[コラム]法改正による地方自治体の憂鬱―システム改修費用の抑制に向けて
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出典:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 社会経済コンサルティング部 出口 太郎 2007年10月30日付」より
平成20年4月の後期高齢者医療制度の開始に向けて、現在、地方自治体では関連情報システムの整備が進められている。そのなかにあって、各市町村における情報システムの改善に数千万円もの費用がかかっているケースが少なくないことは、あまり知られていない。
後期高齢者医療制度を実現するためには、広域連合に構築される電算処理システムだけでなく、市町村側にも、市町村と広域連合の間でデータを連携するためのシステムが必要になる。保険料の徴収は市町村の事務であるから、そのためにもシステムが必要だ。だがそれだけではない。制度面での影響を受けて住民記録システム、国民健康保険システム、介護保険システムなどにも変更が生じている。
地方税法、介護保険法、建築基準法など、法改正に伴うシステム改修は、地方自治体にとって頭の痛い問題である。必要な予算額がなかなか明確にならないのだ。改正法の運用の詳細は、法律の成立後、順次政省令等で定められていくことが多い。これらが決まるまではシステム改修の範囲が定まらず、費用が特定できないのである。法改正後に利害関係者間の調整が難航して政省令の公布が遅れるといった事態がニュースにもよく取り上げられるが、霞ヶ関でのそのような場面の裏では、自治体の業務担当者、システム担当者が頭を抱えている。
さらに、法改正に伴うシステム改修は、費用が高くなる要素をはらんでいる。まず、既存のシステムを改修するため、導入した事業者に頼らざるを得ない。競争による価格低下が期待できないのである。また、改正法の施行に間に合わせるため、検討期間が限られてしまう。事業者が提案する改修内容を地方自治体側が吟味し、不要な改修を抑制して費用を絞り込むだけの時間的な余裕がないのだ。加えて、全国一斉に改修作業が行われることになるため、業務に明るい技術者が不足する。需要と供給のバランスが需要側に偏れば、価格は上昇傾向になる。事業者側も、自社がシステムを納入した自治体から一斉に改修を要請されれば、手馴れた技術者以外にも担当させなければならないため、教育・管理負担が増える。
複数のシステムにまたがって改修が生じる場合も厄介だ。調達の透明化、マルチベンダー化といった考え方のもと、これらのシステムは異なる事業者から調達するケースが増えてきた。この場合の改修は単一の事業者の場合と比べて調整事項が増えるため、設計、開発、試験により多くの費用がかかる。導入時点でのコスト軽減は当然考慮しなければならないが、改修の当事者にとっては頭の痛い問題である。このように、各種の法改正は地方自治体の財政に大きな負担を強いている。
しかしながら、地方自治体も手をこまねいているばかりではない。複数の自治体でシステムを共同利用する共同アウトソーシングは、システム改修も共同化することで各々の自治体の負担軽減が期待される。また、パッケージシステムを導入する自治体では、独自の事務手順を実現するための機能追加(カスタマイズ)をできるだけ抑制し、法改正時にも事業者側の標準的な対応だけで済ませられるようにする取り組みも見られる。
一方、財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)が策定を進めている地域情報プラットフォーム標準仕様では、システム間の連携に係る仕様の標準化を図っている。この仕様に準拠したシステムの普及が進めば、将来的にはシステム間の連携が円滑に行える分、法改正対応の改修費用の軽減が期待される。
これらの技術的な改善と合わせて、各省庁の法改正作業においても、地方自治体でのシステム改修を念頭に置いて進められるべきであると考える。施行までの準備のため、改正法そのものの制定からではなく、詳細な運用を定める政省令の策定からの期間が十分に取れるように、スケジュールを検討することが肝心である。この期間が十分であれば、自治体側でもシステム改修の内容を十分に吟味することができるし、ベンダー側も技術者ニーズの分散や開発期間の延伸がなされてリスクが軽減されれば、見積金額を下げることもできるようになるだろう。
地方自治体にとって、法改正への対応は、日常業務を進めながら条例、規則等の改正と合わせてシステム改修を進める大変な作業である。社会の変化に応じて法改正自体は避けられないとしても、その導入において、担当者が頭を抱える場面が少しでも減るようになることが望まれる。
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