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[コラム]日本版SOX法本番年度の評価実務の留意点:内部統制上の「不備」と「重要な欠陥」の取り扱いが重要〜米国では7社に1社が重要な欠陥を表明〜

2008年07月22日 16:20更新 mailメール

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出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) コンサルティング部 佐久間 敦 2008年7月22日付」より

2008年4月に日本版SOX法(金融商品取引法の一部)の適用がスタートした。同法によって、上場企業は、自社内の内部統制の状況を評価し、内部統制報告書を有価証券報告書と併せて公表することが義務付けられる。日本監査役協会が2008年2月に実施した調査によると、約80%の企業が文書化の作業を終えているが、整備状況の評価まで着手している企業は42.8%、運用状況の評価は20%未満という状況だ(日本監査役協会「「財務報告に係る内部統制報告制度」に関するインターネット・アンケート調査結果」より)。

米国市場に上場し企業改革法(Sarbanes Oxley Act)への対応経験のある企業を除いて、ほとんどの本邦上場企業にとって内部統制評価は経験のない作業となる。3月決算の企業においては、決算・財務報告作業を経て、株主総会を終えたところであり、日本版SOX法の適用初年度となる本年度の評価実務に本格的に着手していく時期になってきている。企業の内部統制担当者の中には、本番年度の内部統制評価計画の策定に頭を悩まされている方も少なくないだろう。

このタイミングを見計らうように、金融庁は6月24日、「内部統制報告制度に関するQ&A」の追加版を公表した(※1)。本資料は、昨年10月に同庁の作成した20項目のQ&Aの公表以降、多くの企業や団体から寄せられた質問を整理し、大幅に追加して67項目としたものである。基本的には、実施基準や「11の誤解」(07年3月)といったこれまで金融庁が提供してきた資料と同様の位置づけであるが、寄せられた質問の多くは企業の実務担当者にとっても有益な示唆を含んでいる。

筆者は、内部統制関連のコンサルティング業務を通じて、クライアント企業のご担当者や会計士の方々とのディスカッションを重ねてきている。前述の日本監査役協会の調査にも見られるように、多くの企業が内部統制の文書化作業については、目処がついた状況にあるといえるが、内部統制をどう評価していけばよいかという評価の実務については、多くの現場でとまどいが見られているのも事実である。ここでは、本番年度の内部統制評価の実務で特に重要になると思われる、内部統制上の「不備」及び「重要な欠陥」に関する留意事項をとりあげてみたい。

日本版SOX法では、「全社的な内部統制」「IT全般統制」「決算・財務報告プロセス統制」「業務プロセス統制」の4つの内部統制を対象に、整備状況の評価(内部統制は適正に設計されているか)と運用状況の評価(内部統制は適正に運用されているか)の両面から評価することを求めている。この評価の過程で、ルール通りに事務が行なわれていなかったり、ルール自体に不足があった場合、内部統制の「不備」があると判断される可能性がある。さらに、内部統制上の不備が識別されると、その不備は「重要な欠陥」に相当するか検討することが必要となる。

「重要な欠陥」とは、金融庁実施基準では「財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い内部統制の不備」と定義され、「金額的基準」と「質的基準」から判断される。金額的基準としては「連結税引前利益の概ね5%程度」が例示されている。自社の内部統制に「重要な欠陥」が認められる場合には、内部統制報告書においてその旨を公表しなければならない。

評価の実務において、内部統制上の不備を認識した場合、どのように取り扱うのか、手続きを定めておくことが重要だ。一方で、現場からは、「どのようなケースが『不備』や『重要な欠陥』となり、どのような場合は該当しないか、その線引きがわからない」「『不備』や『重要な欠陥』の評価基準が決められない」という悩みをよく耳にする。しかし、この評価基準を曖昧にしてしまうと、「当社には重要な欠陥がない」と主張しても、監査法人の内部統制監査の段階で重要な欠陥を指摘されると、ほとんど抗弁できないだろう。会社としての基本的な考え方を整理し、外部に説明できるようにしておくことが重要だ。繰り返しになるが、重要な欠陥は内部統制報告書の開示事項となるため十分な検討を要する。

内部統制の開示制度で先行する米国の状況をみてみると、Sarbanes Oxley Act第404条の適用初年度において、7社に1社が重要な欠陥(Material Weakness)を表明している。この割合は、企業の情報開示や説明責任をより強く求める米国市場ならではの現象という声もあり、日本企業にはそのままは当てはまらないと考えられるが、監査法人の求める水準は決して低くはないことは確かである。

とりわけ、決算・財務報告プロセス統制については、財務報告の適正性に直結することから、特に注意を要する。実際、米国においても、重要な欠陥として指摘された事項の多くが決算・財務報告プロセス統制にかかわりがある、という調査結果もある。例えば、会計監査において、会計処理の方法を度々会計士から指摘されて修正をしたり、制度変更への対応の遅れを再三指摘されるといった事態が続いていると、内部統制監査においても決算・財務報告プロセス統制の有効性を疑われることにつながりかねない(会計監査と内部統制監査を原則的に同じ監査人が一体的に実施するのは、わが国の法制度上の特徴でもある)。また、決算・財務報告プロセス統制の評価においてチェックリスト等を利用することも多いと思うが、形式的にチェックをしていても実態面で異なっていては意味がない。実態との乖離を指摘されるケースもあり、本質がより強く問われることになる。

一方、前述のとおり、内部統制上の不備事項が重要な欠陥に相当するかは、財務報告に与える影響の度合いから判断されることになるが、その影響度合いをどう測るかが明確にされていないことが混乱の原因のひとつになっている。例えば、金額的基準は、重要な欠陥によって影響を受ける勘定科目の総額とその発生確率との掛け算によって算定されるが、実務上はどちらの要素も事案の内容を勘案しつつ、監査法人と協議しながら決定していくことになり、機械的に定まるというような性質のものではない。重要な欠陥の判断基準について、基本的な考え方や判定フローの大枠等をあからじめ監査法人と協議しておくことが必要である。

本番年度に入り、多くの企業で、重要な欠陥の判断基準について模索が続いている状況がうかがえる。内部統制関連の専門家等で構成される日本内部統制研究学会の調査によると、企業や監査法人を含め関係者間で重要な欠陥の判断基準が必ずしも統一化されておらず、ばらつきがあることを指摘されている。先述の金融庁Q&A追加版においても、重要な欠陥に関する項目が数多く掲載されており(図表1)、これらの情報を材料に検討を進めていくことにより、各企業にとって現実的な対応を進めていくことが求められている。

図表1 金融庁Q&A追加版における重要な欠陥に関する項目
問1  重要な欠陥の判断指針(金額的重要性)
問2  重要な欠陥の判断指針(連結税引前利益)
問14  ITに係る全般統制の不備の判定
問32  3点セットの作成
問40  重要な欠陥の判断(人材不足や書類整備不十分)
問41  重要な欠陥の判断(補完統制)
問43  重要な欠陥の判断(監査人に対する紹介・相談)
問45  期末後の重要な欠陥の是正措置
問48  重要な欠陥の意義
問67  評価範囲の外から重要な欠陥が発見された場合の取扱い
(出所:金融庁Q&A追加版よりみずほ情報総研作成)


※1: 金融庁 内部統制報告制度に関するQ&A(平成20年6月24日)    http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20080624-3.html

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