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[国際金融トピックスNo.153]「世界の金融機関の環境ビジネスの潮流」

2008年02月20日 14:43更新 前の記事 次の記事  コラム・金融一覧
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出展:三菱UFJリサーチ&コンサルティングホームページ(http://www.murc.jp/index.php)「国際通貨研究所 国際金融トピックスNo.___/国際通貨研究所 主任研究員 古屋 力 2008年2月18日付」より

(低炭素社会に向けて加速する「金融の環境化」)
 いまや、時代は大きく変わりつつある。「低炭素社会」に向かって世界中の科学・経済分野等の英知が結集して様々な処方箋が試行されつつある。中でも、特に「金融」に対しては、地球環境問題に対して有効かつ強力な処方箋を提供できる重要不可欠な「主役」の1人として大きな期待が寄せられている。金融機関や金融参加者1人1人の環境配慮行動が、やがては世界の大きなモメンタムとなり、着実にこの病める地球環境を改善に着実に誘ってゆくであろうと、世界が期待している。こうした地球環境に対する金融の変化を「金融の環境化」と呼ぶ。元来、金融機関は、地球環境問題にとり「アンビバレント(両義的)」な存在である。金融機関は、長年にわたって人類の経済発展を支え促進してきたという意味で間接的ではあるが地球環境問題への重要な「加害者」であると同時に、地球環境問題の解決のためには金融機関の活動がなくてはならないという意味で地球環境問題への重要な「ソリューション・プロバイダー」でもあり、2つの相反する顔を持っている。いままさに重要なのは、この「ソリューション・プロバイダー」としての役割を、個々の金融機関がいかに演じ、「金融の環境化」を積極的に推進してゆくかである。ここで1つ明らかなことがある。こうした環境行動への評価が、やがては世界の投資家の投資判断や金融機関の選別に際し、重要な影響を与える可能性があることである。すでに世界中の多くの銀行経営者が、ことの重大さに気付き、社会的責務を感じ、また新たなビジネス・フロンテイアとして、何ができるか、真剣に試行錯誤を開始している。

(金融機関の環境配慮行動の国際的評価の潮流)
 いまや「金融の環境化」は、世界中の金融機関において「リスク」と「プロフィット」と「社会貢献」という三位一体の文脈の中で語られつつある。この「金融の環境化」の潮流は、新たな機会をもたらすと同時に、時に「社会的責任とプロフィットとの二律背反」のジレンマも伴う。社会的責任は重要だが、それを優先するあまり競争力を毀損することは避けたい。そのジレンマを回避するためには、世界の金融機関がルールを定め、同一基準で金融の環境化を進め、その動向と成果を同一基準で評価することが肝要となる。また、投資家としても、彼らの環境配慮行動をどのような客観的基準で公正に評価するかが悩ましいところである。こうした様々な関係者の問題認識を背景に、すでに、世界の金融機関や投資家が協力して環境配慮行動を行い、そのお互いの環境配慮行動にルールを決め、その行動と結果を公平に評価してゆこうとする様々な世界的な動きが出てきている。その先駆的な事例として、「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(The Carbon Disclosure Project;CDP)(注1)」や「国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP-FI)(注2)」の活動、「赤道原則(The Equator Principles)(注3)」等が挙げられる。

(セリーズ・レポート)
 こうした一連の「金融機関の環境配慮行動に対する国際的評価」の潮流の中で、この1月に、あらたに興味深い1冊の報告書が世に出た。タイトルは、「銀行セクターにおけるコーポレートガバナンスと気候変動(Corporate Governance and Climate Change, The Banking Sector)」である。世界中の金融機関・環境団体の組織Ceres(注4)が気候変動問題に焦点を絞り世界の大手金融機関上位40社の気候変動への戦略的アプローチの実態を分析したもので、世界の金融機関がどの程度地球環境問題に取り組んでいるか俯瞰することができる。以下の図表の通り、上位10行は全て欧米系で、その内4行が英銀、3行が米銀である。残念ながら、アジア系では22位の三菱東京UFJ銀行が39点でトップである(注5)。

