ホーム > コラム > アジア > 金融 > [国際金融トピックスNo.150]経済成長が続くベトナムと債券市場整備の課題

[国際金融トピックスNo.150]経済成長が続くベトナムと債券市場整備の課題

2007年12月21日 20:33更新 前の記事 次の記事  コラム・金融一覧
記事を印刷する 記事をメールで送信する
ソーシャルブックマークに登録:Yahoo!ブックマークに登録Choixに投稿はてなに投稿BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークlivedoorクリップに投稿CoRichに投稿

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティングホームページ(http://www.murc.jp/index.php)「国際通貨研究所 国際金融トピックスNo.150/国際通貨研究所 経済調査部 研究員 上野 義之 2007年12月21日付」より

 サブプライム危機や世界的な原油高にもかかわらず、2007年1月WTOへの加盟を背景に海外からの直接投資を推進力として、ベトナムは好調な経済成長を維持している。また、2006年以降ベトナム株価指数も大きな上昇を見せている。一方で債券市場に目を向けると、株式市場とは対照的で未発達な状態である。今後の持続的な経済発展を維持していくために、金融インフラとして資本市場の柱の一つである債券市場の整備を加速していくことが課題である。

【直接投資を推進力としたベトナム経済の成長】

 世界銀行が4月に発表した経済予測報告は、2007-2008年度のベトナムの経済成長率を8.0%と予測している。この成長率は、アジアにおいて中国に次いで2番目に高く、東アジア新興国の平均成長率を上回っている(注1)。サブプライムローン危機に端を発した米国経済の失速懸念や、世界的な原油高にもかかわらず、ベトナムのグエン・タン・ズン首相は11月に、同国の来年の経済成長率は9%を上回る可能性があると述べ、同国経済の好調ぶりに自信を見せた。

 この背景の一つには、「チャイナプラスワン」という動きがある。チャイナプラスワンとは、これまで世界の工場として投資の受け皿となってきた中国への一極集中するリスクを避け、その他への投資先としてベトナムを模索する企業投資の動きである。また、ベトナムは2007年1月にWTOへの加盟が承認され、周辺諸国との経済的な繋がりが増し、同国への直接投資が加速したことも挙げられる。ベトナムは、安定的な政情と安い人件費で中国に替わる新たな投資先として世界から直接投資を引き付け、これを一つの推進力とし経済成長を維持していている。

【活況を呈する株式市場と対照的で未発達な債券市場】

 経済成長の好調を反映し、株式式場も活況を見せている。昨年の9月、世界に経済・金融情報を配信するブルームバーグは、同社が観察するアジア証券指数の中でベトナム株式市場の成長率が最大の伸びを示し、投資家にとってベトナムは新たな投資先としての選択肢の一つだと評価した。

 実際に、ベトナム株価指数は2006年1月の300の水準から2007年1月には1000に達した。その後、サブプライムローンの余波もあり同指数は大きく変動するものの、12月初めには980の水準を回復している。また、国有企業の株式会社化による上場企業の増加、日本企業を始め多くの外国企業による同国への投資増加は、株式市場の今後にとって明るい材料である。

 一方で、同国の債券市場に目を向けるとASEAN諸国の中でも相対的に遅れていると言わざるを得ない。債券市場の時価総額は国内総生産(GDP)のわずか8%程度といわれており、他のアジア諸国と比べても大きく下回っている。特に、国債市場は、取引規模も小さく市場参加者も限られている。また、国債の発行残高は、GDPに対し10数%を越えた程度であり、国債を売買するためには証券会社を通じて行わなければならない。市場の流動性が低く、流通市場は未発達な状態である。このため多くの投資家は、購入した債券を償還期限まで保有する、いわゆるbuy and holdが現状である。

【求められる債券市場整備への道】

 ベトナム経済は、直接投資を推進力として成長を維持してきた。しかしながら、今後も好調な経済を維持するためには、経済発展のための金融インフラとして、金融市場の金利形成機能の中核である債券市場の育成・発展を図り、その取り組みを加速させることが課題である。

 アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)(注2)の目的に沿った取り組みが、その対応策の一つになろう。ABMIとは、1997年アジア金融危機の教訓として、「アジア域内に効率的で流動性の高い債券市場を育成することにより、アジアにおける貯蓄をアジアに対する投資へと活用する」というものである。直接投資や海外からの短期資金に頼るだけでなく、自国内及びアジア域内の高い貯蓄を活かそうという取り組みである。

 また、株式市場の活況に対して債券市場が未発達であることは、資本市場の構造を歪め、株式市場に対して過大な機能を負わせることになる。この資本市場の構造的な欠陥は、金融資源の最適な配分・資金調達といった面で悪影響を与える。具体的には、資金調達者サイドから見れば、資金調達の手段が銀行借入、株式発行に限定される。また、投資家サイドから見れば、投資対象資産が限定され資産の効果的な運用が妨げられることになる。債券市場整備による金融資源の最適な配分、バランスの取れた資本市場を整備するとういう点においても、債券市場の育成・発展は重要な意味を持つ。

【債券市場整備に向けた最近の動き】

 2006年5月には国内唯一のベトナム証券預託機構が業務を開始し、今年の1月には証券取引に関する包括的な法律として新証券法が施行された。また現在は、中長期的計画である「国債流通市場創設マスタープラン」のもとホーチミン証券取引所で取り扱っている国債をハノイ証券取引所に移管し、ハノイ証券取引所を国債取引の市場とすることや2010年を目処に格付機関などの創設を目指している。

 先月11月には、ベトナム国家証券委員会が、2008年に国債の電子取引市場を創設するプロジェクトを進めていることを明らかにした。小規模で低迷している国債取引の活性化が目的で、実現すれば海外の投資家が取引に参加できるようになると言われている。また、国債の電子取引が順調に行けば、取引対象が社債等にも拡大する可能性もあるという。

 このような債券市場整備に向けた取り組みは歓迎すべきことであるが、同国債券市場はソフト・ハード両面において、まだまだ未整備な部分が多い。2007年1月に新証券法が成立したとはいえ、市場監視機能の強化や実務面における規程整備等の市場環境整備が遅れている。同国が中央計画経済から市場経済への移行期にあることを考えると、これを早急に進めることは喫緊の課題であろう。また、システムにおいても、今後増加が予想される取引件数に十分耐えうる高度な取引・決済システムの整備が求められている。こうしたソフト・ハード面で必要なインフラが整備されて初めて、ベトナム債券市場が本格的なスタートを迎えたといえる。


○投票 ×投票
Powered by newsing

最新記事コラム最新記事

PR
コラムの記事をもっと探す

この記事のトラックバック(0)

  • この記事のトラックバックURL(承認制のため、掲載されるまでしばらく時間がかかります。) :
求人検索サービス提供中
Webサービス
arr [リリース掲載・配信] 900媒体以上へリリース配信
arr [ネットショップ] 0円から開業の安心ネットショップ
arr [ホームページ制作] 見積無料、中小企業のHP制作
arr [テンプレート] 美しいHPテンプレートの格安販売
メールマガジン配信中
人気TOP10ニュース
 
track feed なかのひと