[コラム]資産除去債務に該当する環境法〜米国で解釈指針(FIN47)ができた理由〜
出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 光成 美樹 2008年2月19日付」より
2007年12月27日に公表された「資産除去債務に関する会計基準(案)」(以下、基準案)は2月4日までのパブリックコメントを終え、3月末を目処に会計基準として公表される予定となっている。本会計基準は、企業会計基準委員会から、その策定の背景として紹介されているように、国際会計基準との収斂において要請された項目であり、環境問題を主眼として策定された会計基準ではない。しかし、国内の環境法をみても、建物等有形固定資産の除去時に対応を求める環境規制は少なくない。
具体的には、石綿障害予防規則では、アスベストが含まれる建物を解体する時に事前調査を義務付けており、飛散の危険性に応じて除去の方法や廃棄物の処理方法が規定されている。土壌汚染対策法は、水質汚濁防止法上の特定施設の廃止時に、法律で定める調査を求めている。また、不動産売買の際に土壌環境基準を超える土壌汚染がある場合には、売主が除去等の措置を講じることが買主から求められるのが通例である。売買後に汚染が見つかった場合には、除去費用を売主が負担することが判例等でも示されていることから、不動産の除去時に土地の原状回復として土壌汚染浄化を実施することは、通常の不動産取引契約において求められるものであり、法的債務と同時に資産除去債務の対象となる、契約等で定められた事項にあたる可能性もある。
一方で、これらの環境法は、建物の解体時や施設の廃止時に有害物質等の調査や除去などの措置を求めるものであり、建物等の所有者が調査や除去をする時期まで規定するものではない。
こうした将来の実施時期や方法が明確でない資産除去債務を、米国では条件付資産除去債務と呼び、これらが会計基準の対象になることを改めて明示している。これが、2005年に公開されたFIN47号と呼ばれる条件付資産除去債務に関する解釈指針である。当初発行された2001年の資産除去債務に関する会計基準(FAS143号)では明示していなかった、以下2つの内容の明示、第一に時期や方法が明確でないものも資産除去債務の対象とすること、第二に資産除去債務を見積もるために十分な情報とは何かを示すことによって、開示に対してより明確なルールを示すことになった。
また、FIN47では、具体的な事例として、アスベストが含まれる建物の取得時や、化学物質等の使用例、汚染された施設等を示し、環境法に該当する場合の会計処理の方法を示している。このため、企業が資産除去債務を開示しない理由が明確でない場合等に対して、当局からの指摘も行われるようになっている。実際に、資産除去債務は財務上重要な影響はないとしながら、施設の閉鎖や除去に関する経験がないために資産除去債務を見積ることができないと記載している企業に対し、2007年にSEC(証券取引委員会)から、「この二つの記載は矛盾しているようにみえる」というコメントも出されている。
12月に公表された基準案は、このFIN47に該当する内容となっている。すなわち、有形固定資産に有害物質が含まれ、除去時に法律で規定される処理が義務付けられている場合には、現時点で資産除去債務としてその除去費用を見積もることが規定されている。一方、基準案では環境法に対応する事例等が示されていないため、現時点では処理方法が明確にならないものもある。たとえば、通常の使用に基づかない事故や不適切な操業に基づく汚染は対象とならないとしているが、アスベストや土壌汚染に関する環境法は、過去には使用や廃棄等が規制されていなかったものについて、比較的近年になって規制されたものであり、汚染原因や建物への使用理由などを明らかにすることは難しい。また汚染原因となった事象を示す文書も少ないだろう。
また、対象となる債務についても、債務の認識時期に関する指定がないため、将来費用の期間配分の時期についても規定する必要がある。環境法では、法律に記載されていない細かな適用条件を施行規則等で定めるケースも多く、法と施行規則の公布日が異なっている場合には、債務認識時点をいつにするのかなどを規定する必要もあるだろう。さらに、資産除去債務の見積り方法では、米国のように公正価値と呼ばれる見積りに限定せず、企業が過去に実施した債務の処理方法(たとえば解体費や除去費用など)をもとに面積換算で試算することも可能になっており、基準案でも「説明可能な見積り」であればよいとされている。米国よりも緩やかな規定となっているため、見積り困難の理由を見つけることは、逆に難しいだろう。
2009年3月期からは、日本版SOX法も施行となり、財務諸表に対する文書管理が厳格化され、経営者責任も問われるようになる。企業経営では、情報開示による透明性が求められるようになっているなか、開示・非開示の理由を含め、企業の裁量範囲が大きければ、より説明責任が問われるようになる。最終的な会計基準を踏まえて、より体系的な対応が必要になるだろう。
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