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[コラム] 科学技術が迫る価値選択 ― Eco-indicator 99の挑戦状

2007年03月08日 12:09更新 前の記事 次の記事  コラム一覧
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出展:みずほ情報総研ホームページ(http://www.mizuho-ir.co.jp/)「コラム/みずほ情報総研(株) 環境・資源エネルギー部 永田 裕子 2007年3月6日付」より


 人類はその誕生の後、科学的知見を積み重ね、技術を開発し、農業、工業、商業を発達させ、生活水準を向上させてきた。しかし、いかなる科学技術にも負の側面がある。例えば、人間が摂取したときの毒性が低く可燃性もないということで、冷媒や洗浄剤等に広く使われてきたフロン。その一方でフロ ンは、オゾン層破壊という別の問題を引き起こすこととなった。このように メリットとデメリットがある科学技術に対し、我々はどのように付き合っていくのか、受容していくのか否か、決めていく必要がある。

 このような意思決定に際し、我々は、何らかの価値の選択をしていかなけれ ばならない。例えば、人の命は救う一方で、生態系には悪影響があるという科学技術の場合、人の命と生態系のどちらを重視するかという選択を迫られる。これは最終的に価値観の問題なのだが、我々は、このような価値観を前面に出し、「自分には××よりも○○が重要なので、○○を選択します」と 表明して意思決定を行うことに躊躇しがちではないだろうか?

 その点、1999年に欧州で登場した環境影響の評価手法、Eco-indicator 99 (Goedkoop M and Spriensma R.,1999)は、画期的であった。

 Eco-indicator 99は、製品等からの排出物質によって引き起こされる地球温暖化、オゾン層破壊、資源枯渇等の様々な環境影響を評価するための手法である。これらの環境影響は、人の健康への被害、生態系への被害、資源への被害という3つの被害として計算される。これら3つの被害は「重み付け」されて、一つの指標で表される。

 Eco-indicator 99で興味深いのは、この「重み」を価値観別に複数パターン用意し、使用者に選択できるようにしていることである。これらの価値観パターンのうちの一つでは、人の健康への被害に対し、生態系への被害より「重み」を大きくしている。ほかの一つでは、逆である。これらの価値観パターンの選択によって、我々は、大切なものは何かということを改めて考えざるを得ない。そして、最終的に何を選択したかを表明していくことを迫られる。

 以上のようなEco-indicator 99の方法は、自然科学だけで客観的に意思決定を行えるという幻想、例えば人と生態系のどちらを重要とするかという決断を回避してきれいに対策が決められるという幻想への挑戦ではないか?

 そして、決断により得られた結果に対し、決断者は、当然自己責任を負うこととなる。今後我々は、次から次へと現れる新しい科学技術に対して、自己の立場を明らかにして意思決定をしていくべきであろう。

*Goedkoop M and Spriensma R. "The Eco-indicator99; A damage oriented method for Life Cycle Impact Assessment; Methodology Report", PRe Consultants, (1999)

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