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[国際金融トピックスNo.147]中米地域でのプレゼンス拡大を図る中国

2007年11月15日 10:54更新 前の記事 次の記事  コラム・国際情勢一覧
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出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティングホームページ(http://www.murc.jp/index.php)「国際通貨研究所 国際金融トピックスNo.147/国際通貨研究所 経済調査部 上席研究員 松井 謙一郎 2007年11月12日付」より

 近年、食料・資源確保の必要性や巨額の外貨準備をテコに中国の南米やアフリカ等でプレゼンス拡大の動きが目だっているが、中米地域でもこれは例外ではない。中米地域は古くから台湾と深い関係にあって台湾の途上国支援の中心となっていたが、中国のプレゼンスが拡大することで状況が変わりつつあり、本稿ではこの動きを紹介したい。

 第二次大戦後に中米地域は反共の砦となったことから台湾と国交を有する国が多く、台湾は中米の統合の中心的な機関であるSICA(中米統合機構)にもオブザ−バ−として参加していた。台湾も中米を地域として最重視し、台湾の援助の半分近くは中米に向けられていたとされる。現在、台湾と国交を有する国は24か国で、内12か国が中米・カリブに存在する。アフリカや南太平洋の島々等他の地域にも台湾を支援する国は存在するが中米のように地域的にまとまって台湾を支援する地域は無い。このような意味で歴史的に中米地域は台湾にとって重要な後ろ盾となってきた。

 このような中で、コスタリカが本年6月に台湾と国交を断絶して中国との国交樹立を突然発表した事は、関係者に衝撃を与えた。コスタリカは、この理由について、世界の潮流の中で中国との関係強化は無視できない、APEC加盟などで中国の支援が期待できる、貿易パ−トナ−としての重要度が増している等説明している。これに加えて、非公式な場において台湾の援助が少ないことに大統領が不満をもらしていたことも報道されている。コスタリカは、中米の中でも海外からの投資が多く経済運営の成功例としてしばしば取り上げられる国で、台湾の開発戦略もコスタリカの経済運営の上で参考にしたとされるが、最終的には中国の高額な援助が台湾から中国への乗り換えの切り札になったと見られている。台湾はコスタリカの動きに抗議して実施中のプロジェクトも含めてコスタリカ宛の援助を全面停止したため、マイナスの影響も相応に出ている。今後、具体的な影響は注視していく必要がある一方で、コスタリカでは中国とのビジネス拡大への期待も高まっている。

 このような中国の動きに対して、台湾がコスタリカ以外の中米の国に新規の援助を約束する等猛烈な巻き返しを図っている模様である。また、中米の主要な輸出産業はマキラド−ラ(外国向けの繊維輸出のための原料輸入は無税とする保税加工区)の繊維産業だが、繊維製品は米国市場で中国と大きく競合する側面を持っている。この意味で、コスタリカの動きが他の中米諸国に直ちに波及することは考えにくいが、他の中米の国の対応が注目される。

 また、中国の中米での影響拡大という点においては、IDB(米州開発銀行)への中国の将来的な加盟も見落とせない動きである。現在アジアでIDBに加盟しているのは、日本と韓国のみであるが、中国も将来的な加盟に向けて準備を進めている。今まで中国の加盟に反対していたアメリカが反対しない方針に転換したことで中国のIDBへの加盟が大きく前進したとされているが、いずれにしても中米地域でのプレゼンス拡大貢献の一つのル−トと成る事が予想される。

 日本も中米地域とは1995年に日本・中米フォ−ラムの枠組みを設置して政策対話を行ってきた。日本は中米地域に対しては、域内各国へのODA支援、広域経済協力、中米統合促進への協力(プエブラ・パナマ計画)、対人地雷除去への支援、選挙監視団派遣等幅広い分野で協力を行ってきている。このような努力もあり、中米諸国は国連における日本の常任理事国入りを支持してきた。中国のプレゼンス拡大は、日本の今までの努力に対する脅威となる事は間違いないが、日本は地道に今までの努力を継続する事が必要であろう。

 中国のプレゼンスの拡大は、近年開発援助の世界で議論されている、新興援助国の台頭の問題でもある。従来援助を受けていた国々が援助を供与する側に回り始めたため、今までの先進国中心に行われていた開発援助の世界に変化が起きているという事であるが、中米地域では台湾との問題が絡んでいることもあり、問題がより政治的な色彩を帯びている。中国の近年の政治・経済力をテコにした対外的な影響力拡大は、世界一となった外貨準備の運用の問題やアフリカ地域での資源確保のためのプレゼンス拡大と新興ドナ−としての動向といった形で日本でも注目を浴びている。一方、中国にとって台湾との関係で中米地域は戦略的な重要性を持っている地域であるが、中米における動きは日本では余り注目されていないように思われる。今後中国がいかに政治・経済的な影響力の拡大を図っていくかは中米のような小国が多い地域を含め、全世界的なレベルで注目していく必要がある。


<参考資料>
ジェトロデイリ−通商弘報「国交樹立で高まる対中国ビジネスへの期待(コスタリカ)」(2007年8月1日)


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