[コラム:研究員のココロ]海外子会社の内部統制整備を終えて〜整備された文書をどう活かすか?【1】業務プロセス編〜
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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 主任研究員 経営システム研究クラスター 原田 喜浩 2008年4月21日付」より
J-SOX本番年度を迎えて、内部統制の整備という一つの山場を越えられた関係者の皆様は、胸をなでおろしているところであろう。筆者も昨年来、複数の顧客企業の海外子会社での整備支援のプロジェクトを無事に終えたところである。
海外子会社を持つ企業では、今回の日本版SOX法対応のために大量の文書を整備するなかで、さまざまな発見があったのではないかと思われる。営業や生産部門には日本人スタッフを配置していても、経理業務は現地の責任者に委ねているケースも多く、場合によっては、初めて海外子会社の業務プロセスを知ったという企業もあるかもしれない。整備された文書が監査対応に必要であることは言うまでもないが、それ以上に企業グループにとって貴重な財産といえるだろう。
今回は、海外子会社に焦点を絞って、「日本版SOX法対応によって作成された文書類をどのように活用するのか?」という観点から、実際に海外子会社の内部統制整備を行なってきたメンバー4人によるリレー形式で、業務プロセス統制、IT統制、決算プロセス統制、全社統制の各分野について考えてみたい。
まず初回は、業務プロセス統制から見てみよう。
1. なぜ本社と子会社の業務プロセスは違うのか?
海外子会社を持つ企業の場合、基本的には本社のビジネスモデルをコピーして、海外に展開しているために、本社と子会社ではほぼ同じ業務プロセスとなるはずである。しかしながら、法令、商慣行や情報システムなどの違い、人員の多寡により、結果として業務プロセスが大きく異なっていることが今回の文書化で発見されたはずである。
また、内部統制の有効性という観点からは、必ずしも親会社が子会社より進んでいるとは限らない。パッケージソフトをうまく活用している子会社のほうが、独自に開発したシステムを利用する親会社よりも有効に機能しているという場合も見られるだろう。
2. 本社と子会社の業務プロセスを比較する
今回整備した文書を活用して、本社と子会社で共通する事業(例えばA事業と呼ぼう)の業務プロセスを比較することによって、次のようなことが見えてくるだろう。
(1)A事業にとって国内外で共通するリスクとは何だろうか?
(2)各海外子会社の業務に固有なリスクとは何だろうか?
これらを裏返せば、次のような問題が提起される。
(3)A事業にとって普遍的な統制活動とは何だろうか?
(4)各海外子会社に必要となる固有の統制活動とは何だろうか?
そして、各社ごとに次の課題も浮き彫りになるだろう。
(5)必要な統制活動が欠落していないだろうか?
(6)必要性の薄い統制活動までが行なわれていないだろうか?
3. 内部統制ポリシーを作る
これらの比較分析は、A事業というビジネスモデルについて、各国に固有の事情を超えた最適な内部統制のあり方を検討することであり、いわばグループ全体の「内部統制ポリシー」を作り上げることを意味する。
例えば、本社においても海外子会社においても、「契約→受注→出荷→売上計上→回収」という流れの全ての段階で、承認や相互チェックを行なうのは非効率である。ビジネスモデルの特性を検討することによって、A事業では国内、海外を問わず「契約」と「回収」に統制の力点を置けば十分である、という結論が得られるかもしれない。一方で、別の事業では「受注」と「売上計上」に力点を置くべきという結論が得られることもあるだろう。
この場合、内部統制ポリシーとして「A事業の販売プロセスについて、『契約』と『回収』に力点を置く。『契約』では、経理部門長と営業部門長の両者による承認を必須とし、『回収』では、1ヶ月以上の滞留債権については、本社の定める○○規程に準じた対応を全グループ会社にて実施する」といった内容が定められることになる。
こうした検討を経て作成された「内部統制ポリシー」は次の3点で有用である。第一に前述したような必要な統制のモレを発見するチェックシートとして活用することができる。(逆に、必要以上に実施されているムダな統制活動を発見することもできるだろう)。第二に監査法人への説明資料として個別の3点セットを説明するよりも、企業のポリシーとして説明するほうが一貫性があり、説得力を持つだろう。第三に新たな海外展開を行なう際に、業務プロセスの設計を行なう基準として活用できよう。
冒頭にも述べたが、今回のJ-SOX対応で整備された業務プロセス関連の文書は、グループの貴重な財産であり監査対応のみでの利用にとどめるのはもったいないというのが筆者の見解である。みなさまの会社でも有益に活用されることを願いたい。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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原田 喜浩
(株)日本総合研究所
主任研究員 経営システム研究クラスター
専門分野:リテール金融ビジネス、チャネル戦略
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