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[トピックス]ロシアの住宅建設事情:矛盾点と傾向性

2008年05月26日 17:31更新 前の記事 次の記事  ロシア経済・不動産一覧
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 2008年第1四半期におけるロシアの住宅建設率は、前年同期の51.1%に対して7.8%と急落した。これは異常な状況だと言える。5月19日、リアノーボスチ通信の記者クラブが開催された。記者会見の席上、経済学者・政治学者として有名なロシア自然科学アカデミーの会員であるDelyagin氏は、ロシアにおける住宅建設の矛盾点と傾向性に関して取り上げた。
 
 2000年から2007年にかけて、住宅建設戸数は、増加の一途を辿っていた。昨年、住宅建設戸数は、ソ連崩壊直前である1990年の水準に近いところまで上昇した。それを受け、住宅不足問題が解決され始めたように思われた。しかし、2008年第1四半期、住宅建設率は異常な落ち込みを示した。Delyagin氏は、「全体から判断すると、建設不振は、季節的な要因によって起こったものではない」と考えている。同氏によると、住宅価格の高騰及び住宅ローンの金利上昇から、中間層からの住宅需要が低下していること、また、区画の割り当て及び建設資材の不足に関連するインフラの問題によって、住宅建設業界に大きな変化が生まれている。Delyagin氏は、こうした傾向が維持されるようであれば、2008年における住宅建設率は、減速の度を増し、年間に10%以下となると予測している。
 
 住宅建設業界は、その他の問題点も抱えている。それは、地域によっては、住宅建設が過熱していることである。モスクワ市・モスクワ州・クラスノダール地方・タタルスタン共和国・サンクトペテルブルグ市・レニングラード州・バシコルトスタン共和国・ロストフ州・チュメニ州・チェリャビンスク州・ノヴォシビルスク州の11地域における建設率は、従来どおり50%以上を保っている。
 
 2008年第1四半期には、次のような矛盾点が認められた。2008年における住宅建設は、57地域で伸びたが、25地域で減少が認められた。その中の9地域において2倍以上の伸び率が認められた(カムチャツカ州では、10倍以上であった)。一方、6地域では、3分の1以下の急激な減少が確認された(ムルマンスク州では5分の1以下となった)。住宅建設用の土地不足、住宅価格の高騰、煩雑な諸手続きが引き金となって、モスクワ市では住宅建設戸数が40%、サンクトペテルブルグ市では11.7%減少した。サンクトペテルブルグの住宅建設戸数は、レニングラード州の建設戸数が増加したため相殺されたが(サンクトペテルブルグ近郊の住宅建設戸数は3倍に増加した)、モスクワ州の建設戸数は5%減少した。
 
 また、先払い方式による注文住宅の建設率が著しく増加したことも、興味深い傾向性である。建設全体における注文住宅の割合は52.2%に達した。2007年にチェチェン共和国で建設された全住居は、注文住宅であった。しかし、ロシア連邦建設局の統計によると、住宅建設数自体は、43.6%の減少となっている。従って、Delyagin氏は、チェチェン共和国を再建し、国民のために住居建設を行っているとのカディロフ大統領の発言は、現実に即していないと考えている。
 
 1990年代後半、ロシア人一人当たりの住宅面積は6.7%上昇し(1995年には18平方メートル/一人当たりであったが、2000年には19.2平方メートルとなった)、2000年から2006年までは9.9%上昇した(21.1平方メートル/一人当たり)。しかし、一人当たりの住宅面積が増加したのは、人口の自然減少によるものである。一人当たりの住宅面積がもっとも大きいのは、エヴェンキ自治管区(29平方メートル/一人当たり)、及びチュクチ自治管区(28.9平方メートル/一人当たり)である。両地域では、2002年にプーチン元大統領が発表した目標数値を達成している。
 
 また、Delyagin氏は、建設業の発展がロシア人一般の住宅状況に反映することはないと指摘する。住宅を購入することは、ますます難しくなっており、「取得可能な住居」計画の枠内で実施されている住宅ローンは、独占的な建設機構によるものであり、状況をさらに厳しくしている。同氏は、「結果として、質の高い住居のうち、かなりの割合が(モスクワでは30%程度)、投資目的で取得されたものである(賃貸目的ではない)」と指摘する。
 
 住居に対する需要と供給の関係がずれていることによって(裕福層のために建設されているが、実際に必要としているのは貧困層である)、住宅不足という問題のみならず、老朽化した危険な住居に関するより重要な問題の解決も困難を極めている。公式データによると、老朽化した住居は、住宅全体の3.2%となっている(モスクワ市では0.3%、ダゲスタン共和国では22.5%)。しかし、ロシア連邦建設局の評価によると、その数は14%を超えており、非常に危険な住居の割合は1.4%とされている(2005年には0.9%であった)。
 
 Delyagin氏は、「住宅問題が認められるのは、遠隔地及び気象条件の厳しさから管理が十分にされていない場合、近郊の都市への移動によって住宅を手放した場合、ロシアの人口が減少していることによって空家となった場合が挙げられる」と説明している。
 
 ロシア人にとって、住環境の整った住宅は非常に少ない。ロシア連邦建設局のデータによると、住環境の全体或いは一部が整っていない住居に暮らしているロシア人は1170万世帯とされている。しかも、そうした住居に払う家賃は、ますます高くなっている。ロシアにおける住宅・光熱費価格は、2000年年初から2008年4月まで4.35倍に上昇した。これは、インフレ率の1.8倍である。また、料金が頻繁に改定されていることによって、料金引き上げは恣意的なものであって、国民の間にこれ以上は耐えられないという批判が高まれば、料金は引き下がるのではないかという風潮が起きている。実際、2006年には、手に負えなくなった住居価格が崩落する出来事があった。38地域で料金が引き下げられ、そのうち2地域では2分の1以下となった。
 
 結論として、Delyagin氏は、「住宅建設は、非常に厳しく先が見えない状況にある」と述べている。同氏によると、こうした状況を生んでいる要因は、政府が住宅関連政策を打ち出していないこと、及び、住宅問題を社会的に解決する上で、住宅市場の取組みがアンバランスであることである。Delyagin氏は、住宅建設は政府にとって優先度の高い事業ではないと指摘している。住宅関連問題を解決するには、政府の建設業者に対する厳しい統制が必要である。また、建設業者に対して先進的な技術の導入を促すことも必要である。しかし、独占的な建設業界が、こうした流れに従わないことも考えられる。Delyagin氏は、「国家の統制なくしては、このまま建設業界が暴利を得るばかりである」と言及した。


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