[トピックス]メドベージェフ大統領主導の汚職対策
ロシアのメドベージェフ大統領は、大統領に就任して以来一週間、公約の実現に向けて動いている。同大統領は、中小企業に対する支援、汚職の一掃、司法制度の改革を最優先課題として取り組むとの公約を選挙前に示していた。先日、早速、中小企業の事業を支援する大統領令が公布された。また、5月19日、メドベージェフ大統領は、汚職対策に関する法案に調印した。これに伴い、汚職対策特別機関が新設された。同機関の代表には、メドベージェフ大統領自らが就任する予定である。5月20日には、裁判制度関連法案の改正を審議する諮問機関設立に関する指示が出された。
しかし、これらは、まだ着手されたばかりであり、その効果に関して評価できるような段階にはない。
実際、メドベージェフ大統領は、具体的な提案をまだ述べていない。クレムリンで、大統領は、「いまや、汚職は構造的問題である。こうした構造自体にメスを入れなければならない。その場限りの対策ではなく、具体的な一連の対策が必要である。」と言及した。
ナルイシキン大統領府長官は、汚職を一掃するという強い意思こそがもっとも重要であるとの見解を示している。数日前、同氏は、「汚職に対する大統領の毅然とした態度によって、汚職一掃への期待が高まっている。」と述べた。また、大統領顧問のRukina氏は、「メドベージェフ大統領は、大統領に就任するや否や、大変な課題に着手した。やるからには、最後までやりとおさなければならない。仮に、大統領が、途中で諦めるような素振りを見せれば、皆をひどく落胆させることになるだろう。大統領府には、膨大な量の手紙が届けられる。そうした手紙の内容からは、国民が、どれほど、この問題の解決を願っているかが分かる。ここで、手をこまねいていれば、何も変わらないだろう。」と現実的な対策に取り組むべき時が来たことに言及している。
しかし、「Livadiskiy Club」の政治学者であるTrofimchuk氏は、汚職を一掃することが果たしてできるのかという疑念を呈している。同氏は、「汚職の問題を70-80%改善することは、現実的にあり得るだろう。しかし、それでも、真剣な取組みを根気強く続けていくことが必要である。」と指摘する。
現時点で明らかになっているのは、この汚職対策が、以下の3点を大枠に推進されるということである。第1には、法律である。法律の近代化・汚職対策関連法案の審議・修正などが求められている。第2には、非良心的な一部の人間に対して対策を講じることである。第3には、汚職の法的解明及び汚職に対する社会的評価を明確にすることである。
Rukina大統領顧問は、どのような法律の改正を急ぐべきかに関して言及している。同氏は、「もっとも汚職が蔓延しているのは、国家による注文・供給・資産の競売に関係する分野である。公共の施策が不透明であるために、常軌を逸した横行がまかり通っている。多少の汚職は多くの国家に認められるだろう。しかし、ロシアでは、"賄賂"と呼ばれる金銭授受が余りに肥大化してしまった。また、こうした不透明さは、国内産業の発展をも妨げている。」と述べている。
政治学者のTrofimchuk氏は、政府が汚職と闘う姿勢を広く社会に知らしめるというテーゼを支持している。同氏は、汚職対策が実際に実施されているとの確信を皆が持つべきであると述べている。また、Trofimchuk氏は、「状況を改善するには、汚職対策に関する周知徹底が必要不可欠である。最優先課題は、権力側に対する信頼度を高めることである。また、広報活動に携わる担当者には、新しい人材を登用しなければならない。なぜなら、長年、権力に近いところにいた人物を信じるような人はいないためである。しかし、汚職対策特別機関の中に、新しい顔ぶれはないようだ。」と指摘する。
その他、Rukina大統領顧問は、ロシアでは、中級官吏・下級官吏の給料体系が不適切であることを指摘している。同氏は、「こうした状況の下、上級官吏が、給与を割増ししたりしなかったり、或いは報奨金を出したり出さなかったりという判断を下している。そもそも、固定された給与等級表は、ずっと以前に作成されたものである。1992年に制定されて以来、長きにわたって利用されてきた。先進国では、最低賃金が定められている。こうした制度は効果的だろう。」と述べている。固定された給与体系は、市場経済の中で、汚職を蔓延させる原因となっている。Rukina大統領顧問は、給与体系の改正が上手くいかなければ、いつまで経っても、汚職を一掃することはできないだろうと考えている。
また、司法の独立も、非常に難しい課題である。メドベージェフ大統領は、「裁判官は法律にのみ従う。これは、裁判に対する尊敬の念と判決に対する信頼を生む根幹である。このような方向性に持っていくには、不法な判決の根絶を図るために、一連の問題を審議する必要がある。種々の圧力、電話による恐喝、金銭授受によって、罪が見逃される例がしばしば起きていることは、周知の事実である。」と言及した。
しかし、どうしたら、この問題を解決できるだろうか。専門家の間には、基本的に司法に関する法律に不備はなく、電話による業務を廃止するしかないという意見も出ている。モスクワ弁護士協会の会長であるReznik氏は、司法の独立を達成するには、現今の法律を遵守しさえすれば良いと指摘する。同氏は、「現在の法律は、裁判に対して圧力をかけることを禁じ、司法活動への介入を監視している。また、買収に対する刑事的責任も明記されている。」と言及する。
また、司法が余りに社会から閉ざされた場になっていることも、問題のひとつである。一方で、法律は、裁判間の独立を明確にしているが、もう一方で、行政側の裁判に対する影響力は残されている。例として、行政側は、裁判官の住居を提供する義務を負っている。しかし、住居の提供が、いつも、滞りなく行われているわけではない。また、一般市民が裁判に参加することは、基本的に不可能である。
Rukina大統領顧問は、全ての裁判所で透明性のある給与体系が用いられなければならないと考えている。同氏は、「仮に、どこか地方の裁判所の裁判官が、高級外車を所有しているとしよう。しかし、それは、裁判官の給与で購入できるはずがないと認識しなければならない。」と言及する。また、同氏は、こうした例を調査する必要があると指摘している。こうした調査を実施するにあたって、公共の機関が陣頭指揮をとることもあり得るだろう。
しかし、ロシアの司法システムは、より根深い問題を抱えている。Reznik氏は、ロシアにおける現在の司法システムが適正であるとは、到底言いがたいとしている。同氏は、「ロシアの司法機関は、告発的な人々が構成している。彼らは、元予審判事、元検察官等であり、リベラル派でも人権擁護派でもない。」と指摘する。司法機関の意識改革を行うには、相当の時間がかかるだろう。10年単位の事業となる可能性もある。汚職対策と同様、対策を打ち出すのに早すぎるということはない。

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