[レポート]週刊マーケットレター
出典:ゲゼル研究会(http:grsj.org)「曽我純の週刊マーケットレター」より
週刊マーケットレター(08年2月4日週号、No.220)
2008年2月3日
曽我 純
図表などはサイトの PDF からご覧になれます。
http://www.grsj.org/marketletter/index.html
■主要マーケット指標
■ 米景気後退を示唆する雇用統計
FRBは1月30日にも政策金利を0.5%下げ、1週間あまりのうちに計1.25%というこれまでにない異例の利下げを行った。昨年8月の5.25%から3.0%へと5ヵ月で2.25%低下したが、前回、ITバブル後の利下げに比べてみると、必ずしも引き下げが速いわけではない。
むしろ前回のときは、ピークから5ヵ月で2.5%も引き下げており、今回のケースを上回っている。
「金融市場はまだかなりの緊張状態にある」とFOMCの声明で述べているように、FRBは金融市場が安定するまで利下げを遂行する姿勢を示した。次回のFOMCは3月18日、その次は4月29、30日だが、足元の実体経済の悪化などから予測すると、4月末までに政策金利は2.5%に引き下げられる公算が大きい。
昨年10-12月期の米実質GDPは前期比年率0.6%と前期の4.9%から急減速したが、個人消費支出や設備投資の伸び率鈍化に加えて、住宅のさらなる悪化、在庫の減少が成長率を引き下げた。だが、在庫のマイナス寄与を除けば1.9%の成長になり、10-12月期の米国経済は数字ほど悪くはない。ただ07年の実質成長率は2.2%と3年連続で低下しており、02年以来5年ぶりの低い伸びとなった。08年の成長率はさらに低下し、1.0%以下になることは避けられないように思う。
週末に発表された雇用統計は米国経済の景気後退入りを窺わせるに足る悪い内容だった。今年1月の非農業部門雇用者は前月比1万7,000人減と03年8月以来4年5ヵ月ぶりのマイナスとなった。2月分公表時に1月分が改定されるが、マイナスのままであれば、米国経済はピークを付け、リセッションに差し掛かった状態に位置しているといってよいだろう。非農業部門雇用者が前月比マイナスになった近辺で、米景気はピークアウトしているケースが多く、そうした過去の事例から判断すれば、米国景気は曲がり角にきている。
政策金利の引き下げにより、3ヵ月物の金利は3%近くまで低下し、長期金利よりも低
くなってきた。昨年12月の米CPI総合指数は前年比4.1%上昇し、米短・長期金利よりも高く、実質金利はマイナスになった。07年の名目成長率は4.9%と前期よりも1.2ポイント低下したが、08年は3%程度に減速することになるだろう(実質成長率は0.5%、GDP物価上昇率は2.5%を想定している)。名目成長率が3%と仮定すれば、長期金利もその程度まで下がるはずだ。景気後退に陥れば、企業収益はさらに厳しくなると予想され、株式売り・債券買いの投資を継続すべきだと思う。
■ 米金融政策との連動性強い日本の株価
米政策金利が大幅に引き下げられたにもかかわらず、さらなる利下げ期待が強いことから、円ドル相場は円高ドル安にふれるだろう。米国向け輸出の減少や円高ドル安により、企業収益は悪化し、日本株の見通しは明るくない。
日本株の主力プレーヤーである外人が売り姿勢を強めているため日経平均株価は5週連
続安となり、投資家は多額の含み損を抱えているはずだ。昨年8月以降、外人はほぼ売り
に転じ、07年下期は2.4兆円の売り越しとなり、上期の6.5兆円の買い越しとは様変わり
だ。ただ、07年では4.1兆円の買い越しとなり、03年以降5年連続で買い越し、累計額は
45.1兆円に上る。これまでの買い越しにより、外人は巨額の日本株を抱えており、日本経済に明るい展望を描くことができなければ、これまで取得した日本株を売ってくることも考えられる。
日本経済は米国とほぼ連動しているため、FRBが政策金利を引き下げているときには、日本の景気も低迷しており、株価は下がる傾向にある。今回も昨年8月にFRBは利下げし
たが、ほぼ同じ時期に日本株はピークを付け、米金融政策との連動性は強い。米住宅不況の底は深く、住宅問題がほぐれるのにどれくらいの時間を要するのか、すべてはそれにかかっている。年央にかけて、米住宅不況はいっそう緊迫してくる可能性が高く、それに伴い日本株も厳しい局面を迎えるかもしれない。
■ 特定部門への依存度大きい鉱工業生産
昨年12月の現金給与総額はボーナスの落ち込みの影響が大きく、前年比-1.9%と昨年でもっとも減少率が大きくなった。給与は減少しながら、『家計調査』によると、12月の消
費支出は前年比3.1%と5ヵ月連続のプラス、小売業販売額も0.2%ながらプラスになるな
ど、消費は意外に底堅い。失業率は横ばいであったが、有効求人倍率は5ヵ月連続の低下
となり、雇用環境は悪化の方向を示している。
生産は頭打ちとなっており、先行き不透明である。昨年12月の鉱工業生産指数は前年比0.7%と伸び率は2ヵ月連続で低下したが、在庫率も小幅な変化にとどまり、この状態で生産が回復していく状態ではない。生産がプラスを保っているのは、ウエイトの大きい電子部品・デバイス工業が11.2%と7ヵ月連続の2桁増を維持しているからだ。これだけで鉱工業生産を1.3%引き上げたことになる。だが、資本財(輸送機械を除く)は前年比-3.9%とマイナス幅は拡大しており、これまで景気を牽引していた設備投資は明らかに減少に向かっている。設備投資部門の不振が消費財部門に波及することになれば、日本経済はさらに苦しい状態に追い込まれる。
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