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[コラム]国内排出量取引制度検討の展望

2010年03月18日 16:29更新 mailメール

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    出典:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 田原 靖彦 2010年3月16日付」より

     昨年(2009年)11月、「国内排出量取引プロジェクトチーム」の第1回会合が開催され、キャップ・アンド・トレード方式による国内排出量取引制度の制度設計に関する議論が始まった。政府が今国会に提出する予定の地球温暖化対策基本法案(3月12日に閣議決定)にも、日本の中期削減目標を達成するための主要政策の1つとして盛り込まれる見通しである。また、基本法施行後1年を目処に関連法を定める計画とされており、早ければ2012年度〜13年度にも国内排出量取引制度が創設される可能性もでてきている。
     
     まだ論点整理の段階であり、現段階では国内排出量取引制度に関する具体的な内容はみえない状況であるが、ここでは、(1)排出枠の割当方法、(2)規制対象の範囲、および(3)外部クレジットの利用を取り上げ、主要な論点をまとめた。
     
    (1)排出枠の割当方法
     規制対象に対して排出枠(キャップ)を設定する際には、無償割当か有償割当か、無償割当の場合はその量をどう決めるか等を決定する必要がある。企業にとっては、十分な量の排出枠が無償で割り当てられればコスト負担は生じないが、無償での割当量が少ない場合や有償での割当が実施される場合には、コスト負担は大きくなる。2013年以降のEU-ETSや現在検討されている米国の法案では、開始当初は無償割当だが年ごとに有償割当(オークション)の割合を増やす制度設計となっており、企業の負担は次第に重くなることになる。
     
     日本で排出量取引制度が導入される場合にも導入当初は無償割当が導入され、一定の期間を経てオークション方式への移行が検討される公算が大きい。また、無償割当の考え方として、地球温暖化対策基本法案では、企業に総排出量の上限を設定する「総量規制方式」と生産量あたりの排出量目標を設定する「原単位方式」が併記されており、今後の大きな検討課題となっている。
     
     
    (2)規制対象の範囲
     規制対象の決め方としては大きく2つの考え方がある。1つは化石燃料の生産・輸入・販売業者に排出枠を割り当てる「川上型」、もう1つは化石燃料の需要家に割り当てる「川下型」である。EU-ETSや米国で検討中の排出量取引制度は川下型を採用している。
     
     川下型は電力の扱いで2つに区分される。発電所で発生するCO2を電力会社が排出したとみなす「直接排出方式」、電力需要家が排出したとみなす「間接排出方式」である。「直接排出方式」の場合は、発電などのエネルギー転換部門、鉄鋼や素材産業などの電力以外のエネルギーを大量に取り扱う事業者の工場等が主な規制対象となる。「間接排出方式」では、「直接排出方式」の規制対象に加えて、電力を消費する産業や業務部門が広く対象になる。
     
     CO2排出量を長期的に大幅に削減するには「直接排出方式」の方が適しているとされており、EU-ETSは「直接排出方式」を採用している。一方、省エネ法などのエネルギー関連規制や環境自主行動計画は「間接排出方式」を採っており、既存の規制との整合性という点では「間接排出方式」が適している。いずれの方式を採用するかは制度設計上の大きなポイントになっていると考えられる。また、特に「間接排出方式」を採用した場合には、どの程度の排出規模の事業者まで規制対象とするかも大きなポイントである。
     
    (3)外部クレジット(京都クレジット、国内クレジット等)の利用
     また、排出量取引制度の規制対象外の施設でのCO2削減の取り組みをクレジット化し、規制対象者の目標遵守に活用できる仕組みか、といった点も重要な論点である。規制対象外の施設としては、国内外ともに考えられるが、海外の場合はCDM等の京都クレジット(*)がこれに該当する。また、国内の場合は2008年度から開始された国内クレジット制度がこれに該当する。
     
     現状の国内クレジット制度は、自主行動計画の対象外の事業所におけるCO2削減量を国内クレジットとして認証し、自主行動計画の対象企業が国内クレジットを購入し、その目標達成に活用できるというスキームである。これは、自主行動計画を排出量取引制度と読み替えれば、国内排出量取引制度に対する外部クレジット創出スキームに転用できる仕組みであると言えよう。
     
     なお、EUおよび米国のいずれの制度も外部クレジットの利用を可能としているが、利用上限が設定されている。また、米国の法案では2019年以降については、国外のクレジットを国内クレジットより2割減で評価する(たとえば5t-CO2の国外クレジットは、4t-CO2の国内クレジットと同等とみなす)といった制限も設けられている。
     
     国内排出量取引制度の制度設計に関する議論は始まったばかりではあるが、2010年は、日本の排出量取引制度創設に向けて重要な準備の年となると考えられる。また、準備の過程で、徐々にではあるが、排出量取引制度の具体的な姿が明らかになっていくものと考えられ、主要企業においても排出量取引に向けた準備の必要性が高まるものと予想される。
     
    *京都クレジットには、CERs:クリーン開発メカニズム(CDM)により発行されるクレジット、ERUs:共同実施(JI)により発行されるクレジット、RMUs:先進国の植林や森林管理に基づき発行されるクレジット、AAUs:先進国の初期割当量の4種類があり、京都議定書目標達成に等しく用いることができる。

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