[レポート]週刊マーケットレター
出典:ゲゼル研究会(http:grsj.org)「曽我純の週刊マーケットレター」より
週刊マーケットレター(08年4月21日週号、No.231)
2008年4月20日
曽我 純
図表などはサイトの PDF からご覧になれます。
http://www.grsj.org/marketletter/index.html
■主要マーケット指標
■ FRBの本音は物価のほどよい上昇
原油価格は最高値を更新、CRB指数も最高値近くに上昇したが、NYダウは反発、1月
上旬以来の水準に戻った。週末、1-3月期のシティーグループの決算が発表されたが、
純損失額が51.1億ドルと昨年10-12月期の98.3億ドルから大幅に減少し、サブプライム問題がやや下火になったこと、その他企業の決算内容が予想を上回ったことなどが好感されたからだ。ただ、各種経済指標によると、米実体経済は厳しさが増しており、それが投資家心理を神経質にさせている。商いはそれほど膨らまず、多くの投資家は様子見姿勢を変えていない。
3月の米住宅着工件数は前月比11.9%減の94.7万戸と91年5月以来の100万戸割れと
なった。許可件数は前年比40.9%減の92.7万戸となり、そのうち主力の一戸建ては60.6万
戸、前年比-46.4%も落ち込み、米住宅市場はますます悪い方向に向かっている。住宅着工
件数の前年割れはすでに約2年続いており、米国経済をじわじわ蝕んでいる。
住宅着工件数と個人消費支出には高い相関性が認められるが、今回、長期に住宅が沈み
込んでいるにもかかわらず、過去のように個人消費支出は落ち込んでいない。それでも2
月の実質個人消費支出は前年比1.1%とあきらかに下降線を辿っており、小売売上高などか
ら判断すれば、早晩、マイナスに転落することになるだろう。
3月の米小売売上高はガソリンの売上増により前年比微増を維持したが、これを除けば
マイナスである。自動車と家具類の販売は-6.8%、-10.2%のそれぞれ大幅なマイナスだが、家電や衣料なども前年を下回り、米国の消費者は不要不急のものだけでなく、消費全般を削減しようとしているようだ。こうした消費の絞込みは生産に波及し、米国経済を深刻なリセッションに追い込むだろう。
米国経済の悪化によって、世界経済の足取りも怪しくなっている。2月のOECD景気先
行指数は前月比+0.1%と9ヵ月ぶりのプラスとなったが、米国やユーロ圏は悪化しており、このままOECDの指数が回復するとは考え難い。世界景気が不安定ななかで、資源の価格だけが異常な上昇をみせていることは不思議である。資源高によってのみ、世界景気は後退を食い止められているのだろうか。資源高が突然終焉するようなことにでもなれば、サブプライム関連で痛んでいる金融機関をさらに苦境に立たせることになり兼ねない。資源高により豊富な資金を抱えている資源国の資金が米国等に還流し、世界の資金循環を形成しているが、世界景気の悪化により商品市況の暴落が起こることになれば、資金循環が一時的にも途切れる事態が起こらないとも限らない。カネの流れだけでなくモノの流れも減少、世界景気はデフレに陥り、金融機関の融資のリスクは高まり、焦げ付きは増すと考えられる。
それにしても、なぜこれほど長期間、資源高が続いているのだろうか。それは中間段階
でのコスト吸収や給与の抑制により、物価が上昇せず、安定しているからだ。消費者物価
が安定していれば、需要も大きく変動することはなく、資源高と最終財価格の安定が両立
することになる。資源高が最終消費財の価格に波及し、消費が減少することになれば、資
源価格は急落するだろう。
3月の米消費者物価のコア指数(食品・エネルギーを除く)は前月比+0.2%の伸びにと
どまった。消費が弱くなっているほか、3月の設備稼働率も80.5%と07年7月をピークに
緩やかに低下、単位労働コストもインフレを引き起こすほど上昇していない。米住宅不況
が家計の消費支出をさらに抑制すると考えられることから、米消費者物価のコア指数は前
年比2%台の現状から大きく乖離しないと思う。
金融当局にとっても物価の伸び率が低下し、デフレに向かうよりも、現状程度の上昇であるならば、むしろそのほうが好ましいはずだ。不動産価格が下落しているときに、モノやサービスの値段が下がるデフレに陥ると、住宅ローン債務者の負担は大きくなり、破綻に追い込まれる人が増えるからだ。米国経済が不動産不況から抜け出すためには、消費者物価の上昇が必要なのである。金融当局の本音は物価の下落ではなくほどよい上昇であり、4月29、30日のFOMCでも物価よりも景気重視の金融政策を打ち出すはずだ。FFレートは0.5%引き下げられ、年1.75%に低下すると予想する。
--------------------------
Gesell Research Society Japan
http://grsj.org
info@grsj.org
--------------------------
関連記事
|
|

Powered by newsing |
|
コラム最新記事
|