(図表)気候変動対応において高い総合評価を受けた銀行上位10行
順位銀行名国名総合評価点
1HSBC Holding PLC英国70
2ABN AMRO Holding N.V.オランダ66
3Barclays PLC英国61
4HBOS PLC 
*Halifax and Bank of Scotland
英国61
5Deutsche Bank AGドイツ60
6Citigroup Inc.米国59
7Bank of America Corp.米国56
8Royal Bank of Scotland group PLC英国55
9Fortis N.V.ベルギー54
10Goldman Sachs Group,Inc.米国53
(注)Ceres(2008)、"Corporate Governance and Climate Change, The Banking Sector"で公表された40行の中から上位10行を抽出して、国際通貨研究所において作成。


 評価作業は、監視(board oversight)、実行(management execution)、公開(public disclosure)、排出量評価(emissions accounting)、戦略策定(str class="mtx"ategic planning)の5分野につき14種類の指標で評点している。ちなみに、指標には、「役員会は積極的に気候変動政策に携わっているか?」「執行役員の報酬は、環境配慮行動目標や温室効果ガス削減目標の達成度合いとリンクしているか?」「有価証券報告書類は、気候変動による重要なリスクと機会を公表しているか?」「温室効果ガス排出量データを認証するための第3者認証機関による認証手続を有しているか?」「温室効果ガス排出量取引に参加しているか?」「設備、エネルギー消費、出張、その他業務における温室効果ガス排出量削減目標を設定しているか?」等、極めて具体的な項目が列挙されている。

 本報告書は、いわば世界の金融機関の「環境通信簿」であり、今後世界中の投資家が、自身の投資判断を行う際に、こうした評価を参考とするようになろう。また、意識の高い預金者や事業者の中には、自分の金融資産の預託先を決め、借入先金融機関を選択する際に、こうした公開された環境評価を判断材料の1つにするかもしれない。こういった一連の環境配慮行動評価の世界的な潮流は、各金融機関の「環境化」をさらに一層加速促進し、今後の彼らの環境配慮行動指針自体にも重要な影響を与えるであろう。

 いまや世界全体の大きなうねりとなりつつある「低炭素化」のモメンタムは、環境会計や環境格付制度の国際的な枠組みつくりと平行して、こうした世界的な評価体制の拡充をさらに加速促進させてゆくであろう。そしてこうしたグローバルな評価体制の構築が、世界中の金融機関に対して、透明性の高い国際的な評価基準を提供し、他機関との比較の機会を与え、自行の環境問題への取り組みにおける自省の機会を提供し、その改善を促す効果ももたらすであろう。

 いままさに、こうした世界の潮流を敏感に先取りした欧米系の一流銀行を中心に、自ら率先垂範し環境分野でリーダシップと取ろうと積極的に取り組む動きが出てきており、彼らはトップランナーとしてのアドバンテージをとろうと、すでに着々と種まきを開始している。


(注1)世界の機関投資家が連携し、企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量の公表を求めるプロジェクト。運営は、2000年に発足した同名の非営利団体(NPO)で、ロンドンに事務局を構えている。
(注2)国連の補助機関で、金融機関のさまざまな業務において、環境および持続可能性(サステナビリティ)に配慮した最も望ましい事業のあり方を追求し、これを普及、促進することを目的として設立された。
(注3)プロジェクトファイナンスにおいて、地域社会や自然環境に与える影響に配慮して実施されるべき枠組みを示す民間金融機関共通の原則。
(注4)地球気候変動問題等の持続可能性の課題に取り組む世界最大の投資家・自然環境機関の国際的組織。
http://www.ceres.org/NETCOMMUNITY/Page.aspx?pid=415&srcid=705
(注5)欧米系以外では、カナダのRoyal Bank of Canadaがかろうじて16位にある。



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  • 今週末、緊急な要件で日本に2週間ほど帰ることになった。ここ一年このようなことが多々あり、海外で生活する辛さをしみじみ感じる。 もし、日本に帰らなければ、国際通貨研究所の古屋さんとオックスフォードでお会いする予定でした。ちょうど、Personal Carbon Tradingの実 (ヨーロッパから環境事情 (オックスフォードの環境博士の日記))
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