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[コラム:研究員のココロ]第三セクターを活用した地域再生への期待

2008年06月17日 03:20更新 前の記事 次の記事  コラム・地域社会一覧
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出展:日本総合研究所ホームページ(http://www.jri.co.jp/)「研究員のココロ (株)日本総合研究所 研究員 地域経営戦略グループ 高橋 秀文 2008年6月16日付」より

1.はじめに

 近頃、新聞や雑誌の紙面で、第三セクターに関する話題が盛んに取り上げられるようになっています。これは、平成19年の財政健全化法の公布により、「将来負担比率」という指標が設定され、これまで不透明になりがちであった第三セクターや公社、公営企業に対する負担も含めた自治体の財政状況が明らかになるためです。将来負担比率が一定比率を超えた自治体は、経営不振の第三セクターへの対応のみならず、行財政運営そのものの見直しを迫られ、住民生活にも影響が出る恐れがあります。これまでも、一部の第三セクターの経営不振や、それに伴う行政側の腰の重い対処ぶりがクローズアップされることはありましたが、いよいよ多くの自治体が真剣に第三セクターの現状と向き合わなければならなくなったのです。

2.第三セクターの現況

 そもそも、「第三セクター」とは一体どのような形態の組織なのでしょうか。総務省が毎年実施している「第三セクター等に関する調査」では、「地方公共団体等の出資割合が25%以上の会社法法人及び民法法人(複数の地方公共団体の出資割合の合計が25%以上の法人も含む)」や「出資割合が25%未満であるものの財政的支援(補助金、貸付金、損失補償・債務保証)を受けている会社法法人及び民法法人」を挙げています。この中で、「第三セクター」と聞いて多くの方が連想する株式会社は3,407法人(平成19年3月末現在)となっています。
 また、同調査によると、「会社法法人(株式会社とその他会社法法人)」のうち、約3割が赤字に陥っているということで、苦しい経営状況がうかがえます。第三セクターの苦戦要因は様々ですが、一般的に、事業見通しの甘さと、官民の役割分担の不明確さに起因すると思われる責任意識の欠如、自治体OBの天下り先として位置づけられ、経営感覚を持った職員が不足していたことなどが大きいと言われています。

 ところで、第三セクターの歴史は意外にも古いもので、昭和初期にまでさかのぼることができます。しかし、現在問題視されている第三セクターの多くは、 1986年施行の民活法(民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進)、1987年施行のリゾート法(総合保養地域整備法)を受け設立された、観光・レジャー分野などの法人です。1985年のプラザ合意を受け、円高の進行、内需拡大政策が推進される中、バブル景気に突き進んでいった時代に設立されたこれらの法人は、前述のとおり事業計画の見通しが甘かったことや、民活法の適用を受けるためには低収益施設を整備することが求められるなどの制約もあり、不採算に陥ることが多かったのです。
 ちなみに、株式会社の第三セクター3,407法人のうち、1986年以降に設立された法人は約7割の約2,400 法人に上ります。

3.危機意識が希薄な自治体
 
 当社では今年3月、第三セクターに出資している都道府県、市町村など(1,067団体)に対し、第三セクターに対する考え、出資先(計3,407法人)の経営状況などについて、アンケート調査を実施しました(回収率:58.7%(都道府県、市町村、広域組合等)、51.5%(株式会社の三セク企業))。
 この中で、何らかの経営改善を行う必要がある株式会社の第三セクターの有無を尋ねたところ、「ある」と回答した自治体は4割強で、「ない」をわずかに上回っていることから、課題認識はある程度持っていることがうかがえます。
 一方、第三セクターに対する自治体独自の経営状況の評価・点検の有無について尋ねたところ、「独自に行った」は1割強、「現在行っている」と合わせても2割に満たない状況にとどまっています。逆に、「総務省から基準が示されたら行う予定」が過半数に迫っており、財政健全化法の新財政基準の算定方法待ちという色彩が濃くなっています。多くの自治体は、自発的というよりも、「外圧」によって第三セクターの見直しを行うという、少々残念な調査結果となってしまいました。


4.地方部の第三セクター見直しは両刃の剣

 一方、第三セクターの見直しは、近年指摘されている「都市と地方の格差拡大」に拍車をかける可能性があります。例えば、都市部であれば、第三セクターの経営状況が現在は赤字でも、提供するサービスに対する需要は一定程度存在することが見込まれるため、自治体の関与がなくなった後でも、民間の担い手は数多く存在することが考えられます。すなわち、抱えている債務の整理さえつけば(非常に難しいことですが)、新しい事業主体により、現在のサービスが引き続き提供される可能性は比較的高いと言えるのです。
 一方、地方部では、都市部と比較して、第三セクターが地域経済に果たす役割が大きいのにも関わらず、「採算性が見込めない」という判断になり、新たな事業主体が現れなかった場合、破産やサービス廃止という事態に陥る可能性があるのです。第三セクターの見直しにより自治体の財政は一時的に改善するかもしれませんが、長期的な視点では、産業基盤のぜい弱な地方部は衰退しかねません。

5.地方部に強い地域力再生機構への期待 

 こうした現状に対し、政府は、地域経済の成長につながると思われる第三セクターや中規模企業再生の支援を行う「地域力再生機構(仮称)(以下、地域力再生機構とする)」の設立を目指しています。支援対象となる法人は、当然のことながら再建可能な事業を有することが求められますが、地域力再生機構は、一法人の再生という観点だけではなく、地域の面的再生を重要視していることも特徴であり、疲弊している地方にとっては朗報と言えるでしょう。事実、当社のアンケートにおいて、地域力再生機構の支援の活用予定について「予定している」あるいは「活用に向けて検討している」「活用の検討を予定している」が選ばれた 112法人のうち、景気回復の足取りが鈍いと言われている「北海道・東北」が約3割(34法人)を占めるなど、地域力再生機構に対する地方部の期待は大きいと言えます。


6.第三セクター再建を地域再生に活かせ

 第三セクター問題を通じて投げかけられた課題は、地方自治体の財政健全化の必要性という狭い意味のものではありません。それは、行政だけではなく、各主体(企業、金融機関、NPO、地域住民など)が、地域が将来目指すべきビジョンを共有し、ビジョン達成のための最適な手段と主体を考え、住民利益を損なうことなく効率的に事業を推進することの必要性なのです。こうした一連の検討過程の中で、これまで第三セクターが地域に果たしてきた役割が検証され、事業の存続の可否や存続した場合の事業主体などについて、今後の方向性が決められていくことでしょう。
 高知県四万十川流域の町村の出資により、地元の天然素材を活用した商品づくりを目指し、平成6年に設立された「株式会社四万十ドラマ」の例を見てみましょう。同社は、平成17年に自治体が持つ株を買い取り、地域の住民に株主になってもらい、民営化を実現しました。第三セクターの設立が地域の産業創出・価値創造のための事業立ち上げに貢献し、やがて地域全体の理解が深まり、「じゅうみん株式会社」として組織形態を変えていく。これはまさに、第三セクターの前向きな見直しの見本として評価できるのではないでしょうか。
 さまざまな関係者が存在する第三セクターの再生は必ずしも容易ではありません。しかし、行政をはじめ、地域の各主体が、地域の持続的発展という観点から第三セクターの見直しを進めるとともに、こうした動きを支援する国レベルでの支援スキームが確立されれば、地域の未来は決して暗くはないのではないでしょうか。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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高橋 秀文
(株)日本総合研究所
研究員 地域経営戦略グループ
専門分野:地方行政、地域振興
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