[コラム]製品含有化学物質管理ガイドラインの可能性
出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 菅谷 隆夫 2008年4月22日付」より
新しい「製品含有化学物質管理ガイドライン(以下、管理ガイド)」が発行された。製品含有化学物質管理とは、たとえば自動車や電気電子機器などの製品に含まれる(材料や部品等に使われている)化学物質を、人の健康や生態系への影響やリサイクル・廃棄物処理の観点からマネジメントするものである。実際には、製造に用いる原材料や部品等に含有される化学物質を「購入段階」で確認し、「製造段階」における誤使用・混入・汚染等の防止を徹底すると同時に反応等によって新たに製品に含有される化学物質を把握し、「販売段階」では製品の含有化学物質情報を適切に開示・伝達するなどの取組みが必要となる。
今回、管理ガイドを発行したのは、グリーン調達調査共通化協議会(JGPSSI、http://www.jgpssi.jp/)とアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP、http://www.jamp-info.com/)である。JGPSSIは、2005年9月に管理ガイドの第1版を発行し、普及活動に取り組んできた。JAMPも2007年7月に第1版を会員向けに発行し、検証等の活動を行ってきた。二つの組織の管理ガイドの考え方は同様であり、製品含有化学物質管理の普及を推進するためには管理ガイドは一つであることが望ましいとの認識から協働での検討が行われ、その成果が同一の内容の管理ガイドとして、本年4月にそれぞれの組織から第2版として発行された。
ここでは、この管理ガイドがもつモノづくり強化につながる3つの可能性について述べたい。
■アーティクルマネジメントの展開の可能性
製品含有化学物質に関わる規制は、従来は食品容器や玩具などに限られていたが、欧州連合(EU)のELV指令(廃自動車指令)やRoHS指令(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限指令)等により、自動車や電子電気機器等の成形品(アーティクル)の製造に関わる長く複雑なサプライチェーン全体の課題となっている。
製品中に含有される化学物質の情報は、EUの新しい化学物質規則REACHの成形品に関わる届出や情報伝達の責務への対応においても不可欠となる。製品含有化学物質情報には、いわゆる「情報の非対称性」があり、一般的には原材料や部品等の供給者(サプライヤ)、特により川上の供給者でなければ、その情報は容易には知り得ない。対象物質が限定されるELV指令、RoHS指令対応では、必要に応じて購入者が分析によって原材料や部品等の確認を行っているケースもあるが、REACHの届出等では対象物質が数百以上となる可能性もあり、分析による確認は一層困難となる。
そのため今後は、サプライチェーンに連なる個々の企業において製品含有化学物質のマネジメントが実践され、製品含有化学物質情報の正確性、信頼性を向上させることが法規制対応の基礎となると考えられる。多くの企業や団体の知見を集約した新しい管理ガイドは、マネジメントの共通的な要件を取りまとめたものであり、広範な事業者の拠り所となり得るものである。
■自律的管理の可能性
管理ガイドは、PDCA(plan-do-check-act)サイクルにより組織内の製品含有化学物質のマネジメント体制を継続的に維持・改善することを要件としているが、環境や品質のマネジメントシステムのように第三者による審査登録を求めず、自己チェックに基づく「自己適合宣言」によって、管理体制の構築とその責任を社会に表明する仕組みを採用している。
これは審査登録等の負担を減らすだけでなく、それぞれの事業者が自律的にマネジメントに取り組むことにより、その知見が引き出され、組織に合わせたマネジメントの体制構築と実践を可能とし、マネジメントのレベル向上と効率化につながることを期待するものといえる。実際にモノづくりを行う事業者のほうが、製品含有化学物質上のリスクや適切な対応方法を把握しており、その知見が最大限活用されるべきとの考えが根底にある。
供給者の取り組みに加え、購入者によってその取り組み結果が尊重され、相互理解が醸成されれば、さらに積極的な取り組みへとつながるであろう。取り組みの遅れが指摘されることもある中小企業、あるいはこれから製品含有化学物質のマネジメントに取り組む事業者こそ、この取り組みを機にモノづくりにおける課題に自律的に対応できる組織に改善される可能性がある。
■「協調」による環境に配慮したモノづくりの展開の可能性
CO2や化学物質の排出など製造工程における環境負荷削減への対応は、個別の企業ごとの取り組みを中心に進められるが、製品含有化学物質の課題はサプライチェーンに関わる企業による取り組みの実践の連鎖がなければ解決されない。そのため、この課題については競争だけでなく協調による取り組みが重要となる。先述のJGPSSIとJAMPの管理ガイドの統合も協調の重要性を象徴したものといえる。
サプライチェーン間における協調は、REACH規則によってさらに重要となる製品含有化学物質のマネジメントを推進させる効果に留まらず、過度の分業の見直し、あるいは環境に配慮した製品の製造のためのモノづくりの見直しの手掛かりともなり得る。
今回発行された管理ガイドに沿った取り組みがより多くの事業者によって実践され、その結果がモノづくり強化、産業力強化に結びつくと同時に、含有化学物質管理の側面も含めた環境配慮製品が広く普及することを期待する。
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