[コラム]ウラン供給国から原子力産業の戦略的パートナーへ、重要性が高まるカザフスタン共和国
出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 田原 靖彦 2008年2月12日付」より
■ウラン供給源として存在感を増すカザフスタン
近年、ウラン資源供給国としてカザフスタン共和国の存在感が急速に高まっている。2006年のウラン生産高は世界の全生産量の約13%にあたる5,279tU(トンウラン)であり、カナダ(9,862tU)、オーストラリア(7,593tU)に次いで世界第3位の生産規模である。同国でウランの生産・販売を一手に引き受けている国営のカザトムプロム(Kazatomprom)社は、2010年に生産規模を06年の約3倍の約15,000tU/年まで拡大する計画を表明している。
中国やインドなどの発展途上国における原子力発電の増大などにより中長期的にウラン需要が増加すると予想される中で、カザフスタンのウラン資源は将来の需給安定に欠かせないものである。日本政府も、長期的なウラン資源の安定的な供給源として同国との関係を重視しており、07年4月にはウラン鉱山共同開発、核燃料加工事業協力、原子炉導入支援等の幅広い分野で包括的に協力することで合意している。
カザフスタンの新規鉱山開発の多くは、先進国のウラン資源企業、原子力関連企業、電力会社などとの共同開発であり、先進国からの開発資金によって生産規模を拡大する計画となっている。日本からも、06年1月に住友商事と関西電力がウェスト・ムインクドュック鉱山(推定生産量1,000tU/年)の共同開発でカザトムプロム社と合意したほか、07年4月には丸紅・東京電力・中部電力の3社がハラサン鉱山(同5,000tU/年)の共同開発プロジェクトへの参画を表明している。
■拡大する日本からの技術協力 ― 採掘から燃料加工まで
カザフスタンは豊富なウラン資源を保有する強みを活かして、天然ウランの採掘に留まらず原子力燃料産業全体の強化を目指している。採掘された天然ウランは転換・濃縮・再転換・燃料加工という工程を経て原子力発電用の燃料に加工されるが、カザトムプロム社は採掘から燃料転換までの全工程を国内で実施できる体制の構築を目指しており、海外企業との提携による技術や資金の導入を図っている。例えば、転換工程では、カナダのカメコ社と共同でカザフスタン国内のウルバに転換工場の建設を計画している。また、07年12月には、日本の関西電力、住友商事及び原子燃料工業の3社と再転換工程での提携に合意している。
この再転換分野の技術協力は、採掘以外の分野における技術協力の具体化という点で意義深い。つまり、日本がウラン燃料供給の安定性向上というメリットを享受するだけでなく、カザフスタンにとっても最新の再転換設備を導入できるメリットがあり、両国にとってより互恵的な協力の形が具体化することになる。長期的には、燃料加工分野での技術協力、原子力発電技術導入支援なども含めたさらに広範な範囲での技術協力も視野に入れた、より互恵的かつ多面的な協力関係を築いていく努力が重要になるであろう。
■協力拡大の狙いは、原子力事業の国際競争力確保"
グローバルな原子力ビジネス展開を見据えた戦略的な提携を目指す動きもある。東芝はカザトムプロム社をグローバルな原子力事業展開を図る上での戦略的なパートナーと位置付け、06年に買収した米国の原子力プラントメーカーであるウェスチングハウス社の株式の一部を07年8月に譲渡している。この背景には、ウラン需給がタイトな状況では、ウラン燃料の供給まで含めた事業体制の構築が発電プラントの競争力を大きく左右するとの判断があると考えられる。
実際に、グローバル市場における日本企業の主要な競合相手であるフランスのアレバ社は、発電プラントだけでなく燃料供給事業も展開している。また、ロシアにおいても発電プラントメーカーと燃料事業者を統合した原子力企業設立の動きがある。日本企業が、これらの企業と国際競争していくためには、ウラン燃料供給をカバーできる事業者との提携が重要であり、豊富なウラン供給力を持つカザトムプロム社はその有力候補になりえる。
「ウラン資源の供給国」と「原子力産業の戦略的パートナー」の2つの面で、カザフスタンとの間で長期的な協力関係を構築していくためには、日本が高度な技術力を保持し続けることが何より重要である。高度な技術力があればこそ、カザフスタン側にとっても日本は魅力的な提携相手となりうる。特に、今後、中国やインドにおけるウラン需要の増大に伴い、ウラン資源の大口の買い手として日本の存在感は相対的に低下すると予想され、資源外交や事業提携における交渉材料としての技術力の重要性はますます高まるであろう。
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