[トピックス]ロシアの所得増加と労働生産性
ロシア連邦国家統計局によると、2007年第4四半期における国民1人当たりの平均所得は、1月当たり15605ルーブルであった。これは、最低生活費の389.6%に相当する。2007年第3四半期における平均所得の対最低生活費は、327.4%であった。
全国世論調査センターが実施したアンケート調査によると、決して多くはないが安定した収入と生活を望むと回答したロシア人の割合は減少の一途をたどっている(1999年には60%であったが、2008年には44%となった)。また、それと共に、高い収入を得るためには、リスクも覚悟していると回答したロシア人の割合は著しく増加した。社会学者は、将来の保障がなくても高収入を得たいと答えたロシア人の割合が34%に拡大したことに注目している。以前、この値は23%であった。その他では、個人で事業を営みたいと考えているロシア人の割合が増加したことが認められた(6%から10%)。一方、低賃金ではあるが、余暇の多い生活を望むロシア人はおよそ4%と非常に低い水準となった。
ロシア連邦国家統計局の専門家は、2007年第4四半期における労働者1人当たりの平均月額名目賃金が、最低生活費(労働可能人口1人当たり)の363.6%に相当する15742ルーブルとなったことに着目している(第3四半期には321.5%であった)。
しかし、ロシアの労働生産性は、そう急速に伸びているわけではない。ロシア経済貿易発展省のデータは、2005年以来、ロシア人の労働が非効率的に行われていることを示している。2005年におけるロシアの労働生産性は5,5%であった。また、2005年以来、ロシア連邦国家統計局は、ロシアの労働生産性に関するデータを公表していない。
ロシア国民の収入は増加しているものの、労働生産性の成長は遅れている。そのために、ロシアでは、需要の伸びに供給が追いつかないという状況が生まれている。その結果、インフレが加速し、消費者の需要は輸入品によって支えられている。2007年における輸入品の割合は40%に達した。
運用会社Russ-Capitalの主任アナリストであるLogvin氏は、国民の収入増加率と労働生産性の成長率に大きな開きがあることは、経済危機をもたらす要因になり得ると考えている。同氏は、「収入の増加が、即、労働生産性の向上を意味するわけではない。双方の成長率に差があることによって収益が低下し、企業の業績に反映することが懸念される。こうした状況を打開するには、せめて投資ブームが観察される分野における労働生産性の急上昇及びより緩やかな平均所得の成長率が必要である。」と言及している。
以前、ロシア経済貿易発展省は、2007年、労働生産性と収入増の差が開いたことに触れた。2007年における収入の増加率は16.2%であったが、一方、労働生産性の上昇率はおよそ6%に止まった。運用会社Russ-CapitalのLogvin氏は、ロシアの労働生産性はアメリカの6分の1であると指摘している。
労働生産性を高めるために有効な対策として、より競争的な市場環境を整えることが挙げられる。5月14日に、世界銀行が「経済的発展のための対策:東ヨーロッパ及び旧ソ連諸国における労働生産性」と題して公表した調査報告書の中でも、労働生産性を高めるための方法として、同様の見解が示されている。調査報告書によると、現在、ロシアにおける企業の入れ替わりは非常に少ない(5%)。一方、先進諸外国においては、年間に10-13%の企業が、市場へ進出或いは撤退している。また、世界銀行の専門家は、労働資源・技術・インフラへの投資拡大を図る他、金融業を発展させることが必要不可欠な時期に来ていると言及している。
投資銀行TrustのアナリストであるBragin氏も、上記の見解を支持している。Bragin氏は、全ての労働市場において競争を高めることが重要であると考えている。同氏は、「ある特定の都市部に限定されることなく、ロシアのあらゆる地域で労働が可能となるような労働可動性の推進を図ることが必要である。例として、アメリカでは、そうした解雇しやすく雇いやすい仕組みが、労働市場の競争を高め、求人募集条件も専門的な知識・技術が要求されるようになってきている。また、労働生産性を向上させるには、教育水準を上げることも重要である。現在、特殊な知識・技術を有する専門家は、慢性的な不足状態にある。」と指摘する。
その他、投資銀行TrustのBragin氏は、労働法の改定も、労働生産性を高める一助となるだろうと考えている。同氏は、「雇い主と労働者が、口約束による違法な雇用形態の契約を結んでいるといったように、労働法が遵守されていない事例は、しばしば見受けられる。こうした状況も、労働生産性に影響を及ぼす原因となっている。」と考えている。
先日、エカテリンブルグで開催された第8回ロシア経済フォーラムの参加者は、2020年までに、ロシアの労働生産性を4倍に上昇させるという、ロシアにとって非常に望ましい見解を示した。
しかし、投資銀行Trustのマクロ経済分析部部長のBragin氏は、ロシアが2020年までという定められた期間で、どれほど労働生産性を向上させられるか疑問視している。同氏は、「現在の労働生産性向上率は、年間に5-7%の水準である。従って、労働生産性を4倍にするという目標を達成するには、上昇率を年間12-13%程度に引き上げなくてはならないが、こうした数字は現実的でない。目標値を掲げたのは、実際に実現するためではなく、労働生産性という概念を普及させるためなのかもしれない。」と言及する。
運用会社Russ-Capitalの主任アナリストであるLogvin氏も、こうした見解に同調している。同氏は、「前述の目標は達成不可能としても、ロシア政府が労働生産性を高めるという方針を堅持する限り、2020年までに、ロシアの労働生産性が2-2.5倍に上昇することは可能だろう。」との期待を述べた。

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