[トピックス]ガスプロムとSUEK、共同企業の設立は白紙撤回
ロシアの天然ガス独占企業、ガスプロム子会社が、SUEK株50%+1株の取得に関する許可を得るために連邦反独占局に出していた申請を取り下げたことが9日に明らかとなった。ガスプロム子会社及びSUEKによる共同企業の設立が公表されたのは、2007年2月であった。同取引に関する協議には1年以上を要し、2008年3月に取引の承認を求める申請を連邦反独占局に提出したばかりであった。現在まで、連邦反独占局は結論を出していなかったが、今回、申請が取り下げられたことで、その必要はなくなった。
共同企業設立に関する契約が解消に至った理由は以下のように説明されている。「電力市場の動向が不明確であること、また、発電及び配電網の整備拡充のための投資計画が不透明であるために、設立構想のあった共同企業の市場価値を判断することが難しい状況にある。また、ガスプロム及びSUEKの両社に対して提示される諸条件によって、共同企業の成長戦略実現が非常に困難となる恐れがある。」
同取引の規模が確定したのは、2008年2月であった。計画では、資産統合の基盤をSUEKとし、SUEKが実施する株式追加発行の一部をガスプロムが取得する予定であった(支払はガスプロム保有の電力会社株となる予定であった)。それにより、ガスプロムは、3万500メガワットの発電能力を誇り、企業価値が160億ドル以上のロシア最大手電力会社であるSUEK株50%+1株を所有するという構想ができていた。ガスプロムは、保有するロシア統一電力システム株をロシア統一電力システム再編後にSUEKの電力資産に組み入れる意向を示していた。また、第2卸売電力株の15.61%、第6卸売電力株の17.13%、第5卸売電力の5.27%、第5地域電力の5%もSUEKの資産とする方針であった。2007年夏、ガスプロムがロシア統一電力システムの少数株主と株式交換を実施したことを考慮に入れると、SUEKが、第2卸売電力・第6卸売電力の支配株を取得した可能性もあった。取引は、2008年8月31日までに完了する予定であった。
Alfa Capitalのポートフォリオ運用を担当しているBirg氏は、上に挙げた取引の内容が取引解消の原因となったと指摘する。同氏は、「昨年より、ガスプロムの自己資産に対する評価と比較して、SUEKの資産が過小評価されていることは明白であった。」と言及している。卸売電力各社の価値は大幅な下落を示しているが、ガスプロムが共同企業に組み入れようとしたのは、この卸売電力各社の持分であった。以前、卸売電力に対する評価は、キロワット換算で地域電力よりも20%程高かったが、現在、卸売電力には地域電力より低い評価が付けられている。
例として、現在、卸売電力が供給する電力に対するキロワットあたりの平均評価額は、360ドル/キロワットであるが、地域電力の平均評価額は、520ドル/キロワットである。地域電力は、44%も高く評価されていることがわかる。Alfa CapitalのBirg氏は、「昨年と比較して、評価は大きく変わった。SUEKの主要資産は、地域電力の方である。また、石炭価格も大幅に上昇している。2008年、一般炭は、前年比およそ2倍の高値をつけるだろう。つまり、SUEKが共同企業に入れようとした資産は、企業価値を増す方向に働いた一方、ガスプロムの資産はそれと反対に抑制する働きをした。恐らく、共同企業の設立に異を唱えたのは、SUEK側であったのではないか。」と指摘している。
しかし、共同企業設立の解消が両社に及ぼす影響はないだろう。メトロポールの主任アナリストであるTerehov氏は、「SUEKは、ガスプロム側から政治的利益を得ようとしていた。国営企業に守られる形で影響力のある支援を得ようとしたのだろう。SUEKが経済的な観点から共同企業を設立しようとしたとは考えられない。ガスプロムにしても、共同企業の設立を解消したことで、投資先としての魅力を失うことはない。」と考えている。
メトロポールのTerehov氏は、共同企業設立の解消は、ロシアの電力市場にとっては利益となるだろうと考えている。同氏は、「共同企業が設立されれば、電力業界は独占化されていただろう。卸売電力会社2社を所有しているガスプロムの支配株は、国家が保有している。また、水力卸売発電の支配株も国家保有である。Rosenergoatomに至っては100%が国家保有である。SUEKのエネルギー資産がガスプロムに統括されていた場合、ロシアの電力業界は国家によって支配されていただろう。共同企業設立が白紙に戻ったことによって、電力会社間の競争は促進されるだろう。」と述べている。
連邦反独占局局長であるArtemev氏は、再三にわたってガスプロムとSUEKの共同企業設立に反対の立場を示してきた。2008年2月、同氏は、両社の計画に関して、「これは、エネルギー産業を独占しようとする試みである。」と厳しい意見を述べた。ロシア統一電力システムのチュバイス会長も、共同企業設立には不満であった。しかし、2008年2月、早くも、Artemev連邦反独占局局長は、共同事業設立に好意的になり、連邦反独占局は、地方の資産を売却することを条件に、両社の取引を承認するだろうと公表していた。
第12回ペテルブルグ国際経済フォーラムの開催直前に、経済活動における国家の介入を抑制することがフォーラムの主題となったことは示唆的である。シュワロフ第1副首相は、「経済危機に対する国家の反応は遅い。経済は、市場の動きに従っている。」と述べた。また、ロシア統一電力システムのチュバイス会長は、国家による経済介入の手法及び範囲を限定すべきであると呼びかけた。
コンサルティング会社2K Audit-Business consultingのM&A業部部長であるRozov氏は、「間もなく完了するだろうロシア統一電力システムの再編は、電力業界への国家による介入を抑制する狙いもある。ガスプロムとSUEKによる共同企業設立が実現すれば、電力業界には、再び独占企業が誕生することになってしまう。従って、ガスプロムとSUEKの統合は、現在の経済的方針から外れたものであり、こうした見地からすると、統合解消は、合理的である。」との見解を示している。

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