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脱税4.5億!マルサに摘発された元ヒルズ族

2009年12月25日 16:50 更新

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■マルサが来て初めて気づいた「脱税」


 秋の優しい朝陽がガラス越しに、目覚めの時刻を告げていた頃、それとは別に無理やり安眠を断ち切るような訪問者の姿があった。



 2008年10月。とある日の午前8時、場所は東京・港区、六本木ヒルズ。招かれざる訪問者たちの行先は、磯貝清明氏の部屋。何度か鳴るインターホンが耳障りだ。荷物などはコンシェルジュが預かってくれるため、磯貝氏には、急な訪問者だということがわかった。この時、まだ東京国税局査察部の職員マルサとは知る由もなかった。



 用事で自分の会社に電話したところ「社長いますか」と、すでにマルサたちが訪ねてきていたことを、社員から告げられた。東京国税局査察部の調査員、通称マルサがすでに会社にも踏み込んでいた。マルサに一度、目をつけられれば、もはや逃れる術はない。なぜ、自分の所に来たのか、考えを巡らせてみたが、あるとすれば「あった」。



 「納税をしていなかったな。僕自身が大雑把な性格で、ネットに入金していたら入れっぱなしで、現金の実感がなかったということもあります。マルサが来て初めて、『俺ってそんなに稼いでいたのか』という感じでした。税金のことに無知すぎました」



 ここにネット取引の一つの落とし穴がある。知らないうちに最大約10億円にまで増えていた。磯貝氏もそうだが、みんな、こうしてFXの税務申告を怠ってしまうのだ。脱税とは富裕層をはじめ「YUCASEE MEDIA」(ゆかしメディア)の読者にも興味関心が高い分野でもあることから、磯貝氏は、自身の経験を役立ててもらいたい、ということで今回、取材に応じた。

■「溜まり」ある所にマルサあり


 FX(外国為替証拠金取引)の脱税が世間をにぎわしたのは、一昨年2007年のことだった。多くの案件が国税局によって摘発されたが、例をあげてみると、次のようなものがある。



・東京都世田谷区の主婦(約8億円)

・東京都足立区の不動産賃貸業夫婦(7億5000万円)

・兵庫県西宮市の元職員の一家(7億2600万円)

・和歌山市の元小学校長(3億1200万円)

・栃木県足利市の89歳男性(10億8130万円)



 どのケースを見ても、普通の人が知らずにやってしまったら、自分が脱税をしていたことを後になって国税局から知らされたというパターンだ。特に、栃木県の89歳の老人が10億円以上もの利益を出すということ自体、FXという投資商品が驚異的なリターンを上げる爆発力があることを物語っている。それだけに、その作用が逆に働いたとしたら、自分に大きなマイナスが降りかかる。もちろん、その時になって「知らなかった」では世間は許してはくれない。



 国税のやり方としては、その人の全盛期の2、3年後に「溜まり」(国税用語の蓄え)があると見て査察を行う傾向にある。つまり、ある程度取り立てる見込みがあるかどうかという、コスト感覚が働かせる。現在は景気の影響なのか、その金額のハードルを下げているようで、数千万円レベルの溜まりでも踏み込むことがあるという。



 FXトレーダー、会社経営者、六本木ヒルズ在住。「これなら取れる」と東京国税局はソロバンを弾いたことだろう。ヒルズの磯貝邸は、ガサ入れのターゲットになった。

■早朝からガサ入れ、深夜まで取り調べ


 鳴り続けるインターホン。マルサは諦めて帰るつもりはなさそうで、焦る磯貝氏。落ち着くためにとりあえずシャワーを浴び、着替えて外に出た。だが、部屋に戻ると、そこにはマルサがまさにガサ入れを行っている最中だった。彼らはとにかく「ガサビラ」(令状)さえあれば、どこへでも入っていくことができる



 「磯貝清明さんですね」



 査察官からそう尋ねられた磯貝氏。スーツ姿のマルサたちは、お金を数える人、トレードの記録などをCD−ROMに落とす人、書類関係をまとめる人などのいくつかの班に分かれて手際よく証拠を押さえていった。そして統括する人が現場で指示を出しながら、携帯電話でほかの現場の指示も行っていた。磯貝氏は、その様子をただ呆然と、黙って眺めるしかなかった。



 「車の中も全体を調べられたし、友達の家、元カノの家も調査されて、その日の仕事を休まされた人もいたそうです。みなさんに本当に申し訳ないです。また、(マルサに)通帳の場所を聞かれて、悪あがきでロビーのソファーの下に隠したと言ったら『なんでそんな所に』とこっぴどく怒られました」



 朝8時すぎから始まった捜索だが、「これで終わった」と思った午後10時ごろから、場所を東京国税局に移して取り調べが始まった。取調室では磯貝氏に対して査察官が3人。何回も同じことを聞かれて『本当か?』としつこく容赦なく突っ込まれそうだ。完全に絞りつくされた磯貝氏がその場を解放されたのは、午前1時を回ってからだった。

■脱税した人ってその後どうしているの?


 脱税は、国税庁の判断によって、罰則の軽重が決められる。磯貝氏の場合は、1億6000万円の所得税法違反の疑いで刑事告発された。



 そこに重加算税として6000万円が加わり、さらには、今後は刑事罰としてさらなる罰金が課される可能性が濃厚。返済の金額は2億円を優に超える。











【1】悪質ではないもの

 (当初の申告納税期限から2カ月は約4.7%、それ以後は14.6%の延滞税)

【2】少々悪質なもの(15%の加算税)

【3】仮装・隠蔽など悪質なもの(追加税額約40%の重加算税)

【4】悪質でしかも巨額のもの(刑事罰)



 磯貝氏は【1】の延滞税はもちろんだが、そこにさらに【3】が課され、今後は【4】が課される模様だ。サラリーマンの生涯給与以上に相当する金額を納税しなければならなくなった。



 「僕が踏みこまれた時は、いい頃よりもお金は減っていたし、事業や投資で何年もピークを続けていくのは難しいと思うし、脱税で実際に消えていってしまった人も多いと思うんですよ。僕は絶対に完納して、そういう人たちに見てもらって、もう一回頑張ろうと思ってほしいです」



 ハデに儲けて、その後は脱税が発覚し、そのまま消えていく。時代の寵児たちの姿はその後、誰も知ることはない。言われてみればそうかもしれない。脱税の後、国民の義務を怠った責任の重さを痛感していることだろう。



 「僕はたとえ何年かかっても完納するつもりですし、ささやかでも、こんな僕の経験が役に立つのなら、すべてお話します」



 納税のシーズンが近づいて来るが、磯貝氏の話に耳を傾ければ、いかに納税が義務として大切か、また、それだけに罰則もいかに重いかを知ることになるだろう。(つづく)

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