[トピックス]ロシア冶金工業部門発展の基調
ロシアでは近年、鉄鋼・非鉄金属の生産会社である冶金工業業界が、国内外投資家の注目の的となっている。製産構造の変革、国外メーカーに比較して有利な環境、経済発展を背景とした国内需要の増加、事業の統合、業務拡大、生産設備の近代化、政府の支援といった要素は、同部門に対する投資の増加を促進している。
冶金部門は、生産に対して資本投下率が高く、自己資本の額に収益が左右されるという特性がある。構造改革は、そうした特殊性に対応するために必要不可欠であった。1990年代に実施された冶金工場の民営化によって、冶金関連企業は新たな資源や発電・生産施設を取得し、その結果、セヴェルスタリ(CHMF)、ノヴォリペツク製鉄(NLMK)、メチェル(MTLR)、Metalloinvest、Evraz Group、ノリリスク・ニッケル(GMKN)、UC Rusalに代表される垂直統合型の大企業が形成された。垂直統合型の企業形態が取られたことによって、鉄鉱石・石炭の採掘から金属加工品の生産、金属製品の出荷、二次原料の活用に至るまで一連のサイクルを統括することが可能となり、冶金関連企業は事業の効率を大きく高めることができた。
中国・インドのような発展途上国で現在進んでいる工業化の過程で、金属製品に対する需要が増すことは明らかである。それは、世界の市場で金属価格が上昇する要因となっている。世界市場における金属製品の代表的な供給元であり、尚且つ原料資源を保有しているロシア企業は、原料価格の上昇にも製品価格の上昇にも動じることはないだろう。垂直統合型の企業は、こうした状況でもっとも有利である。
鉄鉱石の産地に恵まれていることによって、ロシアの冶金工業は世界の市場で堅固な地位を築いてきた。製品別では、ニッケル生産で1位、アルミ・チタンの生産で2位、金属製品の輸出量で3位、鉄鋼生産で4位を誇っている。ノリリスク・ニッケルはパラジウムとニッケルの生産、UC Rusalはアルミの分野で世界を代表する企業である。
2000年当初からの目覚しいロシア経済の発展が、冶金工業部門の製品に対する国内需要増を引き起こした。鉄鋼製品における国内消費の40%を占めている機械製造業の成長は、最新技術による製品の生産を後押しした。金属製品に対する需要が多い産業として、建設業・自動車製造業の他に、天然資源価格が高まることを背景にパイプライン敷設を進めている石油・ガス部門が挙げられる。政府が積極的に援助しているインフラ整備の実現には金属製品の利用が不可欠であり、冶金工業部門の企業は、安定した製品受注とそれに伴う資産の増加が期待できる。
銑鉄・鉄鋼国際研究機関の評価によると、2000-2007年、ロシアの鉄鋼消費は67%増加した。ロシア政府は、2007-2015年におけるロシアの鉄鋼圧延材の生産量増加率を123%、同期間における消費量の増加率を142%と予測している。アルミに関する予測は、それぞれ144%、178%である。2015年までに、国内建設会社が使用する90%以上の建設用部品が冶金工業部門によって供給されると予想。
現在、冶金工業部門で事業の統合と製品の多様化が進められている。こうした流れは世界的傾向であるが、冶金工業部門における合併・統合の特徴は規模が大きいことである。生産に対する資本投下率が大きい冶金工業部門では、合併・統合に対して比較的閉鎖的な環境が形成されている。そのため、新しい企業が市場に進出することは難しく、競争は限定されており、既存企業の価値が高い。
冶金工業企業は資産を増やすことによって、製品の生産量を増加し市場における地位を拡大してきた。2007年3月に実施されたRusalとSUALの合併とUCRusal傘下にGlencoleのアルミナ工場が入ったことは、世界市場におけるシェアの拡大に貢献した。現在、アルミニウム市場では12%、アルミナ市場では15%のシェアを所有している。同社は19カ国において営業活動を行っている。また、最近では、ノヴォリペツク製鉄のMaxy-Groupの支配株(50%+1株)を取得するという計画が注目される。
