネジメント能力は身に着けてないことがある。また新しい仕事に取り組むための企画・改善能力を磨くチャンスもなかったようである。極端な言い方をするとお先真っ暗な中で、疲れはてている姿が浮かぶ。余裕のある時代なら、先輩の管理職がいろいろな機会、飲みながらのオフサイトミーティング等を活用しながら、会社の将来や人間関係の取り扱いを教えるところだが、給料の伸び悩みや、経費のカットでそれもままならないこともあるようである。こういった中堅や若手中間管理職の人材育成とモチベーションの問題は、かなりの企業で発生しているようである。もし、そのような現象が起きているようならば、次のようなステップを踏んで解決に取り組んでみたらどうであろうか。

 第一に現状の組織・人材の問題の把握である。全体の動向をつかむには、全社でモラールサーベイ的なアンケート調査を行うことである。会社の将来性やどういうイメージを会社に持っているか。組織の情報を含めたコミュニケーションの状況、仕事の質や量の配分、上司のマネジメントのありかた、人材育成や自分の将来のキャリアについての考え方を調査する。最近ではウェブで簡単にできる方法があるので、短時間で手間もかからず実施可能である。部門別、年代別、役職位別、性別に分析もできる。最近、ES(従業員満足度)の観点から、定期的に実施している企業も散見されるが、問題をつかむのにはよい方法である。かつそこで見られる問題をさらに、総務・人事スタッフがヒヤリング調査をすれば原因分析まで踏み込んで現状把握が可能である。

 第二には、それに基づき、改善策を打つことである。先の会社の例では、改めてアンケート調査を行い、会社の将来についての展望が見えなくなっていること及び仕事の進め方に不満があること、それに関連してまず、管理職のマネジメントについて問題があること等が見えてきた。第一の課題については、若手を中心に会社の将来について話し合う場を作り、トップ、上級管理職が同席して議論を進めた。トップも上級管理職とは問題意識を共有化していたが、下まではおろしていなかった現状があった。

 次にそこから出てきた内容から会社ビジョンや特に中間管理職クラスの期待人材像を改めて作りなおし、現実に即した、仕事の役割や育成の方向性を社員に理解させていった。合わせて、他部門の業務も理解してない問題も出てきた。異動・ローテーションが少ないことも原因であった。視野を広げ、企画・調整能力を鍛えるためには、仕事の幅を広げることは大変効果がある。次の図は、教育育成の考え方を示しているが、どの方法も有効で、組み合わせて行うことが必要である。



 そこで、この問題については、可能性がある若手管理職を、全社プロジェクトを立ち上げそこに参加させる、関連部門に意図的に異動させることを改めて検討し進めることにした。これを通じ、全体の会社の戦略や業務の流れがより理解できる、他部署の人材を知る機会にもなるわけである。このようなことは従来余裕がなく、当面の業績ダウンを防ぐために進めてこなかった企業が多いが、業績回復の今、是非お勧めする人事施策である。その際、注意すべきは目的のない無関係な異動は行ってはいけない。かえって社員のモチベーションを下げることになる。したがって人材像に基き、最低限の異動のルート(キャリアパスとも言われる)を検討しておくことが必要である。主要分野(事業や営業、生産、技術、管理・本社スタッフ等主要機能)別中間管理職の役割、必要スキル、必要職務経験を大まかに検討すればそのルートは見えてくる。対象を広げると大変な作業になるので、絞り込んで進めるとよい。

 次にその過程でも明確になるが、不足しているスキルの教育である。先の会社の例では、若手の中間管理職において、部下の指導やチームワーク形成等のヒューマンスキルの不足が課題になり、コーチングを主体とした研修計画を作り社内研修として、外部講師を使いながら対象者全員に第一段階で進めた。但し、継続的に進めていかないと効果も上がらないので、今後、外部研修、自己啓発も活用し、また部長クラスにもOJTでそれを教育するように計画している。総務・人事部も人員を増強し、人材育成を中長期的に進めていくことにした。

 新卒をこれから受け入れていく現在、各社とも現在の組織・人材のあり方を見直し、社員の受け入れ体制を改めて整えて、人材の育成とモチベーション向上を進める必要があるのではないだろうか。

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小林 英夫
(株)日本総合研究所 主席研究員 人事戦略クラスター
専門分野:経営理念、人事戦略、人事制度、人事マネジメント
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