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[コラム]“クローズド・コンピューティング”から“クラウド・コンピューティング”へ 〜エンタープライズシステムの新潮流

2008年07月15日 13:50更新 前の記事 次の記事  コラム・IT一覧
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出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 金融ソリューション第2部 古川 曜子 2008年7月15日付」より

去る2008年7月3日、セールスフォース・ドットコム社主催のカンファレンス「Tour de Force Tokyo」が開催された。同社は、1999年に企業を立ち上げて、インターネット上でSFA・CRMアプリケーションを利用できる「SaaS(Software as a Service:サース)」形式のサービス“Salesforce”を展開し、瞬く間にこれを世界中に普及させた。“Salesforce”は、サービス提供開始から今日までの9年間に実に26回ものバージョンアップを繰り返し、数年に1回のバージョンアップを行う従来のパッケージソフトウェアには想像もつかないような驚くべきスピードで進化を遂げている。そして昨年2007年には、「PaaS(Platform as a Service):パース」というさらに進んだコンセプトの新サービス“Force.com”を打ち出し、特定のアプリケーション利用環境を提供するのみならず、ユーザがインターネット上で、任意のアプリケーションを自由に開発できるプラットフォーム自体のサービスを始めた。今年に入ってからは、このプラットフォーム上で自由なユーザインターフェースを設計・開発できる“Visualforce”という新たな機能も発表し、ますます自在なユーザカスタマイズが可能となってきている。このようにエンタープライズ向けオンデマンドアプリケーションサービスは、今、急速な進化の最中にあるのだ。

そんな中、冒頭のカンファレンスにおいて、基調講演に来日した米国セールスフォース・ドットコム会長 兼 CEOのマーク・ベニオフ氏がこの日繰り返し唱えたコンセプトは、「クラウド・コンピューティング(Cloud Computing)」だ。クラウド・コンピューティングとは、ユーザ自らがハードウェア、ソフトウェアを所有し、運用するのではなく、インターネットという「雲=クラウド」にアクセスするだけで、必要なシステムを利用することができる形態のことである。Googleのエリック・シュミットCEOが、講演や論文の中でこの言葉を利用してきたことをきっかけに、2007年後半頃から広く普及し始めた。そして、コンシューマ向けWebサービスを牽引するGoogle社が提唱するこのコンセプトを、今度はエンタープライズシステムの新たな担い手の一社であるセールスフォース・ドットコム社が自らの言葉として語り出したのだ。このことは、いったい何を意味しているのだろうか。


■ユーザニーズの変化によって崩されつつあるクローズドなエンタープライズシステム

これまでエンタープライズシステムは、「セキュリティ面の安全性」や「安定したシステム運用」等を理由に、いわば、閉じた世界を作る方向性で進んできた。例えばマイクロソフト社のビジネス展開は、Windows OSを普及させ、その上でのみ動作するソフトウェアを広めようという“クローズド戦略”の典型だと言えるだろう。他の外部サービスと連携するよりも、自らの中で完結するような環境を作り上げようとしてきたのだ。しかし、このような環境において、急速に変化するビジネス環境に企業システムを柔軟に対応させるには、スピード、コスト効率等の点で困難な部分が目立ち始めている。その結果、様々なベンダーが提供するサービスを自在に取り込み、組み合わせながら必要な機能をダイナミックに実現していくスタイルが必要となってきた。あるいはまた、コンシューマ向けに作られたシステムを企業システムとして活用する動きも活発になってきている。企業内ブログやSNSの導入は、その代表例だ。


■コンシューマ向けサービスとエンタープライズシステムの融合

冒頭のカンファレンスでも、コンシューマ向けサービスとエンタープライズ向けサービスの融合を象徴するようなシステムのデモンストレーションが披露された。例えば、セールスフォース・ドットコム社のPaaSサービスであるForce.com環境上のデータベースが、Googleスプレッドシート(インターネット上で提供される表計算アプリケーション)から入力されたデータによって更新されるというマッシュアップが行われた。また、Visualforceで作られた画面は、PCブラウザはもちろん、携帯電話でもタブレット機器でも、それぞれのインターフェースに合わせた表示がなされ、デバイスを選ばずどこからでもデータの参照・更新が可能であった。必要なサービス同士が組み合わせられるのに、もはやコンシューマ向け/エンタープライズ向けの垣根はなくなりつつある。

このように、これまで閉鎖的だったエンタープライズシステムの世界は、その閉じた扉を開かざるを得なくなってきている。そのきっかけとなったのは、オンデマンドCRMアプリケーションのSaaSであったが、それはさらに進化し、プラットフォームサービスであるPaaSへとなっていった。そして今、Googleに代表されるような、一般コンシューマによって鍛えられた質の高いサービスがエンタープライズの中へ入り込み、一方でエンタープライズシステムもインターネットの世界へと進出する、“相互乗り入れ”の時代に突入した。まさにクラウド・コンピューティングの始まりだ。セールスフォース・ドットコム社のマーク・ベニオフ氏が、自身の講演の中でまるでGoogleのお株を奪うように「クラウド・コンピューティング」というコンセプトを幾度となく強調したのは、エンタープライズシステムが、いよいよ開かれた世界へと進化していく、そのスタートの宣言であるように感じたのは、決して私だけではなかったはずだ。

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