鉄鉱石の価格が世界的に上昇する中、鉄鋼関連企業は、鉄鋼生産に必要な資産を取得する際、企業内に全ての生産ラインを設置することを念頭に置いている。特に、Yakutugol及びElgalugolを取得したメチェルは、市場における地位が大きく高まった。こうした状況の下、マグニトゴルスク製鉄は、鉄鉱石・石炭資産の取得に大きな関心を寄せているものと思われる。現在、マグニトゴルスク製鉄は、生産に必要な資源を所有していない唯一の製鉄会社であるためである。
世界的に合併・統合が盛んであることを受けて、ロシアの企業は地理的拡大を模索している。特に、2007年、EvrazGroupは北米市場で1月にOregon Steelを12月にはClaymont Steelを買収するという大きな取引を成功させた。また、ノリリスク・ニッケルは、米OM Group及び加Lion Oreを取得し、海外への業務拡大に成功した。
大規模な合併・統合は投資家の関心を集め、株価上昇の材料となる。2007年末-2008年初め、ノリリスク・ニッケルの資産をめぐるMetalloinvestとUS Rusalの競争があった為、ノリリスク・ニッケル株の上昇が見られた。
世界市場でロシア冶金工業の位置をより強固にするためには、事業の再編及び近代化が必要である。また、質の高い製品を供給するための設備建設も求められているが、冶金製造部門特有の問題として、新規事業に投下する資本が大きいために回収に時間を要することが挙げられる。しかし、競争力を増していくには、生産設備の技術革新に投資しなければならないことは明らかである。
近年、技術革新に対する投資を進めているのはマグニトゴルスク製鉄(572億ルーブル:2006-2010年の期間)及びノヴォリペツク製鉄(1144億ルーブル:2007-2011年の期間)である。Oskolskiy elektrometallurgicheskiy kombinat及びチェリャビンスク鋼管は、生産施設の近代化に積極的である。
冶金工業部門は、政府の援助を受けている。2007年夏、ロシア政府は2015年までの冶金工業発展戦略を採択した。ロシア工業生産における冶金工業部門の占める割合は17.3%である。輸出に占める同部門の割合は14.2%である。金属生産には国内で消費される電力量の約3分の1、貨物輸送の5分の1が必要である。現在、全冶金工業関連企業の時価総額は1640億ドルに達する。政府によると、この金額は、2016年までに46%増の2400億ドルに達する見込みである。
冶金工業部門は国内経済の発展に大きく貢献することから、政府は、生産施設の近代化や製品の競争力向上を図る同部門の投資計画に援助を行っている。2007-2015年には、鉄鋼分野に対しては1兆1560億ルーブル、非鉄分野に対しては6670億ルーブルに及ぶ政府の支援が計画されている。
こうした状況は、冶金工業部門への投資を促進している。2007年、冶金工業関連企業に対する投資は証券市場を牽引する役割を果たし(証券市場ベスト3部門入りした)、今後もより一段と成長する可能性を残している。1年で金属関連銘柄を含むMICEX金属指数は46%上昇し、金属採掘関連銘柄を含むRTS金属採掘指数は54%上昇した。
冶金工業部門が抱えているリスクとしては、同部門の成長と経済の成長が同調していることに注意を払う必要がある。現在、世界経済が停滞していることは、経済の成長を基盤に発展する同部門の成長を妨げる要因となっている。しかし、一方で中国やインドにおける経済発展が勢いを緩める気配はなく、アメリカの不況が世界の金属及び金属製品に対する需要に及ぼす影響も限定的である。ロシアの冶金工業関連企業に関しては、世界市場で金属需要の増加に停滞があったとしても、建設業及びインフラ整備事業の発展によって国内需要が劇的に増加することが見込まれており、埋め合わせが可能であると考える。
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