ホーム > コラム > 国内 > 人事・組織戦略 > [コラム:研究員のココロ]内部統制構築作業にみる上場企業における経営のあり方

[コラム:研究員のココロ]内部統制構築作業にみる上場企業における経営のあり方

2008年02月15日 15:11更新 前の記事 次の記事  コラム・人事・組織戦略一覧
記事を印刷する 記事をメールで送信する
ソーシャルブックマークに登録:Yahoo!ブックマークに登録Choixに投稿はてなに投稿BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークlivedoorクリップに投稿CoRichに投稿

出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主任研究員 中原 隆一 2008年2月8日付」より

 日本版SOX法の成立・導入により、上場企業において内部統制の確立が求められるようになった。実際の運用は今年の4月以降に始まる事業年度から義務付けられるため、今年の4月に新たな決算期に入る来年3月を本決算とする企業は、現在その体制整備、運用定着に向けての作業が、最後の追い込み段階になっていると推測される。

 筆者はこの内部統制体制構築をご支援することが多いが、それらの活動を通じて上場企業の経営姿勢や体制が、単に日本版SOX法への対応不備ということだけでなく、企業経営のあり方としても不十分という感じを抱いている。

 まず財務経理業務に関して、一般的に企業内で関心が弱く、また財務経理業務に関する知識や情報も十分浸透していないという点があげられる。

 企業において一般的に収益をあげる部門は営業部門や生産部門であり、製造する製品、販売する商品やサービス等に関する認識や情報等は社内に広く浸透している場合が多い。また製品やサービスの品質改善、マーケティング活動等は社内の関心も高く全社的な取組が行われていることが多い。

 しかしながら財務経理業務となると、特段収益をあげる部門ではなく、財務諸表や会計等に関する知識や情報も財務経理部門以外では周知されていないことが多い。ガラス張り経営として会社の財務情報等を幅広く社内に定期的に伝えている企業はまれに存在するが一般的でない。したがって財務経理業務は財務経理部門のみが考えること、関わることととらえられていることが多く、財務経理業務は特殊な業務と見られていることが多い。

 内部統制構築でもこの財務経理業務への無関心、特殊視する認識が障害となることが多い。内部統制の体制構築をしていくうえでは全社の共通認識と協力支援が必要であるが、一般的に財務諸表が身近でないため、全社を挙げての取組体制を構築することが難しい。

 企業を経営していく上では会計情報に集約された経営情報を分析する一方、公開企業としてはそれらの情報を企業の内外に適切に提供していくことが求められる。その意味で財務経理業務は特殊な業務ではなく経営の中核業務であり、少なくとも幹部従業員では必須の知識と考えられる。


 二番目は自社の業務内容を可視化することやモニタリングすることについての関心が低く、業務のマンネリ化やブラックボックス化を生みやすいという点である。

 企業経営において事業の成否を左右する製品やサービス自体の構築・改善については一般的に十分な関心が払われ、体制も構築されている。そこでは市場での競争に対応していくため、製品等の欠点を発見し改善していくことが絶えず行われていることが多い。

 しかしながら、それらの製品等の生産や販売するため業務運営やプロセスについては一度構築されると、担当部署内で固定化され、独自の進化を遂げることが多い。そのような動きをけん制するためのモニタリングは、一般的に収益拡大に直接貢献しない業務として、法令等で義務付けられていない限り行われることが少ない。そのため企業内の各業務で非効率なことや不適切なことが行われていても、よほど大きな経営問題として表面化しない限り、わからないことが多い。

 内部統制構築でもこの業務内容についての可視化の不足が、作業を膨大にし、構築にかかる時間を増やす要因となっていることが多い。自社の業務内容がどのように構成され、組み合わさっているか、内部統制構築作業で初めて分かる企業も少なくないと見られる。

 今まで企業経営では収益拡大を追求することに偏り、リスク管理や業務効率の追求はやや後回しにされてきた傾向がある。今後は自社の業務を可視化し、定期的なモニタリングを行い、リスク認識や業務改善に役立てることが求められる。業務運営を従業員の個人技や情報システムに依存するのではなく、組織内での情報共有・公開を通じて業務内容を常に見直せる体制を作ることが、今後の経営の巧拙を左右すると考えられる。


 最後は連結決算にもとづく経営が財務諸表上の概念として認識され、経営活動として実際には十分認識されていない点があげられる。

 財務諸表や決算作業については連結決算が基本という概念は浸透してきており、連結決算書の作成については一般的に連結グループ内での連携体制が構築されている。IR活動の面からも連結での財務情報の提供が浸透している。

 しかしながら経営活動の実態では、グループとして経営の資源配分、戦略設定、機能分担などの面で一体的に融合した活動が行われていないことが多い。決算書上は連結であっても経営活動としてはほぼ独立した活動が行われ、グループ最適よりも個社最適が追求されていることもある。連結は個社の決算の合算という認識が強く、連結を経営の主体の問題としてとらえて、一元的な経営体制を明確にしている例は多くない。

 内部統制の構築においては基本的に連結ベースでの対応が必要であるが、連結グループとして統一した管理や体制を構築する素地が不十分なため、内部統制構築に手間取る例が少なくない。

 連結経営というのは個々の企業の経営や決算を追求する経営ではなく、グループとしての経営の成果や効率に重きを置く経営を意味する。グループ最適化が目標であり各社は共通のビジョンや戦略に基づき、求められる機能や成果を追求する。このグループ最適化の仕組みを適切に構築することが連結経営の本質と考えられる。


 以上のようにJSOX対応の内部統制構築作業を通じて感じられた上場企業の経営上の問題点を指摘してきた。上場企業は単に今回の日本版SOX法への対応を法律への対応整備ということだけでなく、企業経営のあり方を見直す機会としてとらえることが重要ではないだろうか。


※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

-------------------------------------------------------------------------
中原 隆一
(株)日本総合研究所
主任研究員 IT戦略クラスター 企業価値マネジメントクラスター
専門分野:大学経営、業務改善、組織改革
-------------------------------------------------------------------------

[PR]
○投票 ×投票
Powered by newsing
この記事をソーシャルブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録Choixに投稿はてなに投稿BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマークlivedoorクリップに投稿CoRichに投稿

この記事のトラックバック(0)

  • この記事のトラックバックURL(承認制のため、掲載されるまでしばらく時間がかかります。) :


最新記事コラム最新記事

求人検索サービス提供中
Webサービス
arr [リリース掲載・配信] 900媒体以上へリリース配信
arr [ネットショップ] 0円から開業の安心ネットショップ
arr [ホームページ制作] 見積無料、中小企業のHP制作
arr [テンプレート] 美しいHPテンプレートの格安販売
メールマガジン配信中
人気TOP10ニュース
 
人気リリースTOP10
track feed なかのひと