[レポート]週刊マーケットレター
出典:ゲゼル研究会(http:grsj.org)「曽我純の週刊マーケットレター」より
週刊マーケットレター(08年3月17日週号、No.226)
2008年3月16日
曽我 純
図表などはサイトの PDF からご覧になれます。
http://www.grsj.org/marketletter/index.html
■主要マーケット指標
■ 米国経済を押し潰す14.5兆ドルのモーゲージ残高
それにしても急激な円高ドル安である、週末には一時98円台を付け95年10月以来12年半ぶりの円高ドル安となった。週間でも3円55銭上昇し、05年12月の円高水準を超えたことから、円高ドル安がさらに進行するとみておいたほうがよい。対ユーロでもドルは売られ、最安値をつけた。ドル実効相場(MAJORCURRENCY、MAR73=100)は14日、69.6
と最安値を更新、昨年末から5%も下落した。
なぜこれほどドルは激しく売られるのだろうか。通貨はその国の政治、経済、軍事など
の総合力を反映したものであるが、特に、米不動産不況が底無し沼のような状態に陥り、
過去にない深くて長い不況を予想させること、政治もブッシュ政権がレイムダックの様相を呈し、リーダーシップ欠如となっており、深刻な不況に対して、有効な策を打ち出せないこと、などがドル信認の低下に繋がっているのだと思う。日本の政治、経済も同様の径路を辿っているが、米国経済がより深刻なことに加えて、これまで超低金利で調達していた円の返還が円高を招いているとも考えられる。
先週、米欧中央銀行が資金供給拡大の緊急声明を打ち出したが、住宅ローン担保証券へ
の不信は収まらず、資金繰り悪化の噂が流れていたベアー・スターンズが行き詰まった。JPモルガン・チェースがNY連銀から資金調達し、有価証券を担保にその資金をベアー・ス
ターンズに期限付きで貸し出すという方法を採った。
ベアー・スターンズは昨年6月、傘下のヘッジファンドがサブプライム絡みの損失を出し、ファンドは閉鎖に追い込まれた。その後、住宅ローン担保証券の信用は低下、価格も下落傾向を強め、購入価格と時価の乖離は拡大の一途を辿った。保有しているだけで評価損は膨れ、売却すればするで価格はさらに落ち込む、打つ手が無い状況に陥った。ベアー・スターンズは初期段階の教訓を生かすことなく、初期の傷の浅い段階で住宅ローン担保証券を売り切らなかったのだろう。そうしたツケが今回の危機を招いたといえる。
米不動産価格の下落が止らないことから、住宅ローン担保証券の価格も底無しとなって
おり、評価損は雪達磨式に拡大している。ベアー・スターンズだけでなく、住宅ローン担
保証券を保有している金融機関の評価損は日増しに増大しているはずだ。住宅ローン担保
証券で運用している投資会社などは、それを担保に金融機関から金を借りており、担保価
値の下落や掛け目の変更などによって苦境に立たされている。
90年代後半の日本の金融機関は決算発表毎に、不良債権処理は山を越えたと何度いった
ことだろうか。バランスシートから外すことなくいつまでも保有し続けた結果、にっちも
さっちもいかなくなり、公的資金に頼らざるをえなくなったことはそれほど昔のことでは
ない。今、米国でそのようなことが起きている。痛手をできるかぎり少なくするには、劣
化した資産をいかにす速く処分し、バランスシートから除外できるかどうかだ。合わせて
バランスシートに載せていない簿外の住宅ローン担保証券等の金融商品が、どのくらい現存するのか早急に明らかにし、劣化しつつある債権は処理する必要がある。米金融機関はいまだ簿外に巨額の金融商品を保有しており、そうした目に見えない部分を詳らかにしない限り、今回の住宅バブル崩壊から立ち直ることはできない。
住宅不況の余波は消費に表れてきている。2月の米小売売上高は前月比-0.6%の大幅減となった。自動車関連が-1.9%も落ち込んだほか、家具、家電、建築資材など軒並みマイナスとなり、消費財関連の減速が鮮明になってきた。前年比でも2.4%に低下し、実質ベースではマイナスである。住宅ローンの返済額が急増する時期にも当たり、返済できない家計が一気に増大することなどから、消費はますます厳しさを増していくだろう。消費が不振になれば、企業は設備投資を縮小するはずだ。そうなれば景気はさらに悪化、企業収益も落ち込むことになるだろう。今米国はそのような経路に向かっており、過去のような短期間で景気が底打ちするような経済状況ではない。
■ GDPに制約される株式
日経平均株価が下げ止らない。昨年10-12月期の企業収益が減益になり、今後、収益は
さらに悪化するという見方が強まっているからだ。政治の貧困は今に始まったことではな
いし、日銀総裁がそれほどの影響力があるのであれば、人選、資質等から疾っくに大暴落
していなければならない。政策委員の人選なども同じ一票を有するのであるから、なぜそ
の人でなければならないかを明らかにする必要がある。
米国の景気が悪化すれば、その影響が日本経済におよぶという不安に加えて、外人の日
本株投資も期待できず、日本市場は買い手不在に陥るという懸念もある。それ以上にゼロ
金利、株式売買手数料の低下、優遇税制といった株式を厚遇した政策が株式市場をダメにしたのである。
銀行預金の利息が無きに等しく、ネット取引で手数料も安くなり、少しでも儲けたいと
いう気持ちが株式へと向かわせた。当たり前のことだが、短期売買でそう簡単に儲けるこ
とはできない。一度は首尾よく利益をだすことができても、次はなかなかうまくいかない。なにをしている企業かも調べず、ただ良さそうだという感触で、あるいは薦められるままに株を買うだけでは儲けることはできない。挙句のはてに大切な金を大幅に目減りさせることになる。要するに苦労することなく簡単に金を儲けることなど、そんなうまい話はないのである。うまい話であれば詐欺と思ってまちがいない。それほど儲かることであれば、だれが人に教えたりするだろうか。
名目GDPは07年10-12月期、前年比0.7%と07年1-3月期の2.5%から減速している。08年1-3月期はさらに伸び率は低下するはずだ。07年では1.3%伸び、長期金利もほぼこの水準に低下した。過去5年の年平均成長率は1%弱、過去10年ではほぼゼロ成長だ。
基本的には株式の値上りもGDP成長率程度にとどまるのである。株式が実体経済から離
れていくことは、バブルが発生しつつあることを示唆している。短期売買の活況に釣られ
て株式を求めるという愚を犯してはならない。
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