[トピックス]ロシア経済成長戦略大綱をめぐる諸意見
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2020年までの長期的なロシア経済成長戦略大綱(戦略大綱2020)に関する審議は長期を要している。プーチン首相が大統領として政務に携わっていた2006年に、経済発展省による主導の下で同大綱の策定が着手された。以来、大綱に関連する諸計画をめぐって、活発な議論が行われている。5月29日には、リアノーヴォスチ通信記者クラブにおいて会議が開催され、著名な経済学者が、戦略大綱2020に対する意見を交わした。その中で、専門家側からの批判が集まったのは、石油価格の見積もりが今日の水準よりも低かったために、経済成長率が余りに抑制された値になっていることである。
同大綱では、2020年までの経済成長率を6-7%と予測している。2007年の経済成長率は8%であった。ロシア科学アカデミー国民経済予測機関の研究員であるIvanter氏は、2020年までの経済成長率を9%と予測している。同氏は、政府が戦略大綱に示したことの半分でも実現化することができれば、今後も、これまでと同等かそれ以上のテンポで、ロシア経済は発展していくだろうと考えている。
雑誌「Svobodnaya mysl」の編集長であり、工業化後社会研究センターの研究員であるInozemtsev氏は、「私は、エネルギー資源の価格が急落することはないのではないかという意見に賛成する。エネルギー資源価格が急落しなければ、経済成長率が8%から6%に低下することはないだろう。ロシア輸出全体におけるエネルギー資源輸出の比重も大きく変わらないだろう。従って、大綱に示されている予測値は低く設定されていると思われる。更に、計画の大部分は目標期日よりも早く達成できるだろう。」と言及している。
現在も、専門家は、ロシア経済を左右する大きな要素として原料を見ている。また、専門家は、発展のための技術革新に関して、懐疑的な見解を抱いている。経済・金融研究センターの所長及びロシア経済学校の教授であるZamulina氏は、ロシアは、生産或いは経営等に関する外国の技術を取得するために、積極的に投資を行うべきであると指摘する。新たなアイディアや技術者を招くには、投資が必要である。自動車製造業界では、すでに対策が取られている。しかし、戦略大綱2020に示されている技術革新は、ロシア国内の学術的発明によるものと限定されている。
しかし、経済発展省のKlepach副大臣は、国内の技術から国外の技術を重視するといった方向転換に対して否定的な姿勢を示している。Klepach副大臣は、技術革新の土台となるロシアの学術研究能力を高めることが必要であると考えている。現在、ロシアのGDPの中で、高付加価値製品の割合はおよそ1%であるが、中国は1.3%、フィンランドは4%である。技術革新に関して、もっとも批判の対象となっているのは、研究開発に充てるべき投資が非常に少ないことである。経済発展省のKlepach副大臣は、こうした状況を今後3年以内に改善するとしている。
また、Klepach経済発展副大臣は、戦略大綱2020の主要目的は、発展に向けた計画の優先順位を付ける事であり、予測値は副次的なものであると言及している。予測値に関して、同氏は、実行すべき事業の進捗状況を図る1つの目安でしかないとしている。
一方で、トロイカダイアローグの投資運用部部長であるGavrilenkov氏は、経済発展省の示した数値を低すぎるとは考えていない。同氏は、多くの専門家が石油価格の下落を考慮に入れていないことに注意を払っている。Gavrilenkov氏は、石油価格の下落もあり得ると考えている。同氏は、「石油価格の高騰に続いて、食料品価格も高騰している。石油の高値は、すでに社会的問題となっている。対応策を取らない訳にはいかない。石油価格の高騰は、先進諸国によるマクロ経済政策が失敗したためである。しかし、アメリカの財政赤字や現行の低い政策金利が、このままいつまでも続くわけではない。
この数年、先進諸国におけるインフレ率は2%の水準であった。インフレ率をこの水準に抑えようとする余り、不動産市場・金融市場・エネルギー資源市場の動向には無頓着であった。貨幣が過剰に供給され、政策金利が引き下げられた結果、昨年、世界の平均政策金利は、実質マイナスとなるような事態になった。これは、貨幣が過剰に供給されてだぶついていることを意味している。こうしたことから、石油価格の高騰及び食料品価格の高騰が発生した。」と指摘する。
トロイカダイアローグのGavrilenkov氏は、今後数年における発展に関して次のような予測を立てている。早かれ遅かれ、世界的なインフレを抑制するために、政策金利を引き上げることが必要となる可能性がある。世界的に通貨供給量の伸びが減速すれば、原料価格が、それほど大きく上昇することはなくなるだろう。その際、ロシア政府には、実質的な政策金利に、実体経済を対応させていく努力をしなければならないという課題が出てくる。
Zamulin氏は、経済成長を妨げている要素を取り除いていくことが必要であると考えている。第1に、すでに大きな問題となっている人材不足の解消が重要課題である。第2に、投資構造の改善である。投資機関は、政府及び犯罪組織等による干渉・圧力を受けるべきではない。第3に、インフラの整備である。特に、現在の交通インフラ網は、経済の需要にまったく対応していない。
Gavrilenkov氏は、経済成長のテンポを超える投資の増加を図る必要はないとの見解を支持している。2020年まで、投資の増加は10-12%であるが、経済成長率は6-7%である。投資増加率が経済成長率を上回れば、その効果は低下する。
予算に関するロシア上院政策委員会副委員長であるNovikov氏は、戦略大綱2020が、政治的リスクを考慮に入れていないことに注意を向けている。同氏は、「現在、ロシアと先進諸国には、相反する利害関係が生じている。地域によっては、先進国との競争が避けられない状況にある。正確な予測を立てるのは難しいとしても、考えられるシナリオを挙げることは可能である。」と指摘する。
経済発展省のKlepach副大臣は、会議の中で専門家が提示した意見を戦略大綱に反映させるかどうかについて言及はしなかった。副大臣の発言は、戦略大綱2020が、ロシア経済の基本的な進行方向を示していると強調するに止まった。政府が立てた長期的な目標に対して、専門家が批判の言葉を口にするのは、当然と言えるかもしれない。どちらにせよ、戦略大綱2020の最終版が示されたわけではない。戦略大綱2020の最終版は、2008年8月に発表される予定であり、専門家の意見が反映されたかどうかは、その時に、明らかとなるだろう。
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