[レポート] 週刊マーケットレター
出典:ゲゼル研究会(http:grsj.org)
週刊マーケットレター(08年6月23日週号、No.237)
2008年6月22日
曽我 純
図表などはサイトの PDF からご覧になれます。
http://www.grsj.org/marketletter/index.html
■主要マーケット指標
■ 米実体経済を蝕む不動産不況
金融機関の損失拡大懸念に戦き、NYダウは1万2,000ドルを割り、3月10日以来の低い水準に下落した。週末ベースでは06年9月第4週以来ということになる。株価は5月第3週まで約2ヵ月戻していたが、米不動産不況の悪化や原油価格の高騰などを無視する回復であっただけに、まともな値上りではなかった。
不動産不況がじわじわと米国経済を蝕んでおり、そうした進行の度合いが経済指標に明
確にあらわれてきている。根が不動産というストックに関わっているだけに、日本の90
年代と同じ様に短期で解決できず、調整は長期およぶだろう。
前回のIT不況のときでさえ株価が底打ちするまでに約2年半もかかっており、今回の不
動産バブルが崩壊するケースでは、実体経済の不振だけでなく信用不安が株価下落に輪を
掛けると考えられることから、株価の下降期間はIT不況を上回ると予想しておくべきだ。
今回、NYダウがピークアウトしてからまだ8ヵ月しか経過していない。来年の10月でま
る2年であり、米株価が底入れするのはさらにその先ということになりそうである。
米株式の不振が長期化すれば、外人の日本株買い余力は減退する。日本人は日本経済に
懐疑的となっており、決して買い越しはしないだろう。超高齢化社会では、高齢者はこれ
までの資産を食い潰しながら長らえるしかない。日本の株式保有者の大半は高齢者であり、今後、彼らは保有株を処分するはずだ。外人の買い余力が乏しいところへ、高齢者の株式売却が加わることになれば、日本株は崩れざるを得ない。
米モーゲージ残高は増加し続けており08年3月末は14.7兆ドル、前年比6.9%増加した。
07年末よりも伸び率は1.2ポイント低下したが、依然、名目GDPの伸びを上回っている。
2000年から07年までの7年間にモーゲージ残高は2.15倍に拡大しており、名目GDPの1.41
倍を大きく上回った。実体経済よりも不動産貸付が拡大したことは、不動産市況が異常に
活気づき、バブル化したことの証拠である。不動産が値上りするから、投機目的での住宅
購入も増加し、実需以上に需要が膨らんだ。実需を超えてどこまでも需要が拡大すること
はあり得なく、臨界点に達すると需要は急速に萎み、不動産市況も冷え込む。
08年3月の米主要都市住宅価格指数は前年を15.3%下回った。08年3月末の米家計の不
動産保有額は19.71兆ドル、前年比1.6%減となった。住宅価格がこれだけ下落しているわ
りには、不動産保有額の減少率は小さい。実際の家計の受け取り方は1.6%といった小幅で
はなく、2桁減ではないだろうか。そうであれば、1年間で米家計は3兆ドルの不動産価
値を失ったことになる。家計のバランスシートは資産が減価する一方、負債はそのまま残
る。これでは、米家計の支出は抑制され、防衛的にならざるを得ない。投機目的で購入し
た物件、ルーズな銀行貸出により購入した物件等が処分されるまでは、不動産価格は下落
し、家計のバランスシートを痛め続けるだろう。
5月の米住宅着工件数は97.5万戸と2ヵ月ぶりに100万戸を下回り、91年3月以来、約
17年ぶりの低い水準だ。06年1月のピーク(229.2万戸)の4割強に落ち込んでしまった。
ピークからすでに2年4ヵ月経過したが、今回は拡大期間が長かっただけに、収縮期間も
長期化するように思う。過去の住宅着工件数と個人消費支出の前年比伸び率を比較すると、後者が前者にやや遅れる関係を読み取ることができる。個人消費支出も下降しているが、住宅着工件数ほど悪化していない。おそらくこれから個人消費支出はかなり落ち込むことになるだろう。
鉱工業生産指数は5月も前月比0.2%減と2ヵ月連続の前月比マイナスとなり、前年比で
も0.1%だが減少し、米景気の下降を裏付けている。消費財なかでも耐久消費財がよくない。
自動車や家庭用器具が前年比12.1%、11.7%それぞれ下回るなど深刻さを増しており、プラ
スを維持している設備投資関連も引きずり込まれそうな状況である。
5月の設備稼働率は79.4%と2ヵ月連続の低下となり、昨年7月のピーク(81.4%)から
2ポイントも低下した。原油価格高騰による物価上昇圧力は見逃せないが、設備稼働率の
低下による物価押し下げ要因も蔑ろにはできない。消費の低迷に拍車が掛かり、設備投資
が冷え込む可能性はきわめて高く、IT不況を上回る景気下降に陥っているのではないだろ
うか。今は物価よりも景気を重視した政策が必要ではないかと思う。今週の24日、25日
にFRBはFOMCを開くが、政策金利を2%に据え置く見通しである。次回のFOMCは8
月5日と間が空くが、それまで金利を維持することができるであろうか。
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